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EXPRESSIVE E Osmose 49 レビュー:MPE対応の鍵盤により多彩な演奏表現を可能にするポリフォニック・シンセ

EXPRESSIVE E Osmose 49 レビュー:MPE対応の鍵盤により多彩な演奏表現を可能にするポリフォニック・シンセ

 2023年は各社からMPE(MIDI Polyphonic Expression)対応のコントローラーが発売になり、それに対応するようにMPE対応のソフトウェア音源やライブラリーも充実しつつある、まさにMPE花盛りといえる状況である。MIDIコントローラーのTouchéで世界に衝撃を与えたEXPRESSIVE Eからも、Osmose 49が登場した。冒頭で“各社からMPE対応のコントローラーが〜”と記述してしまったが、本機はあくまでも“MPE対応の鍵盤を備えたシンセサイザー”なのだ。オリジナリティの塊とも言えるその詳細を見ていきたい。

弾き心地の良い鍵盤

 Osmose 49は、さまざまなジェスチャーに対応した鍵盤と、内蔵音源としてHAKEN AUDIO製のEaganMatrixオーディオ・エンジンを搭載。コンピューターを必要とせず、スタンドアローンで動作可能だ。ボディ上部にせり出すような形で搭載されている鍵盤は通常の打鍵速度(Velocity)以外に、“左右に揺らす(Bending)”“押し込む(Pressure=鍵盤を1段階目の底まで押し込むアクション/Aftertouch=Pressureからさらに圧力を加えるアクション)”などのジェスチャー表現に対応しており、それらの動きでより豊かな表現を音源から引き出そうというコンセプトが見受けられる。

 打鍵感は特殊ながらとても弾き心地が良く、世のキーボード・プレイヤーの多くには好意的に受け入れられるだろう。前述のように本機の鍵盤はMPEに対応しており、鍵盤ごとのBending、Pressure、Aftertouch情報はノートごとに独立したものとして扱うことが可能で、MPE対応の音源であればその表現力を最大まで引き出すことが可能だ。

本体の左前方には、ヘッドフォン端子(TRSフォーン)とボリューム・ノブを装備

本体の左前方には、ヘッドフォン端子(TRSフォーン)とボリューム・ノブを装備

背面から見たところ。リア・パネルには、MIDI IN/OUT、USB-B、ペダル入力(TRSフォーン)×2、マスター出力L/R(TRSフォーン)の各種端子を備える。ペダル入力はそれぞれに別の機能を割り当てられ、デフォルトではペダル1がサステインに、ペダル2がマクロパラメーターに割り当てられている

背面から見たところ。リア・パネルには、MIDI IN/OUT、USB-B、ペダル入力(TRSフォーン)×2、マスター出力L/R(TRSフォーン)の各種端子を備える。ペダル入力はそれぞれに別の機能を割り当てられ、デフォルトではペダル1がサステインに、ペダル2がマクロパラメーターに割り当てられている

内蔵音源のプリセットは500種類以上収録

 内蔵されているEaganMatrixオーディオ・エンジンは、多くのシンセシス方式(バーチャル・アナログ、フィジカル・モデリング、FMなど)を内包する総合音源であり、ハイクオリティなプリセットが500種類以上搭載されている。各種エディットは鍵盤の左にあるコントロール部分で調整可能。それに加えて、CYCLING '74 Maxをベースにしたエディターが提供されており、よりこだわりのサウンド・デザインを求めるユーザーはそちらを利用するとよいだろう。

鍵盤の左に備えるコントロール部分。上から、マスター・ボリューム・ノブ(赤枠)、Osmose 49のすべてのパラメーターにアクセスできるメイン・コントロール・インターフェース(黄枠)、ピッチ・ベンドとパラメーター・コントロール用のスライダー×2(緑枠)、プリセット選択ボタン(青枠)、オクターブ・ボタン(白枠)。メイン・コントロール・インターフェースでは、左上のmボタン(モード・ボタン)で本体から出力するサウンド・エンジン・モードと、MIDIコントローラーとして外部機器をコントロールするモードを切り替えられる。そのほかディスプレイ表示にリンクする各種ボタンやノブを使用して、音色調整や各種設定の変更が可能だ

