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「ADV. Model 3 BA2」製品レビュー:バランスド・アーマチュア型ドライバーを2基備えるインイア・モニター

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 作曲からミックスまでをイヤホンで完結させるクリエイターが増えてきている中、今回紹介するのはバランスド・アーマチュア(BA)型のドライバーを左右に2基ずつ搭載するイヤホン、ADV. Model 3 BA2。コンシューマー機では見過ごされがちな中域をエンハンスし、あらゆる楽器を鮮明に再現するとのこと。その実力を試していきます。

 

1.5mの着脱可能なMMCXケーブル
疲れを軽減するメモリー・ワイヤー・フック

  

 安心感のある太さを有する銀メッキ・ケーブルは長さ1.5mで、絡まりにくい素材感。ケーブルは着脱可能で、端子はMMCXが採用されています。イア・ピースはシリコンとフォームの2種類を用意し、それぞれ大きさ違いで3ペア分付属。カナル型に慣れていない方でも、フィットするイア・ピースを見付けられることでしょう。

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ケーブルは着脱可能。端子はMMCXを装備する

 長時間装着していると圧迫感に疲れてしまうことも多いイヤホン。Model 3 BA2は人間工学に基づいたデザインとメモリー・ワイヤー・フックによって、重さをほとんど感じさせません。実際に付けてみるとソフトな装着感で疲れにくく、動いても外れにくいです。

 

キックとベースのグルーブを作りやすい
透明感ある中高域と解像度の高い低域

 それではモニター・スピーカーGENELEC 6010Bとモニター・ヘッドホンSONY MDR-CD900STでミックスまで行った楽曲を、Model 3 BA2でモニターしてみます。ハウスっぽい重めな4つ打ちのキックと、明るくとがったシンセ・ベースを基調とした130BPMの楽曲で、上モノにコードとスティールパンが乗っています。まず感じたのがキックの迫力。ヘッドホンよりずっと芯がはっきりしていて、存在感があります。Model 3 BA2は透明感のある中高域と解像度の高い低域が特徴的で、キックとベースによるグルーブの微調整がスムーズに行えます。この作業中にベースの音色とフレーズの改善策を思い付いたことで、先ほどより断然ノリやすくなりました。スティールパンはヘッドホンの方が主役として聴きやすかったですが、Model 3 BA2はすべての音色に主張があります。分離感にも優れているので、トラックの役割をはっきりさせることがより重要になってくると感じました。

 

 このように、Model 3 BA2をスピーカーやヘッドホンと併用することで、イメージする音像にたどり着きやすくなると考えます。普段から複数の環境で楽曲を鳴らして、それぞれの聴こえ方を把握しておくとよいでしょう。そうすれば出先でModel 3 BA2のみを使って制作することがあっても、安心して音作りが行えます。

 

 どの楽器もしっかり聴こえるという特性はアレンジやミックスだけでなく、セッションやライブのモニターにも向いていると言えます。ボーカルを中心としたアンサンブルが不可欠であるロックやポップスにおいて、ボーカリストはもちろん、ドラマーやベーシストも安心してモニタリングできるポテンシャルを感じました。

 

 さて、普段聴いている曲でもチェックしてみました。ニューウェーブで一番ドキッとしたのは、ニュー・オーダーの「ブルー・マンデー」。臨場感あふれる16分音符のキックに脳の真ん中を連打されるようで、テンションが上がります。トム・トム・クラブの「アントニオにキッス!」では、パーカッションやコーラスのステレオ感がほかのイヤホンよりダイナミックに聴こえ、トレモロがかかったエレピやムーディなサックスの細かなニュアンスに酔いしれました。

 

 “音数の少ないシンプルなロックも良いかも”と、いろいろ聴いてみました。その結果、ギター・ロックやハイトーンなボーカルの楽曲では、再生機のEQで中高域を抑え気味にして低域をぐっと上げると、より腰にくるサウンドを楽しめることが判明。他方ワイド・レンジでかつ常にコードが鳴っているようなポール・マッカートニー『エジプト・ステーション』などでは、高域を上げると最大限に中高域の楽器を味わえました。ブライトな歌の渋さも全開になります。

 

 女性の歌モノはどうかというと、吉田美奈子『FLAPPER』では全パートの鮮やかさに圧倒されると同時に、精緻なアレンジが一斉に迫ってきます。個人的には距離を置いた音場でゆったり味わう方が好みだと感じました。マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスらのジャズ、マノウォーやメタリカなどのヘビー・メタルといったジャンルでは、楽器のニュアンスがダイレクトに伝わってくるのが楽しいですね。EQはいじらず、Model 3 BA2が持つ素のサウンドに浸れます。

 

 イヤホンは、実際にしばらく使用してみないと良しあしが分からないものです。最終的には自分の作りたい音楽を作るのに向いているのか、そして好みの音質であるか……といった要素を数モデルを試して判断すべきだと思っています。そういった意味で、Model 3 BA2は一度試してみる価値のあるイヤホンだと思いました。

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付属のキャリング・ケースにはフォーム・イア・チップ×3ペア、シリコン・イア・チップ×3ペア、1/4インチ・アダプター、レザー・ケーブル・タイが収められている

 

問合せ:宮地商会 M.I.D.

製品ページ:https://www.miyaji.co.jp/MID/C-audio/item.php?item=Model%203%20BA2

 

ADV. Model 3 BA2

オープン・プライス

市場予想価格:21,600円前後

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▪ドライバー:BAドライバー×2▪インピーダンス:10Ω±15%▪感度:118dB±3dB@1kHz▪周波数特性:20Hz〜40kHz▪定格電流:2mW▪最大入力パワー:3mW▪ケーブル:1.5m▪プラグ:ステレオ・ミニ▪付属品:プレミアム・キャリング・ケース、フォーム・イア・チップ (3ペア)、シリコン・イア・チップ(3ペア)、MMCX Silver-Plated Copperケーブル(1.5m)、1/4インチ・アダプター(3.5mm)、レザー・ケーブル・タイ