AMPLE SOUND Ample Bass TR6 III レビュー:TRBのジョン・パティトゥッチ・モデルをサンプリングした6弦ベース音源

AMPLE SOUND Ample Bass TR6 III レビュー:TRBのジョン・パティトゥッチ・モデルをサンプリングした6弦ベース音源

 AMPLE SOUND初の6弦ベース音源Ample Bass TR6 III。筆者はベースから音楽を始めたので、今回はベーシストと音楽クリエイターの2つの目線でレビューしていきます。

12種類のアーティキュレーションが用意されている

 Ample Bass TR6 IIIは、フュージョン/ジャズ・ベーシストのジョン・パティトゥッチのシグネチャー・モデル=YAMAHA TRBJP2のサウンドをサンプリングしたベース音源。ローはB0、ハイはD5と、6弦ベースならではの広範囲な音域をカバーしており、アンプや各種エフェクトを使用した多彩な音作りが可能です。

 画面は上下に大きく2つに分かれていて、TRBJP2のイラストがあしらわれた上半分がInstrumentパネル、下半分は画面左上部のボタンを押していくと表示される操作パネルです。Instrumentパネルでは、プリセットの選択や、チューニングの調整などができるようになっています。

 下半分の操作パネルについて見ていきましょう。まずは、起動時に表示されるMainパネルについて(上のメイン画面下部)。左側に並ぶ12個のマークは、現在有効になっているアーティキュレーションを表示するもの。キー・スイッチはMIDI鍵盤のA1〜G♯0に割り当てられており、ミュート、ハーモニクス、スライド、スラップなど、通常のベース演奏に求められる奏法が一通りそろっています。開放弦ではスライドが反映されないところも、よくできていると感じました。

 リアルタイム入力をする際は、61鍵以上のMIDIキーボードを使用して、左手でキー・スイッチを押し、右手で演奏するのがお勧めです。瞬時に奏法を切り替えられるので、楽曲制作時に浮かんだアイディアを逃すことなく作業できます。

 アーティキュレーション・マークの右に並ぶフェーダーやノブは、DI経由の音や複数用意されているマイクごとの音量調整、パンやカポタストの設定などが可能です。

 画面右端にあるPlaying Mode Switchは、プレイ・モードを設定するボタン。本来はできない“同一弦で複数のノートを同時に発音する”というKEYBOARD MODEが用意されているのが特徴です。

Mainパネル右端のボタン。上はPlaying Mode Switch。実機と同じ仕様のSTANDARD MODE、同一弦で複数のノートを同時に発音できるKEYBOARD MODE、モノフォニックで発音するSOLO MODEを切り替える。下はノート間をハンマリング・オン/プリング・オフで移動させるもの

Mainパネル右端のボタン。上はPlaying Mode Switch。実機と同じ仕様のSTANDARD MODE、同一弦で複数のノートを同時に発音できるKEYBOARD MODE、モノフォニックで発音するSOLO MODEを切り替える。下はノート間をハンマリング・オン/プリング・オフで移動させるもの

 6弦ベース音源なので、実機と同じ仕様のSTANDARD MODEでも十分和音演奏に向いていますが、このKEYBOARD MODEでは7音以上の同時発音が可能なので、“ポリフォニックな鍵盤楽器”として使うのも非常に面白いと思います。

音作り次第でエレピやプラックのような表現ができる

 続いてはRIFFERパネルについて。最大64小節のフレーズを作成可能で、ジャンルごとに用意された500種類のプリセットの使用や編集も行えます。MIDIファイルはDAWのプロジェクトへドラッグ&ドロップ可能なので、プリセット・データをドラッグ&ドロップして、アーティキュレーション・スイッチの使用法のヒントにするのもよいでしょう。画面下部中央にあるサイコロ・マークからは、演奏スタイルなどを指定した状態でのリフのランダム生成が可能です。

