ANTARES Harmony Engine レビュー:単一のソースから4種類のハーモニー生成が可能なプラグイン・エフェクト

ANTARES Harmony Engine レビュー:単一のソースから4種類のハーモニー生成が可能なプラグイン・エフェクト

 今回紹介するのは、サブスクリプション・バンドルAuto-Tune Unlimitedにも含まれているANTARESのハーモニー生成プラグイン、Harmony Engine。“最適なハモりを付けたいけど、どうやったらいいのか分からない”といったような悩みを簡単に解決するアシストをしてくれる製品です。

さまざまな表現ができるHUMANIZEとGLIDE 各チャンネル・ストリップで細かい調節も可能

 起動するとシックなデザインのウィンドウが立ち上がり、この画面にすべての機能が集約されていて便利です。それでは一つずつ機能を見ていきましょう。HUMANIZE(メイン画像の画面の上部左端)は、生成したハーモニーの揺らぎの特性を調整するパラメーター。Naturalize(ピッチ補正の自然さ)、Pitch Variation(ピッチの揺れ)、Timing Variation(タイミングのずれ)の数値を設定することで、機械的なハーモニーから、自然なニュアンスまで調整が可能です。

 GLIDE(メイン画像の画面の上部中央)は、生成されたハーモニーの音のつながりを調整するパラメーター。Transition Rateの数値を下げるといわゆる“ケロケロ・ボイス”的なピッチ補正感の強い質感になり、数値を上げるとナチュラルな質感になります。GLIDE右横のFREEZEは、オンにした瞬間のピッチでハーモニーを持続的に鳴らせるので、リード・ボーカルの裏でコードを鳴らしたいときなどに便利な仕様です。

 HARMONY CONTROLでは、文字通りどのようにハーモニーをコントロールするか、Harmony Sourceのメニューから選択可能です。

HARMONY CONTROLでは、Harmony Sourceからどのようにハーモニーをコントロールするかというモードを選択可能。Intervalモード(Scale/Fixed)では、各チャンネル・ストリップ上部のIntervalでハーモニーの音程変更が可能になる。Chordモード(Degrees/Name)では、Key/Root、Scale、Chord、Inversion、Spread、Registerの各メニュー/パラメーターからコードとコード・ボイシングの特徴を選択でき、設定に基づいてハーモニーに自動的に音程が割り当てられる仕様となっている。MIDIモード(Chord Via/Omni/Channels)では、MIDI信号の入力を受けてハーモニーのピッチ・コントロールが可能。MIDI Velocity Sensitivityの値によって、MIDIノートのベロシティによるハーモニーの音量が変化する具合も調整可能となっている

HARMONY CONTROLでは、Harmony Sourceからどのようにハーモニーをコントロールするかというモードを選択可能。Intervalモード(Scale/Fixed)では、各チャンネル・ストリップ上部のIntervalでハーモニーの音程変更が可能になる。Chordモード(Degrees/Name)では、Key/Root、Scale、Chord、Inversion、Spread、Registerの各メニュー/パラメーターからコードとコード・ボイシングの特徴を選択でき、設定に基づいてハーモニーに自動的に音程が割り当てられる仕様となっている。MIDIモード(Chord Via/Omni/Channels)では、MIDI信号の入力を受けてハーモニーのピッチ・コントロールが可能。MIDI Velocity Sensitivityの値によって、MIDIノートのベロシティによるハーモニーの音量が変化する具合も調整可能となっている

 今回のテストではHarmony Engineの最大の魅力である、簡単にハーモニーを生成できるScale Intervalモードを選択しました。今回筆者が使用するボーカル素材はキーがAメジャーだったので、Key/RootでA、ScaleでMajorを選択します。再生するとこの時点で既にとてもクオリティの高いハーモニー・サウンドが生成されたのですが、もう少し細かく操作してより自分好みの設定にしていきましょう。

 続いて、Harmony Engineのメイン・コンソール部分(メイン画像の画面中央)。一番左のチャンネル・ストリップが原音、その右に並ぶ4つのチャンネル・ストリップが各ハーモニーに対応しており、ソロ/ミュート・ボタン、ゲイン・フェーダー、パンニングが共通して搭載されています。原音のチャンネル・ストリップにあるTrackingは、Harmony Engineが原音を正確に認識するためのビブラートの許容量を調整するものです。原音にノイズ成分などが含まれている場合はTrackingの数値を上げるとよいでしょう。HARMONY CONTROLでIntervalモードを選択している際は各ハーモニーのチャンネル・ストリップ上部のIntervalでそれぞれの音程を変更可能です。Scale Intervalモードでは16va〜16vb(±2オクターブ)の範囲で音階を、Fixed Intervalモードでは−24から+24の範囲で半音ずつ調整できます。フォルマント・シフト的に声の質感を操作できるThroat Lengthといった機能のほか、ビブラートも搭載されています。

