数分でギター・アンプやエフェクト・ペダルのサウンドを再現するプラグイン「IK MULTIMEDIA ToneX For Mac/PC」

「IK MULTIMEDIA ToneX For Mac/PC」数分でギター・アンプやエフェクト・ペダルのサウンドを再現するプラグイン

フックアップが運営するオンライン・ストアのbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのはIK MULTIMEDIA ToneX For Mac/PCです。人工知能を使用したマシン・モデリング技術でギター・アンプやキャビネット、エフェクト・ペダルといったサウンドをキャプチャー&再現できるプラグイン。Mac/Windows対応で、スタンドアローンおよびAU/AAX/VSTプラグインとして動作します。それでは詳しく解説していきましょう。

Tone Modelやプリセットのセレクト/試聴/音色調整などが行えるPLAYER画面

 ToneXというのは、IK MULTIMEDIAの独自技術AI Machine Modelingでギター・アンプやキャビネットのほか、ディストーション、EQ、ブースターといったエフェクト・ペダルのサウンドを“Tone Model”としてキャプチャーし、実機とほとんど区別のつかないレベルで再現するシステムのこと。ToneX For Mac/PCはそのプラグイン版で、このほかにはiOSアプリ版の“ToneX APP”があります。

 ToneXのバージョンについてもご紹介しましょう。上から順にToneX MAX、ToneX、ToneX SE、ToneX CSという4つのバージョンがあり、それぞれ収録内容が異なります。

●ToneX MAX:1,000種類のTone Model、100種類のアンプ/50種類のエフェクト・ペダル・サウンドを収録

●ToneX:400種類のTone Model、40種類のアンプ/20種類のエフェクト・ペダル・サウンドを収録

●ToneX SE:200種のTone Model、20種のアンプ/10種のエフェクト・ペダル・サウンドを収録

●ToneX CS:20種のTone Model、10種のアンプ/5種のエフェクト・ペダル・サウンドを収録

 ToneX CSのみ無償となっており、ToneX SE以上のバージョンでは自分以外のユーザーが作成したTone Modelを無制限にダウンロードできるほか、自身でキャプチャーしたTone Modelを後述する“ToneNET”にアップロード/共有することが可能です。

 ToneX For Mac/PCは、Tone Modelやサウンド・プリセットのセレクト/試聴/詳細情報の確認/音色調整などが行える“PLAYER”画面と、Tone Modelをキャプチャーして保存するまでのガイドをしてくれる“MODELER”画面の2つで構成されており、両者は画面左上にあるタブで切り替えることができます(画面①)。

画面① IK MULTIMEDIA ToneX For Mac/PCのPLAYER画面とMODELER画面は、画面左上に見えるPLAYER/MODELERタブで切り替えることができる。PLAYER/MODELERタブの下段には、アンプの音色調整パネルを表示するボタン(赤枠)のほか、ノイズ・ゲート、アンプ、キャビネット、コンプレッサー、リバーブの設定ボタンが並んでいる

画面① IK MULTIMEDIA ToneX For Mac/PCのPLAYER画面とMODELER画面は、画面左上に見えるPLAYER/MODELERタブで切り替えることができる。PLAYER/MODELERタブの下段には、アンプの音色調整パネルを表示するボタン(赤枠)のほか、ノイズ・ゲート、アンプ、キャビネット、コンプレッサー、リバーブの設定ボタンが並んでいる

 PLAYER画面ではアンプにおけるさまざまなパラメーター調整が行えるほか、ノイズ・ゲートやコンプレッサー、リバーブといったエフェクトの調整も可能です。また、Tone Modelの詳細情報は画面右端にある“TONE MODEL INFO”セクションに表示され、キャプチャー時に使用したアンプやキャビネット、マイクの種類などが確認できます(画面②)。

画面② PLAYER画面右端にあるTONE MODEL INFOセクション。Tone Model名、作成者、キャプチャーした日、キャプチャー時に使用したアンプ/キャビネット/マイクの種類/アウトボードといった詳細情報が確認できる

画面② PLAYER画面右端にあるTONE MODEL INFOセクション。Tone Model名、作成者、キャプチャーした日、キャプチャー時に使用したアンプ/キャビネット/マイクの種類/アウトボードといった詳細情報が確認できる

 PLAYER画面の下半分では、Tone Model/サウンド・プリセットの検索が行えるセクションがあります。ワンクリックで最大化して表示させることも可能で、並び替えやフィルタリング、試聴、お気に入り登録が行えるほか、独自の設定を保存することも可能です。

 PLAYER画面右上には“ToneNET”というボタンがあります。ToneNETとは、オンライン上でユーザー同士がキャプチャーしたTone Modelをシェアできるプラットフォームのこと。ToneNETボタンをクリックすることで無数のTone Modelにアクセスでき、検索/試聴/ダウンロードなどがスムーズに行えます(画面③)。

画面③ PLAYER/MODELER画面の右上にあるToneNETボタンをクリックすることで、ユーザー同士がTone Modelをシェアするオンライン・プラットフォームToneNETへアクセスできる。試聴して気に入ったものは、ダウンロードして自身の楽曲に使用可能だ

画面③ PLAYER/MODELER画面の右上にあるToneNETボタンをクリックすることで、ユーザー同士がTone Modelをシェアするオンライン・プラットフォームToneNETへアクセスできる。試聴して気に入ったものは、ダウンロードして自身の楽曲に使用可能だ

Tone Modelのキャプチャー方法をプロセス順に手引きしてくれるMODELER画面

 ToneX For Mac/PCは、Tone Modelを検索セクションから選んで使用するだけでも十分楽しめますが、自分自身でTone Modelをキャプチャーすることで、その楽しさは何倍にも膨れあがるでしょう。

