GAMECHANGER AUDIO Bigsby Pedal レビュー:ギターのアーミング感覚で操れるペダル型ピッチ・シフター

GAMECHANGER AUDIO Bigsby Pedal レビュー:ギターのアーミング感覚で操れるペダル型ピッチ・シフター

 プラズマを利用したひずみペダルや、ピアノのサステイン/ソステヌートを模したペダルなど、まさにエフェクター業界のゲーム・チェンジャー的ペダルを発信するGAMECHANGER AUDIOから、ギターのアーミング・システムを再現するBigsby Pedalがリリースされた。

スムーズな操作感

 アーミングとは、ギターのボディに付いているアームを押し込んだり、引っ張りあげることで、ピッチを上下させたりビブラートをかけたりする手法。ちなみに“Bigsby(ビグスビー)”とは、昔からGIBSONやGRETSCHなどの箱モノギターに付いていることでおなじみのアーム・ユニットのこと。最近ではFENDER製ギターにも搭載されている。Bigsby Pedalの外観はまさにこのビグスビーのアームを模していて、デザイン性も素晴らしい。

 Bigsby Pedalは、ずばりアームが付いていないギターでもアーミングを可能にしてしまうペダルだ。通常アームを右手で握って行うが、足でペダルを踏み込む操作でアーミングを実現できる。手前に倒すとアーム・ダウン(ピッチ・ダウン)、奥側に倒せばアーム・アップ(ピッチ・アップ)だ。Bigsby Pedalは常時オン状態のため、接続されていればいつでもアーミングが可能になる。

 操作感は非常にスムーズで、本来のアーミングのイメージと違和感ない。コードを押さえたまま和音ごとピッチを上下させることが可能だ。不自然な変調感なども感じられず、あまりに自然な音色変化に本物のアームがあるのではと錯覚するほど。クリーン・トーンではカントリーやハワイアンのようなプレイ・スタイル、後段にひずみペダルを使用すればスティーヴ・ヴァイのような激しいアーム・プレイも可能。足で操作する際のバネの強さなど、よくチューニングされていると感じた。無いはずのアームをつかんでアーミングのまね事をすれば、見る者はさもアームがあるように錯覚してしまうから不思議。これはライブ・パフォーマンスとしても十分映えるだろう。

 本来、ギターでアーミングをする際には、どうしてもアームを握る右手の動作が制限されるため、例えばアームをつかんだ状態では積極的なピッキングやストロークなどは難しい。しかし、Bigsby Pedalにより両手が自由なままアーミングが可能になるため、従来では演奏不可能だった新しいフレージングが可能となる。

 また、GAMECHANGER AUDIOが新たに開発したアルゴリズムにより、低い音域での自然なポリフォニック(複音)のピッチ・シフトを可能にしたとのこと。これによりエレキギターのみならず、アコギ、バリトン・ギター、ベース、シンセ類などでも使えてしまう。試しにシンセ・ベースのライン・アウトの後に本機をつないでみたが音色、演奏性ともに問題なし。

原音とエフェクト音のミックス量を調整可能

 Bigsby Pedalの操作系について見ていこう。ペダル奥側にユニークな縦型のつまみが3つあり、Selectボタンで切り替えることで計6つのパラメーターを操作できる。つまみ位置は、つまみ本体のLEDの明るさで確認できるのが面白い。

本体奥側に搭載された3つの縦型つまみは、左から、Rate/Detune、Blend/Tone、Depth(ダウン/アップ)をそれぞれ調整できる。各つまみに2つの機能が割り当てられており、これらは“Detune”という文字の下に見えるSelectボタンで切り替えることが可能。白字で表記されたRate/Blend/Depth(ダウン)を選択しているときは各つまみが白く光り、赤字で表記されたDetune/Tone/Depth(アップ)を選んでいるときは赤く光る。また光の加減はノブの位置によって変化する。さらに、ペダルを踏み込んだ際は、Selectボタンも点灯する

本体奥側に搭載された3つの縦型つまみは、左から、Rate/Detune、Blend/Tone、Depth(ダウン/アップ)をそれぞれ調整できる。各つまみに2つの機能が割り当てられており、これらは“Detune”という文字の下に見えるSelectボタンで切り替えることが可能。白字で表記されたRate/Blend/Depth(ダウン)を選択しているときは各つまみが白く光り、赤字で表記されたDetune/Tone/Depth(アップ)を選んでいるときは赤く光る。また光の加減はノブの位置によって変化する。さらに、ペダルを踏み込んだ際は、Selectボタンも点灯する

