AUSTRIAN AUDIO OD5 / OC7 レビュー:ヘッドが220°回転するアクティブ・ダイナミック/コンデンサー・マイク

AUSTRIAN AUDIO OD5/OC7 レビュー:ヘッドが220°回転するアクティブ・ダイナミック/コンデンサー・マイク

 録音後に指向性を変えられるコンデンサー・マイクOC818などで知られるウィーンのブランド=AUSTRIAN AUDIOから、新たなマイクのOD5とOC7が発売されました。

OD5は中域と低域の情報量が多く柔らかくて余裕のあるサウンド

 OD5は+48Vファンタム電源で動作するアクティブ・ダイナミック・マイク。OC7はコンデンサー・マイクです。両者に共通するのは、楽器用かつ単一指向性であることのほか、ヘッドが220°回転するデザイン、独自のオープン・アコースティック・テクノロジーの採用、頑丈なダイキャスト・ボディなど。そして、いずれも−10dBのPADを備えています。

OD5のヘッドを回転させ、側面から見たところ。最大220°の回転が可能で、マイキングの自由度が高い

写真左はOD5の背面で、右はOC7の背面。両機種の上の方に見えるのは−10dB PADのスイッチで、下にはローカット・スイッチを配置。カットオフ周波数は、OD5が80/120Hz、OC7が40/80Hzとなっている

写真左はOD5の背面で、右はOC7の背面。両機種の上の方に見えるのは−10dB PADのスイッチで、下にはローカット・スイッチを配置。カットオフ周波数は、OD5が80/120Hz、OC7が40/80Hzとなっている

 オープン・アコースティック・テクノロジーは、回析や不要な反射/共振を抑制し、ナチュラルな音を作り出すという技術。このことから2機種とも、特にライブなどでの使用を想定しデザインされている印象です。

 OD5のメリットは、内蔵のアクティブ回路で増幅してからマイクプリに送出できるため、ケーブル引き回しによる信号レベルのロスが起こりにくいこと。また、最大音圧レベルが通常で151dB SPL、PAD使用時には160dB SPL以上になるので、ギター/ベース・アンプや管楽器といった大音量のソースにも使えます。

 実際にギター/ベース・アンプをOD5で録音してみたところ、これまで筆者のファースト・チョイスであったダイナミック・マイクとほとんど印象は変わらなかったものの、中域と低域の情報量が少し多く、柔らかくて余裕のある音に感じられました。また、筆者はベース・アンプを録音するときに、少し下の方からコーンの中心を狙うことが多いのですが、ヘッドが220°回転するデザインにより、マイク・スタンドを調整せずとも細かいところまでマイキングを追い込めたのは好印象でした。

 ドラムのタムも、今まで使用してきたダイナミック・マイクと比べてアタックは同じような印象でしたが、胴鳴りがより豊かに表現できていると感じました。今回、ホーン系に試す機会が無かったのですが、特にトロンボーンなんかにぴったりなのではないかなと思います。

OC7は高域のギラつきが無く中域が豊か

 OC7はトランジェントの情報量が豊かな音に向くとうたっており、ドラム、パーカッション、アコースティック・ギター、ストリングス、ピアノなどが対象楽器として挙がっています。

 まずは、家でも録れるアコースティック・ギターでトライしてみました。いつも使っているコンデンサー・マイクに比べると、ギラギラした高域が無く落ち着いていて、中域の情報量と表現が豊か。良い意味で、ダイナミック・マイクとコンデンサー・マイクの良いとこ取りのような音です。ルーム・チューニングがあまり施されていない自宅録音では、普通のコンデンサー・マイクだと初期反射などを拾いすぎてしまう傾向にありますが、OC7は不思議とそういうところがなく、場所を問わずに使えそうです。ですから、やはりライブでの使用を念頭に開発されているという印象が強くなりました。

 次にパーカッションでチェック。パーカッショニストがカホンに座り、周りにはシンバル、ウィンド・チャイム、弓、カウベルなどの鳴り物があるというセッティングで使用しました。コンデンサー・マイクなので、金物が良いかなと思いウィンド・チャイムに設置。通常、パーカッション周りには物が多くマイクのセッティング時に苦戦するのですが、ヘッドが220°回転するデザインによりスムーズに行えました。また、マイク自体が小さいのでライブ時は見栄えも良いと思います。

かぶりも“使える音”に録れる

 肝心の音は、耳に痛くならず奇麗に録れたのはもちろんですが、カホンのかぶりも“使えるかぶりの音”です。通常、ウィンド・チャイムのフェーダーを上げていくと、カホンのかぶりが邪魔をして、カホン自体の音の印象を変えていってしまうのですが、その辺りの変化が少ないように思いました。先述したオープン・アコースティック・テクノロジーの効果でしょうか。リハーサル・スタジオに併設されたレコーディング・スタジオで働いていた頃、OC7のような“コンデンサー型なのにダイナミック・マイクのような質感のマイク”を好んで使っていたのを思い出しました。その音は、かぶっている音の性質のせいだったのかもしれません。

 価格も含めてOD5/OC7へのインプレッションを総括するなら、プロフェッショナルのライブPA現場で音に余裕と豊かさをプラスし、出音をブラッシュアップするために開発されたという印象です。筐体サイズ、ヘッドが回転するデザイン、OD5の内蔵アクティブ回路などから、強くそういうメッセージを受け取ることができます。また、複数の楽器がブース一部屋に混在して一発録りする場合、もしくはドラムやパーカッションなど複合楽器の録音にも最適でしょう。

 金額的には、有名ブランドのラージ・ダイアフラム・マイクの低価格版くらいなのでそこそこしますが、そうしたマイクがうまくフィットしなかったような人であれば、使用環境をあまり選ばず宅録&ライブに使用できるOD5/OC7を購入して、どんどん使っていく方が結果的にコスト・パフォーマンスが良いかもしれません。

 

鈴木鉄也
【Profile】Syn StudioやRinky Dink Studioを経て、2006年からフリーのレコーディング・エンジニアに。MONKEY MAJIK、COLDFEET、オーサカ=モノレール、遊佐未森らの作品に携わってきた。

 

AUSTRIAN AUDIO OD5/OC7

OD5/オープン・プライス(市場予想価格:48,400円前後)、OC7/オープン・プライス(市場予想価格:80,300円前後)

AUSTRIAN AUDIO OD5/OC7

SPECIFICATIONS
●OD5
▪形式:アクティブ・ダイナミック型 ▪駆動電圧:48V(1.5mA以下) ▪周波数特性:20Hz〜18kHz ▪感度:6.7mV/Pa ▪最大音圧レベル:151dB SPL(PAD使用時は160dB SPL以上) ▪重量:265g
●OC7
▪形式:コンデンサー型 ▪駆動電圧:48V(2mA以下) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪感度:10mV/Pa ▪最大音圧レベル:154dB SPL(PAD使用時は160dB SPL以上) ▪重量:275g
●共通項目
▪指向性:単一 ▪インピーダンス:275Ω(シンメトリー) ▪外形寸法:82(W)×147(H)×54(D)mm

製品情報

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