イアフォン・メーカーAZLAからイアプラグPOM1000(ピーオーエム・セン)が発売された。ライブなど大音量下での聴覚保護を目的としたイアプラグで、ユーザーからは既に”ポム栓”(=POM1000)という愛称で好評を得ているという。長年にわたりPAエンジニアとしても活躍しているイノックスサウンドデザインの井上朗氏に、実際の現場でPOM1000を試していただいた。
AZLA POM1000
クローズドモードと、エアホールによるオープンモードの切り替えが可能な、特許機構を搭載したライブ用イアプラグ。オープンモード (開放)では、空気循環より自然な遮音が行える。カナル型イアフォンと同じくイアピース付け替え方式を採用し、医療用シリコン素材を使用した同社のSednaEarfit Max(S/M/L)と、TPE素材のSednaEarfit Xelastec(SS/MS/ML)の計6種類が付属。カラーバリエーションはブラック/ガンメタルの2種類を用意している。
─ 耳を守るために普段から気をつけていらっしゃることはありますか?
一般の人よりは大きな音を聴かざるをえない環境で仕事をしているので、自分で音楽を聴く場合はヘッドフォンやイアフォンは使わないと決めています。スタジオでもなるべく小さな音量で作業していますね。出来上がった作品をチェックするときにちょっとだけ大ききな音量で聴くことはありますが、バランスは小さい音でも分かるので。音量に対しては、そのくらいすごく気を遣っています。
─ ライブPAの現場ではどのように耳をケアされていますか?
ライブの場合はどうしても大音量に耳がさらされてしまいます。そんな環境に長時間いると耳が熱くなって疲れてしまうんですよね。だから自分の耳型に合わせたオーダーメイドのイアモニを耳栓代わりに使っていました。ヘッドフォンもイアフォンも耳に付けていればある程度は音量を下げられるので、しないよりは良いかなと思って。
─ AZLA POM1000を使ってみていかがでしたか?
イアモニで代用したときよりも圧倒的に良いですね。12時から20時まで複数のアイドルユニットが入れ代わり立ち代わり出演するというイベントで、実際にPOM1000を付けたままFOHをミックスしました。長丁場の会場の中で、演者によっては音量を大きめにしてほしいというオーダーもあったので、POM1000があって本当に助かりましたね。モードによって音質を変えられるという点も良かったです。
─ オープンモードとクローズドモードにはどのような違いを感じましたか?
クローズドモードは遮音性が高い状態ですが、オープンにすると特にハイエンドが聴こえてくる。クローズ〜オープンの位置をいろいろ変えて試してみたんですが、個人的にはオープンとクローズドの中間の音が一番好みでした。音質も損なわずに音量が下がってハイエンドも程良く聴こえる感じで、バランスが取りやすかったです。
─ イアチップは2種、大きさはそれぞれ3タイプが用意されていますね。
イアチップもSednaEarfit MAXとXELASTECを試してみましたが、つけ心地はMaxの方が好みでした。サイズは初めから本体についているMサイズが自分には合っています。そのほかの付属品も充実していて、ケースは本体と同じアルミの削り出しでしょうか。すごく作りがしっかりしていますね。
─ そのほかPOM1000はどういうシチュエーションで使うと効果的だと思いますか?
モニターエンジニアにも有効だと思いますね。イアモニでない場合は、スピーカーと近い距離で音を聴かないといけないので。そのほかでは、よく乗り込みのエンジニアがいるフェスなどで、システムのサポートをすることがあるんですが、そういう場合にもPOM1000はすごく良いんじゃないですかね。一方、普段では電車や飛行機の中で静かに過ごしたいときにも有効だと思います。
イアモニの中にも、空気の通り道があって外音が聴けるタイプがあって試させてもらったことがあるんですが、すごく良かったんです。イアモニの閉鎖感がどうしても気になる人にとってみると、エア感ってすごく大事で、少しあるだけで随分と音の印象って変わるんですよね。きっとPOM1000もそうした配慮で生まれた製品なのでしょう。そのイアモニはフラグシップモデルが40万円だったので、POM1000も2、3万円するんじゃないかなと思っていたら意外にもお手頃な価格で驚きました。
単純に音量を下げられる耳栓とはちょっと違いますし、なかなかいい製品だと思いますよ。
井上朗
【Profile】 1989年イノックスサウンドデザインを設立。システムエンジニア帯同のスタジアムコンサートやアリーナツアーを始め、日本人初のイアモニを使用したバンドツアーを行うなど、ライブハウスからアリーナツアーまで新しいサウンドを常に求めてオペレーションを担当している。