MACKIE. THRASH212 GO レビュー:バッテリー駆動やBluetooth接続に対応するPA用パワードスピーカー

MACKIE. THRASH212 GO レビュー:バッテリー駆動やBluetooth接続に対応するPA用パワードスピーカー

 MACKIE. THRASH212 GOは、充電式バッテリー駆動のPA用2ウェイ・パワードスピーカー。内蔵バッテリーはフル充電で最大10時間使用でき、電源が安定しない場所、そもそも電源がないところ、電源トラブルがあった場合も対処しやすそう。

リアの下部に格納された内蔵バッテリーは取り外し可能で、予備のバッテリーと交換できるため、山奥でのレイブパーティや電源が不安定な環境での使用に適している

リアの下部に格納された内蔵バッテリーは取り外し可能で、予備のバッテリーと交換できるため、山奥でのレイブパーティや電源が不安定な環境での使用に適している

 もちろん、リアの電源端子を用いた通常の電源供給にも対応している。また、Bluetoothデバイスをワイヤレス接続してのストリーミング再生、2台のステレオリンク、ステレオでのBluetoothストリーミングなどをサポート。早速、レビューしていこう。

リア上部には、ch1とch2のマイク/ライン入力(XLR/TRSフォーンコンボ)およびゲインノブ、マスター音量ノブ、2台のTHRASH212 GOを使うときやサブウーファー併用時に使うスルー出力(XLR)を配置。ch2には、BluetoothペアリングボタンやステレオでのBluetoothストリーミングをアクティブにするLINKボタンがある

リア上部には、ch1とch2のマイク/ライン入力(XLR/TRSフォーンコンボ)およびゲインノブ、マスター音量ノブ、2台のTHRASH212 GOを使うときやサブウーファー併用時に使うスルー出力(XLR)を配置。ch2には、BluetoothペアリングボタンやステレオでのBluetoothストリーミングをアクティブにするLINKボタンがある

広がり過ぎず芯のある低域 高域は耳あたりの良い音

 本機をレビューするにあたって、製品サイトを開いてみた。海につかった男性とカモメ、THRASH212 GOを写したユニークなビジュアルがとても良い。しかし本機は防水/防滴仕様ではないので、注意が必要。そのイメージ写真くらい気軽にどこにでも持っていける!ということなのだろう。

 最近のスピーカーは、とにかくよく鳴ってくれる。老舗のライブハウスに行くと、古いPA用スピーカーがよく置いてある。最近のスピーカーとは同じW数でも出音の感じが全く違い、古いものは古いもので良さもあるがチューニングが難しく、飛んでしまわないか心配しながらPAしている(昔はずっとそれでやっていたな……と、苦労と共に毎度思い出す)。THRASH212 GOには、そういう心配とは無縁のパワー感もあり、頑丈な印象を受ける。

 周波数特性は52Hz~20kHz(−10dB)/65Hz~20kHz(−3dB)ということで、ローエンドはPAで最も体感しやすい50~60Hz辺りまでとなる。例えば、ウッドベースのように倍音の多い低音楽器を大きく鳴らしても低域がぼやっとすることがなく、広がり過ぎずにグッと体感できる。ウーファー口径が12インチなのでミッドも気持ち良く、ハイは伸び過ぎたキャラクターではない耳あたりの良い音で、ハウリングしにくい印象だ。最近は、ボーカルマイクにもハイが伸びた機種が多いため、本機くらい落ち着いた高域特性のスピーカーは使いやすい。また、不満ではないものの、近年のハイエンドなPA用スピーカーにはハイが伸び過ぎたキャラクターのものもあり、現場の反射などによっては処理がとても難しくなる。実際のPA現場では、スピーカーメーカーが考えている音量以上にハウリングマージンを稼ぐ必要があるのではないか?と感じる場合もあるので、THRASH212 GOは“ある程度整った状況”ではないケースを含め、さまざまな場面で使いやすいと考えられる。

