NOVATION Circuit Rhythm レビュー:ビート・メイクからパフォーマンスまで対応する小型スタンドアローン・サンプラー

NOVATION Circuit Rhythm レビュー:ビート・メイクからパフォーマンスまで対応する小型スタンドアローン・サンプラー

 NOVATION Circuit Rhythmはサンプリング、ビート・メイク、パフォーマンスまでをカバーしたスタンドアローン・サンプラーです。手に取ってまず感じたのは、とにかく薄くて手になじむということ。片手で持てる大型タブレットくらいのサイズ感をイメージするといいかもしれません。フルで充電すれば最長4時間のバッテリー駆動も可能です。

専用エディターでサンプルをインポート。ノブを使ったオートメーションの記録にも対応

 Circuit Rhythmは、背面のサンプル入力L/Rからサンプリングする仕様。スレッショルド機能をオンにすると入力信号をトリガーに自動的に録音が開始されるので、サンプル頭の無音部分をカットする手間がかかりません。また、リサンプルをオンにすることで内部で鳴らしたサウンドの録音も可能。スレッショルド機能も併せて適用しておけば、録音待機状態にしたままでも焦ることなくサンプルを演奏する準備ができるので、非常に便利ですね。リサンプルは各パラメーターや内蔵エフェクトで加工したサウンドやビートをそのまま新たなサンプルとして利用できるので、ビート・メイクの可能性が広がります。Webブラウザー上またはスタンドアローンで動作する専用エディター・ソフトComponentsを使用することで、外部のサンプル・データのインポートも可能です。

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Componentsは、スタンドアローンのアプリケーション(Mac/Windows)もしくはWebアプリケーションとして用意されている。サンプルやエフェクト、プロジェクトの管理が行える

 次に、取り込んだサンプルでビート・メイクをしていきます。Circuit Rhythmのプロジェクトは、8つのトラックで構成。それぞれに最大32ステップのシーケンサーが用意されています。Tune(音高)やStart(サンプルのスタート位置)、Distortion、Filterなどのパラメーターはノブで調整でき、Recボタンを押してから動かすとオートメーションとして記録できます。筆者は、Startノブでサンプルの開始位置を微妙に変化させてシンプルなパターンに表情を付加するのがお気に入りです。

 

 サンプルの再生は、Noteボタンを押すとパッドがキーボード表示になり、サンプルに自動で音階が付きます。スライス・モードではサンプルを4/8/16分割でき、簡単にカットアップが可能。スライス位置は手動での修正もできます。

 

 ほかには、VelocityボタンやGateボタンで打ち込んだノートの強弱や長さも編集できますが、筆者が特に注目したいのはMicro Step。これは、選択したステップを複数のステップに刻んで分けるという機能です。例えば、現代のヒップホップのビートなどでよく聴くハイハットのロールが簡単に作成できたり、刻んだ後に先頭のノートを一つ隣のステップに打ち直すことで若干遅れて発音させ、ヨレたビートを生み出すことも可能です。

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リア・パネル。左から順に、電源スイッチ、USB Type-C端子、microSDカード・スロット、MIDI THRU、OUT、IN、Sync出力(ミニ・フォーン)、3.5mmシンク・アウト、ステレオ出力(フォーン)×2、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、サンプル入力L/R(フォーン)

ステップの再生確率をランダマイズ可能。複数パターンの連続再生機能も搭載

 Pattern Settingsボタンは、作成したシーケンスの再生速度やループ位置、再生パターンを操作可能。例えば1ステップ(拍)の長さを変えて3連符のシーケンスにしたり、9ステップのループにしてポリリズム的な複雑なグルーブにしたりするのも良いですね。シーケンスを逆再生、往復または完全にランダムで再生させることで偶発的なパターンも生み出せます。また、Pattern Settingsボタンを2回押すと出てくるProbability機能では各ステップの再生確率が変えられるので、パーカッションなどで音が鳴るときと鳴らないときを作って有機的な演奏に近付けることも可能です。楽曲における偶然性をしっかりと自分で制御できるのが面白いですね。

 

 パフォーマンス機能も忘れてはいけません。各トラックで最大8つのパターンを作ることができ、それらを切り替えることで楽曲をシームレスに展開させていきます。パターンの切り替えは通常、次に再生したいパターンを選択すると小節の頭で切り替わるよう設定されていますが、Shiftボタンを押しながら行うことで即時に切り替えることも可能です。また、パターンを複数選択すると連続再生もできます。例えばトラック1のパターン2〜5を同時に押すと、2、3、4、5と複数のパターンが自動で切り替わるように再生され、実質長尺のパターンが作成可能です。

 

 エフェクトはグリッドに合わせてロールするBeat Repeatやリアルタイムで逆再生させるReverser、ビット・クラッシャーのような効果を得るVinylなどが内蔵され、特にVinylは古き良きビート・ライブやトレンドのローファイ・サウンドにもピッタリですね。エディターのComponentsでボタンの配置や強さなどを編集することもできます。

 

 Circuit Rhythmは一台でサンプリング、ビート・メイク、パフォーマンスが可能ですが、とにかくプロダクトがちょうど良くずっと触っていられるのが醍醐味でした。サンプラーの基本に加えユニークな機能もそろっており、これからビート・メイクを始める方にも、長年ハードウェアを触ってきたベテランの方にもお薦めできる機材であると思います。

 

Carpainter
【Profile】横浜在住のDJ/ビート・メイカー、Taimei Kawaiによるソロ・プロジェクト。ベース・ミュージックやテクノを軸とした楽曲で、世界的に高評価を得る。TREKKIE TRAXの発足/運営メンバー。

 

NOVATION Circuit Rhythm

オープン・プライス

(市場予想価格:44,000円前後)

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SPECIFICATIONS
▪トラック数:8 ▪サンプル保存形式:16ビット/48kHz、WAV ▪サンプル・タイム上限:1packあたり240秒(1つのサンプル枠は最大32秒) ▪電源:USBバス・パワーまたは充電式リチウムイオン電池(USB Type-Cポートにて充電) ▪外形寸法:240(W)×45(H)×210(D)mm ▪重量:767g(実測値) ▪付属品:USB Type-C to Aケーブル、USB Type-A電源アダプター

製品情報

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www.snrec.jp