鍵盤の左に備えるコントロール部分。上から、マスター・ボリューム・ノブ(赤枠)、Osmose 49のすべてのパラメーターにアクセスできるメイン・コントロール・インターフェース(黄枠)、ピッチ・ベンドとパラメーター・コントロール用のスライダー×2(緑枠)、プリセット選択ボタン(青枠)、オクターブ・ボタン(白枠)。メイン・コントロール・インターフェースでは、左上のmボタン(モード・ボタン)で本体から出力するサウンド・エンジン・モードと、MIDIコントローラーとして外部機器をコントロールするモードを切り替えられる。そのほかディスプレイ表示にリンクする各種ボタンやノブを使用して、音色調整や各種設定の変更が可能だ

ダイナミック・レンジが広くクリアなサウンド

 音を出してみてまず驚いたのが、鍵盤の仕様に合わせて音色変化が作り込まれたプリセット群。出音の良さはもちろん、どの音色もドラマチックに変化するのだ。特筆すべきは縦方向の音色変化で、PressureとAftertouchにはそれぞれに別のパラメーターをアサイン可能。それを生かしたプリセットでは、1段階目でスムーズなダイナミクス変化を得つつ、2段階目の押し込みで過激に音色変化するものなどがあり、演奏者の感情をダイレクトに表現できるように感じた。

 全体的な音色の傾向としては、クリアでダイナミック・レンジが広く、高級感のある音という印象である。アナログ・モデリングのポリシンセ/シンセ・ストリングス系の音色は情報密度が高く、楽曲の印象を決定づけるような重要なパートを任せることができそうだ。各種エフェクトも備え、特にリバーブは高い解像度で、テクスチャー感をしっかり付与できた。

 鍵盤を左右に揺らした際に得られるビブラート表現も大変にナチュラルで、鍵盤の機構的な調整も相当なこだわりをもってなされたことが伺える。内蔵音源もこのこだわりに応えるような仕様となっており、一般的なベンド幅だけでなく1/4音、1/2音、2/3音、3/2音などの微分音的なインターバルにも対応。エスニックな音色におけるベンド表現で説得力のある演奏が可能となっている。

 内蔵音源にはMPEアルペジエイター、プレッシャーグライドという機能も備わっている。前者はジェスチャーによって、パターンにバリエーションを加えることができる特殊なアルペジエイター。後者は押し込みによってグライド(ポルタメント)をコントロールすることが可能となっており、特にシンセ・リードや木管系音色の演奏に有用な機能だろう。

MPE対応のMIDIコントローラーとしても性能を発揮

 最後にMIDIコントローラーとしての実力を検証していきたい。MIDIコントローラーとして使用する際には、鍵盤左のパネルにあるmボタン(モード・ボタン)から、“ext midi”モードを選択し、さまざまな設定を行う。MPEモードから通常のMIDI鍵盤モードへの切り替えはもちろん、各種ジェスチャーやコントローラーの割り当ても自由に行える。

 筆者の環境においてさまざまな音源を組み合わせてみたのだが、どの音源においても素晴らしいポテンシャルを発揮してくれた。中でもMPEに対応するフルート、トランペットなどの管楽器物理モデル音源と、2段階の鍵盤押し込みジェスチャーは特に相性の良さが感じられる。1段目のPressureでダイナミクスをコントロールし、2段目のAftertouchにてGrowlやFlutterなどといったアーテュキレーション変化をアサインすることで思い通りの演奏表現を実現できた。

 Osmose 49は、鍵盤奏者にとって大きな技術習得の負担がないまま、ビブラートや押し込みなどの表現拡張が可能な新たな選択肢である。筆者は(ホイールやスティックを使うことなく)思い通りの深さと速さでビブラートをかけられることに、“演奏とは何か”をもう一度考える機会をもらった気がした。いやいや、そんなに堅苦しいものでは決してなく、シンセサイザーのポリフォニック演奏をするだけでとても楽しいので、まずはぜひ皆さんに実機を触ってみていただきたい。

 

オカモトタカシ
【Profile】ゲーム・サウンド・デザイナー/Ableton認定トレーナー。12sound代表。コンシューマー・ゲーム、オンライン・ゲームなど、さまざまなゲームのBGMや効果音の制作を手がけている。

 

 

 

EXPRESSIVE E Osmose 49

オープン・プライス

(市場予想価格:330,000円前後)

EXPRESSIVE E Osmose 49

SPECIFICATIONS
▪キーベッド:フルサイズ49鍵盤(3軸方向の操作が可能) ▪サウンド・エンジン:EaganMatrix(HAKEN AUDIOによるデジタル・モジュラー・エンジン) ▪最大同時発音数:24音 ▪外形寸法:894(W)×87.5(H)×316(D)mm ▪重量:8.3kg

製品情報

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