EASTWEST Hollywood Fantasy Winds レビュー:ケルト音楽に深く根ざした木管楽器5種類を収録する劇伴向けライブラリー

EASTWEST Hollywood Fantasy Winds レビュー:ケルト音楽に深く根ざした木管楽器5種類を収録する劇伴向けライブラリー

 今回ご紹介するEASTWEST Hollywood Fantasy Windsは、同社が展開するHollywood Fantasy Orchestraシリーズの一つ。劇伴制作に特化した木管楽器のライブラリーで、アイリッシュ・ホイッスル(ハイ/ロー)、ルネッサンス・フルート、イリアン・パイプス、オカリナという、ケルト音楽に深く根ざした5つの楽器を収録しています。Mac/Windows対応でスタンドアローン、またはAAX/AU/VSTプラグインとして動作します。早速見ていきましょう!

3種類のサウンド・モードを搭載 IRリバーブ・エフェクトを内蔵

 まずはサウンド・エンジンとなるソフトウェアEASTWEST Opus(無償)を起動。画面内のBROWSEをクリックし、BROWSEタブのINSTALLEDカテゴリーから“Hollywood Fntasy Winds→使用したい楽器名→モード”の順で選択します。モードにはLongやShortなどがありますが、ここでKeyswitchを選択すると、キー・スイッチでアーティキュレーションを切り替えることができるようになります。打ち込みの際、MIDIキーボードから各奏法を指示できるためお勧めです。Hollywood Fantasy Windsの読み込みが完了したら、Opusの画面最上段にあるPLAYタブをクリック。楽器はアイリッシュ・ホイッスル(ハイ)を選択しました。

 Hollywood Fantasy Winds画面の左上にはMOODセクションがあり、3種類のサウンド・モード・セレクト・ボタンを搭載。柔らかくなじみやすいサウンドのSOFT、定番オーケストラ・サウンドのCLASSIC(上部のメイン画像)、よりシネマティックで迫力のあるサウンドのEPICを選択可能です。

SOFTモードの画面。青色を基調としたデザインで、柔らかくなじみやすいサウンドを特徴とする

SOFTモードの画面。青色を基調としたデザインで、柔らかくなじみやすいサウンドを特徴とする

シネマティックで迫力のあるサウンドを持つEPICモード。画面の色は赤に変わる

シネマティックで迫力のあるサウンドを持つEPICモード。画面の色は赤に変わる

 各モードにおける大きな違いは、画面右下にあるMICROPHONESセクションのミックス・バランスや、REVERBセクションに内蔵するIR(Impulse Response)リバーブの種類、ダイナミック・レスポンス・カーブなどです。さらにユーザー・インターフェースの色も変化。SOFTモードでは青、CLASSICモードでは黄色、EPICモードでは赤になります。最初に制作したい音のイメージと各モードをきちんと合わせておくことで、後々の音作りが効率的に行えるでしょう。

 MOODセクションの下にはPERFORMANCEセクションを搭載。ポルタメントやレガートなど、リアルタイム演奏に適した4つのモードとTIMEノブを備えています。さらにこの下部にはSENSITIVITYセクションやMIDI CONTROL #セクション、ENVELOPEセクションなど多様なコントロールやMIDIオプション機能があります。

 一方の画面右側にはステレオ設定やダブラー機能を備えるSTEREO DOUBLEセクション、そしてREVERBセクションを搭載。これらの下部にはMICROPHONESセクションがありますが、ここではCLOSE/MID/MAIN/SRNDという4ポジションのマイク・サウンドを楽曲に合わせてミックスすることが可能です。CLOSEは楽器やアンサンブルを繊細にキャプチャーした音。MIDはステージの中央部分にセッティングされたマイク・サウンドで、MAINは音作りの中核となるデッカ・ツリーと広がり感を付与するアウトリガーの組み合わせです。最後のSRNDは、ステージ後方にセッティングされたマイクで広がりのある空間を再現することができます。それぞれの音量フェーダーやパン・ノブ、ソロ/ミュート・ボタンを自由に設定可能です。

