「ADV. Model 3W」製品レビュー:有線/無線に両対応したイアモニとBluetoothレシーバーのセット

「ADV. Model 3W」製品レビュー:有線/無線に両対応したイアモニとBluetoothレシーバーのセット

 ADV.のModel 3Wは、ハイレゾ対応のインイア・モニターModel 3とBluetoothレシーバーAccessport Airを合わせた、有線/無線の両方で使えるイアフォン・セットです。Webサイトには無骨なドラマーのエネルギッシュな写真、Bluetoothレシーバーには“DESIGNED FOR MUSICIANS”のキャッチ・コピー。ターゲットを絞ったコンセプトにADV.の覚悟を感じます。

イアフォンはストレスを感じない軽さ
長時間装着でも耳が疲れない

 Model 3Wには有線/無線の両方のシチュエーションを想定したロング/ショートの各ケーブルが用意され、付属の頑丈なキャリー・ポーチに収納できます。フォーム・イア・チップは彩度の高いライム色がスタイリッシュかつ圧倒的な軽さ。イアフォンは片側3gなのでAPPLE AirPodsよりも軽く、装着した際のストレスを全く感じません。耳にちょうどフィットして固定感がありつつ、インイア・モニター特有の耳の閉塞感はありませんでした。Bluetoothレシーバーもたったの12gと、例えるなら小さめの椎茸1本とほぼ同じ。シンプルなナビゲーション・ボタンにより説明書要らずと言えるほどです。スマートフォンおよびコンピューターでBluetoothのリンクを試みると、1秒以内に接続が完了しました。ユーザビリティの高さが心地良いです。

f:id:rittor_snrec:20210705175550j:plain

付属のキャリー・ポーチには、有線接続用MMCXリモコン付きケーブル(1.2m、TRRSミニ)、無線接続用MMCXショート・ケーブル(38cm、ステレオ・ミニ)、シリコン・イア・チップ(3ペア)、フォーム・イア・チップ(3ペア)、USB充電用ケーブルが収められている

 では、実際に有線/無線の両方で音を聴いてみましょう。まずは無線接続。普段の使用をイメージし、スマートフォンからSpotifyでランダムに再生してみます。低音はくっきりとタイトに締まり、ミドルからハイはギラつきも無くそのまま上に伸びるような、とても聴きやすい印象で驚きです。解像度が飛び抜けて高いというわけではありませんが、逆に長時間聴いていても全く疲れません。長時間の装着、モニタリング用途において“リッチ過ぎる音”の耳への負担など、現場で使用するミュージシャンのことを想定し、その声を汲み取りながら開発されたのではないかと思います。

 

 定位は若干センター寄りの印象ですが、決して立体感に欠けるというわけではありません。両サイドに振られた音もしっかりと広がりつつ、かつ塊として曲をとらえやすいので、一言で表現するならば“ノセてくれる”音像です。特にキックがタイトで心地良く、ジョギング時にマイ定番のBobby Tankのプレイリストで走ったときはあまりに気持ち良くて余計に2km走ってしまいました。

 

有線接続はハイレゾ対応でよりクリアな音像
再生の遅延を全く感じないBluetooth接続

 次にModel 3Wのポテンシャルをフルに感じるため、現場での使用を想定して有線でつないで試してみました。有線時のみハイレゾ対応ということで、24ビット/48kHzの同期用トラックをサンプルにさまざまなタイプの曲を試聴してみます。

 

 ハイレゾということもあり無線接続より一層クリアになり、高域の空気感と低域のブーミーさが足された印象です。しかし、前述した聴き疲れせず曲をとらえやすいキャラクターはそのまま。むしろそこにほんの少しのリッチさが加わり、一層ノセてくれる音像になった気がします。定位はさらに広がりますがセンターの存在感は薄れることなく、同期トラックのキックも非常にタイト。リズムの縦ノリやグルーブを感じやすく、自分が演奏する楽器のモニターとのなじみもとても良いです。

 

 さらに同期トラックとクリックを併走させて聴いてみます。僕はクリックのパンを左に100%振って同期と一緒に聴くのですが、センターの存在感がクリックとのすみ分けをちょうど良くレイアウトしてくれます。なおかつタイトに響くリズム・トラックも手助けし、ドラムをたたいていてもピアノを弾いていても一緒にセッションしているかのように感じられます。

 

 いろいろと試しているうちに、有線接続しているコンピューターからBluetoothレシーバーにつなぎ替えてみると即座に無線リンクすることを発見。トラック再生時に強引に有線/無線と交互につなぎ替えながら聴き比べてみたところ、驚いたのはBluetooth接続時の再生の遅延が全く気付かないレベルだったことです。現状ではBluetoothで同期をするライブ現場はまだ多くはないかもしれませんが、もしも無線接続でModel 3Wを使用したライブに臨むことになったとき、自分だけ演奏がモタってしまうとしたら、それはあなたのせいです。

 

 そんなノセてくれるインイア・モニターに出会えてうれしい限りですが、ただ一点のみ惜しいポイントを挙げるとするならば、Bluetoothレシーバー背面の衣類に引っ掛けるための留め具がクリップ状ではなく、あらかじめ幅を固定されたフックであること。下駄の歯状の返しはあるものの、服の薄さや素材によっては固定されない不安定な引っ掛けにもなり得る構造です。今後のプロ・ユースを想定した場合、万が一のトラブルの際に思わず“まさか”と最初に手が伸びてしまうような気が否めません。今回の製品は第2世代とのことなので、今後のシリーズに期待したいと思います。

 

 Model 3Wは何よりもノセてくれるモニターで、ミュージシャンのために作られたというのも納得の製品です。インイア・モニタリングをメインとして現場に臨んでいるすべてのミュージシャンの皆様にお薦めしたいと思います。

 

尾嶋優(Jimanica)
【Profile】Jimanica名義のソロや、蓮沼執太フィル、やくしまるえつことd.v.dのメンバーとして活動。Jポップ・アーティストやTV/Web CMへの楽曲提供、リミックスなども数多く行う。

 

ADV. Model 3W

オープン・プライス

(市場予想価格:9,900円前後)

f:id:rittor_snrec:20210705175448j:plain


SPECIFICATIONS
●Model 3 インイア・モニター
▪ドライバー:8mm径ダイナミック・ドライバー ▪インピーダンス:16Ω±15% ▪感度:100dB±3dB@1kHz ▪周波数特性:20Hz〜40kHz ▪重量:6g(ケーブル含まず)

●Accessport Air Bluetoothレシーバー
▪Bluetooth:バージョン5.0+aptX/aptX low-latency/AAC ▪連続駆動時間:最大9時間 ▪通信可能範囲:約10m ▪消費電流:最大14mA (通話)/18mA (メディアの再生) ▪充電電流:80mW ▪充電ポート:USB Type-C ▪充電時間:約2時間 ▪外形寸法:23mm(W)×55mm(H)×8mm(D) ▪重量:12g ▪付属品:有線接続用MMCXリモコン付きケーブル(1.2m、TRRSミニ)、無線接続用MMCXショート・ケーブル(38cm、ステレオ・ミニ)、シリコン・イア・チップ(3ペア)、フォーム・イア・チップ(3ペア)、USB充電用ケーブル、キャリー・ポーチ

製品情報

関連記事

www.snrec.jp