 MODELERタブをクリックすると、Tone Modelをキャプチャーして保存するまでのプロセスが順番に記載された画面へ移ります。ここでは、キャプチャーする機材や楽器を選択する“Type”(画面④)、キャプチャーする際のルーティング設定を確認できる“Setup”、入力レベルを確認する“Check”、演奏をキャプチャーする“Capture”、AIによるモデリング精度を選べる“Training”、モデルとなった元のサウンドとAIがモデリングしたTone ModelをAB比較できる“Review”、Tone Modelのスキン画像を選べる“Skin”(画面⑤)、作成したTone Modelの名前や詳細情報を書き込んで保存する“Save”(画面⑥)、という項目が用意されています。

画面④ MODELER画面のTypeでは、キャプチャーしたい機材や楽器の種類をセレクト。画面左からアンプ+キャビネット、エフェクト・ペダル+アンプ+キャビネット、エフェクト・ペダルのみ、アンプのみ、エフェクト・ペダル+アンプといったアイコンが並んでいるので、どれか1つを選択して次のプロセスへ進む

画面④ MODELER画面のTypeでは、キャプチャーしたい機材や楽器の種類をセレクト。画面左からアンプ+キャビネット、エフェクト・ペダル+アンプ+キャビネット、エフェクト・ペダルのみ、アンプのみ、エフェクト・ペダル+アンプといったアイコンが並んでいるので、どれか1つを選択して次のプロセスへ進む

画面⑤ MODELER画面のSkinでは、作成するTone Modelのスキン画像を一覧からセレクトすることが可能だ

画面⑤ MODELER画面のSkinでは、作成するTone Modelのスキン画像を一覧からセレクトすることが可能だ

画面⑥ MODELER画面の最後の手順であるSave。作成したTone Modelの名前や説明、アンプやキャビネットの詳細情報、録音に使用したマイク名/アウトボード名などを記載する

画面⑥ MODELER画面の最後の手順であるSave。作成したTone Modelの名前や説明、アンプやキャビネットの詳細情報、録音に使用したマイク名/アウトボード名などを記載する

 プラグイン上でのキャプチャーなので入出力のゲイン設定に注意を払う必要がありますが、ルーティングは普通のリアンプと同じで問題ありません。つまり、オーディオ・インターフェース→リアンプ・ボックス→キャプチャーしたい機材(アンプ+キャビネットやエフェクト・ペダルなど)→マイク→オーディオ・インターフェースへ入力という流れです。

 ちなみに、アンプからのダイレクト信号とキャビネットの音を収音するマイク信号を同時に接続できるハードウェア、IK MULTIMEDIA ToneX Captureも今後発売される予定なので、リアンプ・ボックスを持っていない人でもこれがあれば安心でしょう。

 Trainingで選べるモデリング精度は、“Fast/Default/Advanced”の3つが用意されています。最も計算量の少ないFastでも十分な再現度が得られるでしょう。時間は、M1チップ搭載のAPPLE MacBook Airで約5分半かかりました。

“本物と区別できない”くらい忠実な再現度。AmpliTube 5でもTone Modelを読み込める

 さて、ここまで肝心の音について触れてきませんでしたが、それは言うまでもなく“本物と区別できない”くらい忠実な再現ができるから。プラグインでキャプチャーするため入力時のゲイン設定を注意深く行う必要がありますが、そこさえクリアすれば本当にアンプに通してギターを弾いているような感覚で演奏することができます。

 さらに注目したいのが、Tone Modelではアンプ部分とキャビネット部分のサウンドを別々に扱えること。例えばキャビネット部分をほかのTone ModelやIRデータ、またはIK MULTIMEDIAの独自技術である“VIR”(Volumetric Impulse Response)データに差し替えることもできるのです。これにより、音作りの可能性は際限なく広がります。

 そして、ギター/ベース・アンプ&エフェクト・プラグインIK MULTIMEDIA AmpliTube 5でTone Modelを読み込めるのも非常に大きなポイントです。例えば、アンプとキャビネットにはTone Modelを採用し、ワウやブースター、EQ、空間系エフェクトなどはAmpliTube 5内蔵のモジュールで作ることで、ギター・トーンをAmpliTube 5上だけで完結させることができます。

 ToneX For Mac/PCは、ギター・アンプやエフェクト・ペダルに特化したプラグイン・シーンに大きなインパクトをもたらしたように思います。普段から宅録を行っているギタリストやベーシスト、音楽クリエイターにとって十分なアドバンテージを発揮するでしょう。特に普段ギターは弾くけれど、“ハードウェアのアンプ・シミュレーターを購入するのはあまり気が進まない”といった方や、頻繁にリアンプを求められる機会のあるミュージシャンにとって、ToneX For Mac/PCは唯一無二の選択肢だと言えます。

 

IK MULTIMEDIA ToneX For Mac/PC

beatcloud価格:
ToneX MAX:58,790円|ToneX:36,740円|ToneX SE:22,040円

 Requirements 
■Mac:macOS 10.10以降(64ビット)、AAX/AU/VST2&3対応のホスト・アプリケーション、INTEL Core 2 Duo以上のCPU(Core I5推奨)
■Windows:Windows 7以降(64ビット)、AAX/VST2&3対応のホスト・アプリケーション、INTEL Core 2 DuoまたはAMD Athlon 64 X2以上のCPU(Core I5推奨)
■共通項目:3GB以上のストレージ空き容量、4GB以上のRAM(8GB推奨)

 

青木征洋/Godspeed

【Profile】作編曲家/プロデューサー/ギタリスト。『ストリートファイターV』や『ベヨネッタ3』の作曲のほか、アジアや北米、欧州のタイトルも手掛ける。レーベルViViXを主宰しつつギター・インストの流布に努める。

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