 画面最下段の中央にはARTICULATIONSボタンを搭載。ここではキー・スイッチ設定や、各アーティキュレーションの音量調整などを行うことができます。レガート・スラーやビブラートがかったサステイン、さまざまな長さのショート・ノート、フラッター、グリッサンドなど、ケルト音楽の特徴的な奏法も豊富に収録されていて感心しました。

臨場感のあるサウンドのアイリッシュ・ホイッスル ソロ・パートにも活用可能なルネッサンス・フルート

 それでは、実際に音を鳴らしてみましょう。アイリッシュ・ホイッスルはハイとローの2種類がありますが、さらにハイにはD管とB♭管、ローにはD管とE♭管という合計4種類を収録しています。これらは音域だけでなく、音色の質感や鳴り方の特徴にも違いがあるので、同じフレーズを演奏しても異なるニュアンスを感じることができるでしょう。ユニゾンやオクターブで重ねてみたところ、非常に臨場感のあるサウンドを演出できました。印象的なのはビブラート。FingerとWesternの2タイプから選べ、その繊細なタッチの違いをキー・スイッチ1つで切り替えられるのも便利です。

 ルネッサンス・フルートは、フルートの優雅さとリコーダーのまろやかさを併せ持つようなサウンド。スタッカートの音色はきらびやかでオーケストラともよくなじみます。高域は奏者の息の振動音まで緻密に再現されており、ソロ・パートでも十分に使えることでしょう。

 イリアン・パイプスはバグパイプの一種で、ケルトの伝統楽器。その一音で独自の世界観を作り出せるでしょう。実際の楽器と同じ構成、すなわち低音部のドローン、伴奏を担当するレギュレーター、メロディを担当するチャンターが再現されています。アーティキュレーションでは、その特徴的な装飾音符が鮮やかに表現され、楽曲に躍動感とファンタジー感を与えてくれます。オカリナは柔らかくて神秘的な音色が魅力。レガートは滑らかでありながら、アタック感の強いものでも自然に響きます。

 総じて、どの楽器もMOOD機能が非常に優れていると感じました。ワンクリックでイメージに合う音色に切り替えられるため、音作りに手間がかかりません。また柔らかいサウンドのSOFTとエッジの効いたサウンドのEPICは真逆の特徴を持つものの、両者は各楽器の良さが際立つ音作りがされています。CLASSICは各楽器の基本的なサウンドを理解するための、最初のステップとして選ぶのがお勧めです。

 Hollywood Fantasy Windsが持つ幻想的な木管楽器のサウンドは、楽曲の持つ世界観をより一層深める手助けとなるでしょう。壮大なオーケストラ・サウンドに埋もれることのないきらびやかな存在感を放つ一方、素朴でありながらも繊細に響くサウンドは、映画やゲームのサウンドトラック、ファンタジー調の歌ものまで、さまざまな場面にて役立つこと間違いなしです!

 

眞塩楓
【Profile】気鋭の音楽クリエイター。近年のワークスは、avex ROYALBRATS「Foppery(feat. Kaede Mashio)」(作曲/編曲)、ときのそら「エレクトリカル・サーフィン」(作詞/作曲/編曲)など。

 

 

 

EASTWEST Hollywood Fantasy Winds

オープン・プライス

(ハイ・リゾリューション・オンライン・ストア価格:15,783円/価格は為替レートにより変動)

EASTWEST Hollywood Fantasy Winds

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13以上、スタンドアローンおよびAAX/AU/VST対応のホスト・アプリケーション
▪Windows:Windows 10以上(ASIOドライバー使用)、スタンドアローンおよびAAX/VST対応のホスト・アプリケーション
▪共通:クアッド・コア/2.7GHz以上のCPU、16GB以上のRAM、推奨は8コア/2.7GHz以上のCPU、32GB以上のRAM

製品情報

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