 外形寸法は375(W)×669(H)×313(D)mm。ユニットサイズの割にスピーカー自体はとても大きく感じられ、製品チェックを行った年末の疲れた体にはこたえそうなサイズ感に思えたが、重量はパワーアンプ内蔵で約16kg/1台なので軽いと言える。また、サイズが大きいのは必ずしもデメリットではなく、床置きで使用した場合に安定する。形状は、フロント側が弧を描くタイプではなく、フラットな長方形なので積み込みが容易。さらに、リアの上下とサイドの4カ所にハンドルがついているため、積み込みのほか運搬や仕込みなどもやりやすい。上下のハンドルは、ケーブルを通すことで抜けを防止できそうだし、仕込みのケーブル導線を整えるときにも役立ちそうだ。

リアの上下には緑色のハンドル、サイドの左右には黒色のハンドルを備え、運搬や設営に便利

リアの上下には緑色のハンドル、サイドの左右には黒色のハンドルを備え、運搬や設営に便利

バンドのライブでモニターに使用 自然なサウンドで音作りがしやすい

 今回のテストの方法は、イベントスペースでのライブでモニタースピーカーとして使用するというもの。バンドは5人組で、ドラムとウッドベース、アコースティックギター、チェロ、ボーカルから構成されている。設置スペースが限られるので、計3台のスピーカーで全員分のモニター環境を作った。ステージ前方のボーカル/チェロ/アコギには、筆者所有の別のスピーカーを使用。ドラムとウッドベースの2人に1台のTHRASH212 GOを使った。両者の間に置く状況だったが、サイズの割に横置きした場合の奥行きが浅いので、思いのほか省スペースで設置できた。

 ステージ前方に向かって設置することになったので、ボーカルマイクのハウリングが懸念されたが、先述の通り低域/高域共に出っ張り過ぎていない落ち着いたキャラクターなので、心配は無用だった。そしてウッドベースやアコギのふくよかさを損なうことも、高域が出過ぎることもなく、モニターに必須の要素は十分。低域12インチなので、ボーカルを返した場合も輪郭がうまく出しやすいと感じた。

 落ち着いたサウンドキャラクターであるが故に、音楽を鳴らしていても良い意味で出どころが分からない自然な音だ。スピーカーの存在を忘れさせてくれて、音作りがしやすい。本稿を書く間も、ずっとBluetooth接続で音楽を聴いていたが、突出した帯域がなく、派手ではないまとまった音という印象だった。

 リッチな音というより、どんな場面でもタフで、サクッと誰でも楽に使えるTHRASH212 GO。まるで、いつも一緒にいる友達のようなスピーカーだ。複雑な機能がないため、英語の取扱説明書を読む前に、買ったまま現場に持ち出して使うこともできそう。PA現場では、そんな気楽な要素が一番便利だったりする。

 

岡直人
【Profile】フリーランスとして活動するサウンド・エンジニア。君島大空、Tempalay、中村佳穂、KID FRESINOなどのライブPAを手掛けるほか、舞台の音響や舞台音楽の制作もこなす。

 

 

 

MACKIE. THRASH212 GO

オープンプライス

(市場予想価格:74,360円前後/1台)

MACKIE. THRASH212 GO

SPECIFICATIONS
▪スピーカー構成:12インチ径ウーファー(低域)+1インチ径チタニウム・コンプレッションドライバー(高域) ▪内蔵クラスDアンプ出力(ピーク):250W(低域)+50W(高域) ▪クロスオーバー:2.4kHz ▪周波数特性:52Hz〜20kHz(−10dB)、65Hz〜20kHz(−3dB) ▪指向性:90°(水平)×60°(垂直) ▪最大SPL:125dB ▪内蔵バッテリー駆動時間:最大10時間(フル充電時) ▪外形寸法:375(W)×669(H)×313(D)mm ▪重量:16.2kg

製品情報

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