Direct Sound DS-60 レビュー:歌やナレーション収録をはじめ幅広いソースに適したコンデンサーマイク

Direct Sound DS-60 レビュー:歌やナレーション収録をはじめ幅広いソースに適したコンデンサーマイク

 Direct Soundは、アメリカのミズーリ州を拠点に、当初はヘッドホンメーカーとして20数年前にスタートした比較的新しいメーカーです。今回ご紹介するのは、そんな同社から“クラシックなボーカルマイクのようなサウンド”をうたって発売されたDS-60。さて、どんな製品なのでしょうか。早速見ていきましょう。

セルフノイズが低く扱いやすい 最大SPL 140dBで大音量楽器にも安心

 DS-60は、48Vファンタム電源で駆動するラージダイアフラム・コンデンサーマイクです。外箱を開封すると、ブランドロゴがあしらわれた持ち運びにも便利そうなセミハードタイプのキャリーケースが姿を見せ、その中にマイク本体とサスペンションホルダーが丁寧に収められています。

DS-60、サスペンションを収納可能な付属のセミハード・ケース

DS-60、サスペンションを収納可能な付属のセミハード・ケース

付属のサスペンションホルダー

付属のサスペンションホルダー

 マイク本体は、黒のボディに特徴的なデザインの金色のグリルで程良い高級感があります。公式のスペックにサイズや重量の記載はありませんが、比較的小柄で適度な重量感。感度は−35dB±2dB、セルフノイズが10dBAと低いので、扱いやすいマイクと言えるでしょう。指向性はカーディオイドのみです。コントロールは、−10dBのPADとローカットスイッチを本体前面に搭載しており、シンプルながらも必要なポイントは押さえている印象。アウトプットは標準的なXLR端子でインピーダンスは150Ω±20%、周波数特性は20Hz~20kHz、最大SPLは140dBとなっているので、ドラムやエレキギター、管楽器などの大音量の楽器にも安心して使えます。

 それでは、実際に音を聴いていきましょう。アーティストの自宅にて、DS-60をRME Babyface Pro FSに立ち上げ、マイクプリもオーディオインターフェース付属のものを使用して、まずはアコースティックギターを録音。本体のローカットとPADはともにオフにしていましたが、少しだけ低域が多いので、ローカットをオン。今度は、若干スッキリしすぎてしまったので元に戻して、DAWのEQで200Hzあたりを中心にQを広めでカットすると、明るくまとまりのある音になりました。ネック側に寄せ気味でマイキングしても高域の弦が硬く飛び出すこともなく扱いやすいです。普段スタジオで録音する際は、アコースティックギターにはスモールダイアフラムとラージダイアフラムのコンデンサーマイクを1本ずつ立ててブレンドして音を作ることが多いのですが、今回は本機一本でも十分に満足できる結果を得られました。

ボーカルのニュアンスをしっかりとキャッチ パーカッションでは太いアタックで打点が見えやすい

 次に、打ち込み主体の曲の女性ボーカルを録ってみます。一聴してクリアでエネルギッシュな音像ですが、不自然さや中域にクセがあるという印象はありません。むしろ周波数のバランスが良く、低域がしっかりありつつも嫌なたまり感はなく、サビなどでオケが派手になってもしっかりと歌が前に出てきます。中域の温かみや高域の華やかさもありますが、声を張ったときに耳に痛い感じや、歯擦音が気になるということもなく、ニュアンスなどもしっかり拾ってくれるので、正直なところマイクの価格を考えると驚くくらい良い音です。

 続けて、ソロバイオリンも録ってみます。程良いアタック感がありつつも中高域にピーキーな感じがなく、ボディのふくよかさも感じられます。EQで高域を上げていくと倍音も豊かに録れていますが、シャリシャリした嫌な感じはなくナチュラルな質感で、リバーブをあまりかけなくてもオケによくなじみます。

 最後に、タンバリンやシェイカー、ハンドクラップを録ります。これらのパーカッション類はマイクによってはアタックがシャープになりすぎてしまうことがあり、思ったような雰囲気で録れないという経験をしたことのある方もいらっしゃると思いますが、太めのアタックで打点が見えやすく、録音後の加工もやりやすいサウンドで録ることができました。

 日をあらためて、今度はスタジオでSolid State LogicのコンソールSL 4048 G+にDS-60を立ち上げて男性ロックボーカルを録ってみます。今回、録りの時点では、特に低い音程の際などに少し野太くなりすぎると思ったので、いったんDAWのモニター上のEQで250Hzを2dBほどカットしましたが、このあたりは曲やボーカリスト、モニターのミックス具合にもよると思います。太さがありつつも明瞭さやパンチ感があり、スタジオであらためて聴いても、“クラシックなボーカルマイクのようなサウンド”という触れ込みは伊達ではないと感じました。今回は試せませんでしたが、このクオリティだとドラムやピアノをはじめとする各楽器のオフマイクにも安心して使えそうです。

 録音後、今回歌ってもらったボーカリストにDS-60の感想を聞くと、2人とも歌いやすいと言っていました。歌を録るときにはこの“ボーカリストが歌いやすいと感じる”ことが何よりも重要だったりします。昨今、自宅などスタジオ以外の場所で歌を録る機会はますます増えていますが、ボーカリストが歌いやすいと感じるマイクを見つけることはとても大切です。DS-60は、音質の良さを考えると非常にコストパフォーマンスが高く、サイズや重量的なことを考えても扱いやすいので、初めてコンデンサーマイクを買おうとしている方には自信を持ってお薦めできる製品です。また、ベーシックな楽器の録音にも安心して使えますが、特に性別問わず声の録音に向いている印象なので、歌だけでなくナレーション録りにも向いているでしょう。

 

山崎寛晃
【Profile】HAL STUDIOを拠点とするエンジニア。Superfly、坂本真綾、Little Glee Monster、古内東子、ART-SCHOOL、SPANOVAなどを手掛け、曲想に合ったレコーディングに定評がある。

 

 

 

Direct Sound DS-60

99,800円

Direct Sound DS-60

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SPECIFICATIONS
▪形式:コンデンサー ▪感度:−35dB±2dB(0dB=1V/Pa@1kHz) ▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪出力インピーダンス:150Ω±20%(@1kHz) ▪最大SPL:140dB ▪外形寸法:60(φ)× 180(H)mm(実測値) ▪重量:370g(実測値)

製品情報

Direct Sound DS-60

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