分厚いハーモニーを生成できるCHOIR 設定を保存し簡単に呼び出せるプリセット機能

 原音のチャンネル・ストリップの下部にあるInput Vocal Rangeでは原音の声域を指定でき、Model Glottalでは生成されるハーモニーの歌唱スタイルを変更できます。さらにその下にあるDe-Noiseボタンを押すことによってハーモニー生成に不要なノイズを除去することが可能です。

 ウィンドウ最下部のCHOIRでは原音/各ハーモニーをユニゾンする歌声に変更でき、歌声の数量/音程の揺れ/発声タイミングのズレなどが調整可能です。

メイン画面下部のCHOIRでは、原音/各ハーモニーをユニゾンする歌声に変更可能。Choir Size(赤枠)でユニゾンする歌声の数を2/4/8/16 Voicesの4種類から選択可能。Vibrato(青枠)でビブラートの深さ、Pitch(黄枠)で音程の揺れ、Timing(緑枠)で発声タイミングのずれ、Stereo Spread(白枠)でステレオ感をそれぞれ調整することができる。CHOIR上部にあるそれぞれのINPUTボタンを使うと効果のオン/オフが可能で、左端のBypassボタンですべてのチャンネルのCHOIR効果を一斉にバイパスすることもできる

メイン画面下部のCHOIRでは、原音/各ハーモニーをユニゾンする歌声に変更可能。Choir Size(赤枠)でユニゾンする歌声の数を2/4/8/16 Voicesの4種類から選択可能。Vibrato(青枠)でビブラートの深さ、Pitch(黄枠)で音程の揺れ、Timing(緑枠)で発声タイミングのずれ、Stereo Spread(白枠)でステレオ感をそれぞれ調整することができる。CHOIR上部にあるそれぞれのINPUTボタンを使うと効果のオン/オフが可能で、左端のBypassボタンですべてのチャンネルのCHOIR効果を一斉にバイパスすることもできる

 テストではChoir Sizeメニューで16 voicesを選択し、16個分のユニゾンとなったハーモニーを生成。Stereo Spreadでステレオ感を調整することで、さらに広がりがあるとても分厚いハーモニーを容易に作ることができました。ここまで解説してきたそれぞれの設定は、メイン・コンソール部分右横にあるHARMONY PRESETS、VOICE PARAMETER PRESETSで保存することでいつでも簡単に呼び出すことが可能です。

 実際にテストしてみて、似たようなハーモニー効果を得られるプラグインと明らかに違うと思った点があります。それは、“生成されたハーモニーが人間らしいとても自然なものである”という点です。それぞれのチャンネル・ストリップのパラメーターなど幾つかの項目を操作するだけで実際にボーカルや楽器を何テイクも録音して重ねたような、自然なハーモニー・サウンドをとても簡単に作ることができるので、プロ/アマチュア問わずとても実用的なプラグインであると言えるでしょう。

 音楽を聴いていて“これはおそらくHarmony Engineを使っているな”と思うことは少なくありません。第一線で活躍するようなミュージシャンたちは、多人数や多重録音でコーラスを重ねることでハーモニーを作るすべを持っていながら、あえてHarmony Engineのサウンドを選択しているんだと思います。このように、本製品はハーモニーを作るのが苦手な方にはもちろんのこと、自力でハーモニーを作ることができる人にもお薦めできるプラグインです。

 

JUVENILE
【Profile】独自のCity Musicを発信し続けるDJ/アーティスト/音楽プロデューサー/トークボックス奏者。数々の作編曲や舞台『ヒプノシスマイク』の楽曲など、多方面で活躍。

 

 

 

ANTARES Harmony Engine

オープン・プライス

(市場予想価格:47,850円前後)

ANTARES Harmony Engine

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 11以降、AAX/AU/VST3対応のホストアプリケーション
▪Windows:Windows 10/11、AAX/VST3対応のホストアプリケーション

製品情報

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