MACKIE.から新しいパワード・スピーカー、Thump212XTが発売されました。早速レビューします。
1,400WのクラスDパワー・アンプを内蔵
MACKIE. New Thumpシリーズの一つであるThump212XTは、2ウェイ仕様で1インチ径ツィーター+12インチ径ウーファーを搭載し、Bluetooth接続でのオーディオ入力&コントロール機能を備えたモデルです。
サイズは358(W)×615(H)×356(D)mmで、重量は13.3kg。両側面部には持ち運び用のハンドルがあり、底部には35mm(φ)のスタンド用の穴が空いています。同社が謳う“戦車級に頑丈なボディ”はもちろん健在ですが、こんなに?というほど軽いため、スピーカー・スタンドに取り付けるときは助かりました。またフロント・パネルの中央にはブランドのシンボル・マークがあしらわれ、電源を入れると最下部にある緑のLEDランプが点灯します。
次にスペックですが、Thump212XTは高効率を誇る1,400WのクラスDパワー・アンプを内蔵し、周波数特性は47Hz〜23kHz、最大音圧レベルは128dB。特筆すべきは今回新たに設計/開発されたという、高耐久性スピーカー・ユニットでしょう。まさに自信作ということですね!
リア・パネルを見てみましょう。2系統のマイク/ライン入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)、AUX入力(ステレオ・ミニ)、Bluetooth接続のためのペアリング・ボタンという具合に、豊富な入力を備えています。THRU出力(XLR)も装備されているので、片側につき2台以上で使用する場合でも簡単にセッティングできるでしょう。ノブ類はch1のゲイン・ノブ、ch2のゲイン・ノブ、そしてメイン・ボリューム・ノブの計3つとかなりシンプルです。
リア・パネルの左上にはVOICING MODESボタンを搭載。VOICING MODESというのは、スピーカー・サウンドを用途や設置場所に合わせて選択できる機能です。CDなどの音源再生時に最適なMUSICモード、ライブ演奏時に最適なLIVEモード、DJイベント時などに最適なCLUBモード、フロア・モニターやサイド・フィル設置時に最適なMONITORモードと全部で4種類あり、誰でもボタン一つで設定することができます。
驚いたのがリア・パネルの右上に並ぶ4つの“あると便利”な機能ボタン。一番左端のOUTDOOR MODEボタンは、屋外設置時にサウンドを最適なものにすることができます。屋外と屋内の音響特性の違いを調整したチューニング設定を、ボタン1つでオン/オフできるとのことです。
そして“現場をよく理解しているな”と感心したのが、MUSIC DUCKINGボタン。ch1に音声信号を入力すると、ch2の信号がダッキングされるため、ch1の音声が聴き取りやすくなります。これはオペレーターの気持ちを分かっていますね!
FEEDBACK ELIMINATORボタンを押すと、急なマイクのハウリングを瞬時に抑えてくれる設定になります。最後のFRONT LEDボタンでは、フロント・パネル最下部にある緑のLEDランプの点灯/消灯を切り替えることが可能です。
また、専用アプリのThump Connect 2をインストールしたスマートフォン/タブレットとBluetooth接続することにより、これらのデバイスから遠隔でThump212XTのミキサー調節やVOICING MODESの切り替えを行うことができます。これら以外にもEQやミュートの設定、Thump212XT本体に保存した設定データの読み込みなどが可能です。スマートフォン1台あれば、BGMのストリーミング再生だけでなく、スピーカー設定までもできるとは恐れ入ります!
余裕のあるパワフルな鳴りを実現
実際の検証では、ある爆音系アイドルの海辺のイベント会場にて、いわゆるメイン・スピーカーの補助兼サイド・スピーカーという立ち位置でThump212XTを使用。結果から言いますと、現地スタッフや出演者、運営者など大勢の方から、海辺とは思えないくらい音が良く、迫力もあってめちゃくちゃ良かった!とお褒めのお言葉を頂きました。それくらいThump212XTは素晴らしい仕事をしてくれたと思います。
現場でのセッティングは至って簡単。メイン・ボリュームを12時(ユニティ・ゲイン)にし、ch1にライン入力してそのゲイン・ノブを12時(ユニティ・ゲイン)にします。VOICING MODESは、MONITORモードが一番しっくり来たのでこちらに決定。MONITORモードでは低域が控えめなので、音量を出しても音が団子にならず、奇麗に鳴らすことができました。
音量においてはまだ余裕のある鳴りをしており、これは1,400WのクラスDパワー・アンプと新設計/開発されたという高耐久性スピーカー・ユニットのおかげでしょう。大音量でも高域が暴れてピーキーになることはほぼありませんでした。EQも触らず、MONITORモードにしただけでこの結果とは驚きです。
Thump212XTは客席の前方辺りを狙っていたので、お客さんはほぼThump212XTのサウンドを聴いていたことになります。とても評判が良かったので、Thump212XTはとてもパワフルなのに耳に痛くなく、とても優れたサウンドだということなのでしょう。次はぜひNew Thumpシリーズのサブウーファーと組み合わせて使ってみたいと思います!
玖島博喜(TEAM URI-Bo)
【Profile】ヒビノやリバティ、ヴァーゴを経て、2000年にTEAM URI-Boを設立。フリーランスとして活動し、オペレートだけでなくシステム・プランナーやアドバイザーとして施工にも携わっている。
MACKIE. Thump212XT
オープン・プライス
(市場予想価格:66,000円前後)/1台
SPECIFICATIONS
▪スピーカー構成:12インチ径ウーファー+1インチ径ツィーター ▪最大SPL:128dB ▪周波数特性:47Hz〜23kHz(@−10dB) ▪内蔵アンプ:クラスDパワー・アンプ(最大1,400W) ▪VOICING MODES:MUSIC/LIVE/CLUB/MONITOR ▪指向性:90°(水平)×60°(垂直) ▪クロスオーバー周波数:2.1kHz ▪外形寸法:358(W)×615(H)×356(D)mm ▪重量:13.3kg