Focusrite Scarlett 4i4 Gen4 レビュー:新設計のマイクプリと新たなAirモードを搭載したScarlett第4世代機

Focusrite Scarlett 4i4 Gen4 レビュー:新設計のマイクプリと新たなAirモードを搭載したScarlett第4世代機

 Focusriteは、皆様ご存じのハイエンドスタジオ用音響機器ブランドですが、時代とともに音楽制作環境の主戦場として比重が高まりつつあるホームスタジオに対応した製品群もリリースしています。そのうちの一つで世界的ベストセラーとなった小型オーディオインターフェース、Scarlettが、リニューアルし第4世代になりました。今回はその中から4イン/4アウトのScarlett 4i4 Gen4をレビューします。

RedNetと同じAD/DAコンバーターを搭載

 箱から取り出してまず驚いたのは、工業製品としての質の高さです。同社製品の代名詞とも言える上品な赤いアルミボディ、コンパクトでほどよい重量感。各つまみはグラつきのないしっかりした建て付けで、回すと上品な抵抗感があります。電源が入るとフロントパネルの文字がLEDで光るので、視認性も良いです。ゲインつまみとボリュームつまみの外周に沿った円形のLEDメーターもとても見やすく、調整を素早く済ませて録音に取りかかれるのが好印象でした。

 インプットは、計4chのうち2chがマイクプリアンプ付きのXLR/TRSフォーンコンボ・ジャックで、フロントパネルに配されています。アウトプットは4chで背面に用意され、フロントのOutputノブはOutput1および2に対して効く仕様。そのほかフロントにはヘッドホンアウト、リアにはMIDI IN/OUTがあります。コンピューターとの接続はリアのUSB-C端子で行い、コンピューター側が対応していればバスパワーで動作させることも可能(最高!!)。バスパワーで電源供給が足りない場合は、外部電源入力用のUSB-C端子と電源アダプターが用意されており安心です。

Scarlett 4i4 Gen4 リアパネル

リアパネル。左から、電源を接続するUSB-C端子、コンピューターを接続するUSB-C端子、MIDI IN/OUT、モニタースピーカーを接続するラインアウト1〜4、ライン入力3、4が並ぶ

 そして特筆すべきなのは、第4世代化に伴いマイクプリが新設計となったこと!! 音質面でのブラッシュアップに加え、マイクゲインが最大69dBとGen3から13dBも増強されました。ゲインの低いマイクや小音量の楽器まで、幅広く対応できます。加えて、なんとインプット/アウトプットともに、同社のフラッグシップモデルRedNetと同じAD/DAコンバーター(24ビット/192kHz)が搭載されました。

 また、プリアンプのキャラクターを変更できる人気の機能、Airモードにも、従来のPresenceのほかに、Presence+Driveモードが追加されました。Presenceはアナログ領域での回路処理によってプレゼンスがブーストされ、音像が眼前に飛び出てくるような躍動感が付加される印象。楽曲の中心となるトラックや、手前に配したいパートに使いたくなります。一方Presence+Driveは先の効果に加え、デジタル領域での処理によりほどよいひずみ感が付加されます。このモードも絶妙かつ音楽的なかかり方で、“攻めたい場面”でいろいろ使えそうです。筆者は、基本的にPresenceモードで録音して、ギターソロなどここぞというパートにはPresence+Drive、奥めに配置したいバックトラックなどはAirモードをオフにする、といった運用をするかなと思いました。

 実際にボーカル、ピアノ、ベース、打楽器などのさまざまなソースを、コンデンサーマイク/ダイナミックマイクで録音して試したのですが、どのマイク、どのソースでもディテールに富んだ、扱いやすいまとまりのある音で録れていくのに感心しました。Airモードを使えば音の密度感や存在感を得やすいので、無理してゲインを上げる必要もありません。低域の量感は控えめなのですが、音がやせたり硬く感じることがなく、音楽的で“ノれる”音です。ホームスタジオにおいて、演奏に集中してざくざく録っていくのにとても使いやすそうに思います。数十万円クラスの機器と比べるとさすがに音の厚みや深みがわずかに物足りなくは感じますが、刷新されたADコンバーターの恩恵もあって、録り音のディテールはきちんと保たれているので、後からプラグインで調整した際にうまく深みを戻してあげられるなと感じました。

 アウトプット、ヘッドホンアウトも、全帯域にわたってとても明瞭です。高域はよく伸び、低音パートはとてもダンピング良く聴こえます。中低域がよどみにくくて、すべてのパートが聴き分けやすく、わずかなノイズやひずみもきちんと分かる、演奏もミックスもしやすい音だと思いました。

録音時のレベルセットをサポートする機能を追加

 音質面以外にも、録音時にユーザーを強力にサポートする新機能“Auto Gain”と“Clip Safe”が追加されています。Auto Gainは、10秒間演奏すると、ソースに合わせたゲインを自動でセットしてくれる機能。いずれのソースにおいても程よいレベル設定がなされ、レベルセット後は大音量の演奏時にもクリップせず、とても使える機能でした。セット後にゲインを微調整することも可能です。

 Clip Safeはその名の通り不慮のレベルオーバーを防ぐ機能で、大音量時にマイクプリのゲイン自体を自動で下げてくれます(その後は下がったままのゲインを保持します)。マイクゲインが急激に下がった瞬間は少し不自然な感じにはなってしまうのですが、各所でクリップしていてテイク自体が使えないような事態に比べたらとても有用に感じました。

 コントロールソフトは新たに“Focusrite Control 2”が無償提供されています。機能面の強化のほか、ユーザーインターフェースがよりシンプルで分かりやすくなりました。インプットとミキサーの2つの画面で構成されており、ミキサー画面の中でMix A、Mix B、Mix Cの3種類のミックスを作ることが可能です。各ミックスごとにアウトプットをOut1-2、Out3-4、Headphone、Loopbackの4つから自由に選択することもできます(複数選択も可)。ヘッドホンアウトを独立したバスとして扱えるのは便利ですし、ループバックも配信の際など、あるとありがたい機能でしょう。

Focusrite Control 2のミキサー画面

Focusrite Control 2のミキサー画面。3種類のミックスを作成可能だ。また、接続先(アウトプット)をOut1-2、Out3-4、Headphone、Loop Backの4つから自由に選択できる

 Scarlett 4i4 Gen4は、Ableton Live Liteなどのソフトやプラグインが付属することも相まって、ものすごいコスパ感です。音質、操作面共々とてもよく作り込まれていて、価格以上の完成度の高さと使いやすさが印象的でした。入出力構成/価格帯からして演奏家~作編曲家が主なターゲットになるかと思いますが、録音に取りかかるまでの煩わしさや録音中のレベルオーバーへの不安など、本来演奏家が考えたくない部分のストレスを軽減し、ノれる音で音楽に没入させてくれるので、心強い相棒になるのではと思います。

 

芹澤薫樹(せりざわしげき)
【Profile】レコーディングエンジニアを経て、セッションベーシストとして多数の作品やステージに参加。現在は演奏活動を軸としながら、ジャズ/アコースティック系作品の録音やミックスも手掛けている。

 

 

 

Focusrite Scarlett 4i4 Gen4

オープン・プライス(市場予想価格:45,100円前後)

Focusrite Scarlett 4i4 Gen4

SPECIFICATIONS
▪対応OS:Mac、Windows ▪接続方式:USB-C ▪入出力数:4イン/4アウト ▪対応サンプリングレート:44.1/48/88.2/96/176.4/192kHz ▪ビット深度:24ビット ▪外形寸法:180(W)×60(H)×130(D)mm ▪重量:798g

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