RIFFERパネル。最大64小節のフレーズを作成可能。画面下部中央のサイコロ・マークから、演奏スタイルなどを指定した状態でリフのランダム生成ができる

RIFFERパネル。最大64小節のフレーズを作成可能。画面下部中央のサイコロ・マークから、演奏スタイルなどを指定した状態でリフのランダム生成ができる

 AMPパネルでは、AMPEGを思わせる3種のアンプ・ヘッドに加え、4種のアンプ・キャビネットのモデリングが用意されています。ミキサー・セクションで、収音するダイナミック/コンデンサー・マイクを選択したり、それぞれのマイクやDIなどの音量、パンなどを調整可能です。極端なセッティングにしてみても非常にナチュラル。ルーム・マイクの音量を上げてヘッドフォンで聴いてみると、まるでスタジオでベースを弾いているような臨場感がありました。

AMPパネル内にある、キャビネットの選択やマイクのミックスができるAMP Cabパネル。キャビネットのイラストの左右にある<>でキャビネットを変更し、画面右側のミキサー・セクションでマイクなどのミックスを行う。アンプヘッドは、画面右上のボタンから表示画面を切り替えて選ぶ

AMPパネル内にある、キャビネットの選択やマイクのミックスができるAMP Cabパネル。キャビネットのイラストの左右にある<>でキャビネットを変更し、画面右側のミキサー・セクションでマイクなどのミックスを行う。アンプヘッドは、画面右上のボタンから表示画面を切り替えて選ぶ

 最後に紹介するFXパネルには、ソフト/ハード・ニーの切り替えが可能なコンプレッサー、8バンドEQ、最大6タップのエコー、リバーブの4つのセクションがあり、ほぼこのソフト音源内で音作りが完結できるようになっています。

FXパネル。左側の4つのボタンで編集する項目を選ぶ(上からコンプレッサー、EQ、エコー、リバーブ)。画面ではリバーブを選択

FXパネル。左側の4つのボタンで編集する項目を選ぶ(上からコンプレッサー、EQ、エコー、リバーブ)。画面ではリバーブを選択

 試しに、エコーのパンを左右に振り、リバーブはLarge Hallを選択してBass Gainノブを上げると、非常に深みのある音像になりました。これをシンセ・パッドの上で演奏するだけで、叙情的なアンビエント・ミュージックの完成です。6弦ベース故の音域の広さもあり、音作りによってはアタックの強いエレピやシンセのプラック・サウンドのような表現が可能。いわゆるベース・ソロの範囲を越えて、楽曲を作り込んでいけるという可能性を感じました。

 AMPLE BASS TR6 IIIは、どの音域もクリアで抜けが良くアンサンブルに埋もれないのに、派手というよりは落ち着きのある音という印象です。筆者がYAMAHAのベースに寄せる、優等生なサウンド・イメージと一致します。ポップスやフュージョンなどに適していると思いますが、素直な音質なので、外部エフェクトを併せて使用すれば指弾きスタイルの全ジャンルに対応できるでしょう。

 このレビューを書くにあたり、パティトゥッチ氏のベース・プレイを聴き返しましたが、1曲の中でさまざまな奏法やフレーズが盛り込まれ、これらがテクニック重視でなく、アレンジとして成り立っていると改めて気付かされました。この音源を使用して新しい音楽表現を生み出すことを、氏もきっと楽しみにされていると思います。

 

Naive Super
【Profile】ニューウェーブ/インディ・ロック/シティ・ポップ/チルアウトなどを軸に、エキゾチックな雰囲気も漂わせるシンセ・ポップ・アーティスト。2020年の4月より、デジタルにて連続リリースを続ける。

 

AMPLE SOUND Ample Bass TR6 III

17,600円(価格は為替レートにより変動)

AMPLE SOUND Ample Bass TR6 III

REQUIREMENTS
▪Mac:OS X 10.9以降
▪Windows:Windows 8/10/11(64ビットのみ)
▪共通項目:Intel Core I5以上のCPU、4GB以上のRAM、16GB以上のハードディスク
▪対応フォーマット:AAX、AU、VST2、VST3、スタンドアローン

製品情報

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