 Depthつまみでは、ピッチ・シフト量を最大±1オクターブ、手前側(アーム・ダウン)と奥側(アーム・アップ)でそれぞれ調整可能(ダウンとアップはSelectボタンで切り替え)。また、BlendつまみではDry音(原音)とWet音(エフェクト音)のミックス量を設定する。通常のアーミング・プレイであればBlend量は0(Wet=100%)でよいが、Dry=100%にしてピッチ・シフト量を小さくすれば、コーラスのような効果を得ることもできる。

 Rateつまみを上げていくと、基準音からピッチ・シフトした音程までを自動でビブラートしてくれるようになり、その周期スピードを調整することができる。例えば、Rateつまみを極端に上げておくと、ペダルを踏み込んだときだけ発振したようなエフェクティブなサウンドを得ることができる。

 Selectボタンで、BlendつまみはToneつまみに切り替わり、Wet音の明るさを調整できる。Toneつまみを下げると暗く、上げるとブライトな音色になる。またRateつまみはSelectボタンでDetuneつまみとなる。これは実際のビグスビー・アーム・ユニットなど、機械式ユニットが持つ不完全なピッチ感をシミュレートするパラメーター。Detuneつまみを上げていくと、実際のギターでアーミングしたときのちょっと怪しいピッチ感と不協和音感が足されてきて、これが逆に自然なサウンドを生むことにつながる。

 本機背面にはInvertスイッチがあり、アーム・アップ/ダウンの極性を逆にできる。また、Selectボタンを押しながらInvertスイッチをオンにすれば、つまみ位置ロック機能がオンとなる。ライブ中のパフォーマンスなどで誤ってつまみを触ってしまっても、設定が変わらないという親切機能だ。

本体背面には接続端子類を装備。左から入力端子(フォーン)、電源端子(9V DC)、Invertスイッチ、MIDI IN(ステレオ・ミニ/Type-B)、エクスプレッション出力/フット・スイッチ端子(TRSフォーン/エクスプレッション出力、フォーン/フット・スイッチ端子)、出力端子(フォーン)

本体背面には接続端子類を装備。左から入力端子(フォーン)、電源端子(9V DC)、Invertスイッチ、MIDI IN(ステレオ・ミニ/Type-B)、エクスプレッション出力/フット・スイッチ端子(TRSフォーン/エクスプレッション出力、フォーン/フット・スイッチ端子)、出力端子(フォーン)

 その他の機能として、EXP Out / FSW In端子にフット・スイッチを接続することで、フット・スイッチをオンにした際、一発でペダルを一番奥まで踏み込んだ状態に固定することができる。また本機を外部エフェクターのエクスプレッション・ペダルとして利用することができ、スプリングを利用したユニークな操作が可能となる。さらにMIDI入力端子も備えており、外部MIDI機器から10個のプリセット作成と保存が可能。通常アーミング用パッチ、エフェクティブな飛び道具用パッチなど、設定を瞬時に呼び出して使い分けることも可能となる。

 Bigsby Pedalはシンプルな構造と取説いらずの使い勝手の良さを持ちつつも、その実は非常に高いテクノロジーが詰まった高機能ペダルである。既存の概念を覆して、プレイヤーに新しい可能性と創造力を与える素晴らしいペダルであると感じた。

 

佐々木秀尚
【Profile】有形ランペイジ、TRIXで活躍するギタリスト。『ギター音程感覚トレーニング』(リットーミュージック刊)など教則本も執筆するほか、YouTubeでのレッスン動画「140秒ギターレクチャー」も人気。

 

GAMECHANGER AUDIO Bigsby Pedal

52,800円

GAMECHANGER|AUDIO Bigsby Pedal

SPECIFICATIONS
▪周波数特性:20Hz〜20kHz(±1dB) ▪入力インピーダンス:1MΩ ▪出力インピーダンス:100Ω ▪外形寸法: 220(W)×86(H)×110(D) mm ▪重量:960g

製品情報

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