CTM CE320 レビュー:音の経路を最適化しフィット感を追求したBA型ドライバー搭載イヤモニ

CTM CE320 レビュー:音の経路を最適化しフィット感を追求したBA型ドライバー搭載イヤモニ

 カスタムIEMメーカーとして有名なブランド、CTMが販売するユニバーサルIEM(インイヤモニター)、CEシリーズの最上位機種となるCE320をレビューします。

軽量で取り回しがよくホールド感に優れている 大編成でも楽器がすみ分けされるフラットな音像

 CEシリーズはCE110、CE210、CE320の全3機種。全モデルに、音が耳に届くまでの経路を最適化するというCTMの独自技術“W.I.S.E.(Wave Integrating Sonic Element)テクノロジー”が採用されています。

CEシリーズ製品ラインナップ。左から、ダイナミック型ドライバーを1基搭載したCE110 CLEAR(14,850円)、バランスドアーマチュア型ドライバーを2基搭載したCE220 CLEAR/SMOKE(各37,400円)

CEシリーズ製品ラインナップ。左から、ダイナミック型ドライバーを1基搭載したCE110 CLEAR(14,850円)、バランスドアーマチュア型ドライバーを2基搭載したCE220 CLEAR/SMOKE(各37,400円)

 CE320は最上位機種で、バランスドアーマチュア(BA)型ドライバーを3基搭載。それぞれが低域、中域、高域を担当します。カラーはCLEAR(メイン写真)とSMOKEの2種類です。

CE320は2色展開。写真はスモークカラーのCE320 SMOKE

CE320は2色展開。写真はスモークカラーのCE320 SMOKE

 CEシリーズのもう一つの特徴としては、2万人以上の耳の形のデータを基に、どんな耳にも合う“ユニバーサルフィットデザイン”を独自開発した点。耳型採取の手間なく、カスタムIEMと同等の優れた装着感を実現しています。付属のイヤーチップは、シリコン製とウレタンフォーム製の2種類。それぞれS/M/Lの3サイズで計6ペアが付属するため、自分に合った装着感を自由に調節できます。

CE320の付属品一式。0.78mm径2ピンケーブル(127cm)、CTMロゴ入りジッパーケース、標準プラグ変換アダプター、イヤチップ(シリコン/ウレタンフォーム、S/M/L、計6ペア)。写真右は製品パッケージ

CE320の付属品一式。0.78mm径2ピンケーブル(127cm)、CTMロゴ入りジッパーケース、標準プラグ変換アダプター、イヤチップ(シリコン/ウレタンフォーム、S/M/L、計6ペア)。写真右は製品パッケージ

 早速、CE320をさまざまな条件で使ってみました。まずは現在ツアー中のホールサイズのステージ(筆者の担当はドラム、パーカッション)で。第一印象でまず驚いたことは、そのフィット感と軽さ。筆者は普段ライブステージで体を動かす傾向があるのですが、イヤモニの装着感を忘れてしまうほど、とにかく軽量で取り回しがよく、ホールド感に優れていることが非常にうれしかったです。ステージ上で試した音の印象としては、非常に癖の少ないフラットな音像でした。

 イヤモニは現代の演奏家にとって、ステージにおける、ある種の命綱のような存在のようになっていますが、自分の演奏と音色をフラットな状態で聴いて音作りをすることは、演奏とのつじつまを合わせる上で非常に重要で、CE320はその視点において非常に良い選択だと思います。

 フラットであるが故に高域、中域、低域の存在がそれぞれはっきりとしていて、いろいろな音を冷静につかみやすいです。今回使用したステージは10人編成の大所帯でしたが、すべての楽器がきちんとすみ分けされ、ホールのサイズ感も見える。そのような点においても、プロの現場をきちんと見据えて設計しているのを感じました。

 先述の通り、筆者はドラム、パーカッションをメインに演奏していますが、特に今回、パーカッション演奏の際に皮モノの手触り感をきちんとつかめた点が非常にうれしかったです。フラットな特性を生かす上では、基本すべてのパートで使用できると思います。

 ハイエンドの伸びについては“明るい”印象。シルキーというより、明瞭に分離されているので、ややラウドな音楽や、アタックがはっきりした音を作りたい方に好まれそうです。また“分離感が良い”ことと“音が塊となって前に出てくる”という相反する要素の両立も感じました。

 ステージ上のイヤモニで気になる“遮音性”については、この軽さとは思えないほどきちんとしていて、しっかりとホールドされている感触でした。プロのステージ用イヤモニとしても使えることを考えると、初めてイヤモニを買う方にとってもコストパフォーマンスに優れていると思います。

歌録りでは楽曲内できちんと声が押し出される感覚 定位のつかみやすさからミックス用途にも期待

 今度は、自宅スタジオでの録りで試したところ、レコーディングにもとても使いやすい印象でした。先述した、色付けの少ないフラットな特性は、例えるならばスタジオで多用されるモニタースピーカーのYAMAHA NS-10Mと近い感覚。そして、宅録においてはより密閉感や遮音性が生かされ、音作りがしやすいと思いました。

 ボーカルレコーディングにも使用してみると、楽曲の中できちんと声が押し出される感覚を味わえました。特に、普段ローミッド辺りをつかむような歌い方をしている方にはとても良いと思います。

 続いては、ラフなミックス作業に使用してみました。その感触としては、音がフラットであることと、基本的な定位をつかみやすいという特徴から、良きミックスのスタートに望めそうです。個人的には、使いこなしていけばミックスチェックの際の一つとしても使えそうだと感じました。

 ここまでCE320をテストしてきましたが、長時間の装着は全く問題がありませんでした。外し忘れて椅子を離れないように注意する必要があるかもしれないと思うくらい、付けていることを忘れてしまうような感覚になれます。

 

神谷洵平
【Profile】ドラマー/作編曲家/プロデューサー。東川亜希子とのユニット=赤い靴での活動や劇伴、CM音楽の制作も行う。大橋トリオ、コトリンゴ、あいみょん、星野源らの作品やライブにも参加。

 

 

 

CTM CE320

52,800円

CTM CE320

SPECIFICATIONS
▪ドライバー構成:バランスドアーマチュア型ドライバー×3基 ▪カラー:クリア/スモーク ▪入力感度:124db SPL@1mW ▪周波数特性:20Hz〜16kHz ▪インピーダンス:20Ω@1kHz ▪接続端子:3.5mmステレオミニ ▪ノイズ減衰量:−26dB(最大値) ▪重量:5g(片耳) ▪付属品:イヤチップ(シリコン/ウレタンフォーム、S/M/L、計6ペア)、0.78mm 2ピンケーブル(127cm)、標準プラグ変換アダプター、CTMロゴ入りジッパーケース

製品情報

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