松隈ケンタが使う Studio One 第2回

スクリーンショット 2015-10-19 18.05.34

第2回
Studio Oneを
ライブの同期用ソフトとして使う

こんにちは、SCRAMBLES松隈ケンタです! 僕のチームが運営するスクランブル・スタジオではStudio One(以降S1)を導入しているのですが、S1使いのクリエイターさんがちらほら利用してくれ始めていて、ユーザーの広がりを感じます! 同じ武器を持った仲間が増えているようで、かなりゴキゲンな気分になります。さて連載第2回となる今月は、ライブでの活用例をご紹介しようと思いま

できるだけシンプルにまとめて
コンピューターの負荷を減らす

近年、ライブ・ハウスの現場でも同期をさせるバンドが多くなっていますが、なかなかこれ!といった定番の方法がなく、さまざまな方法を試行錯誤しているバンドが多いのが現状のようです。SCRAMBLESでも、プロデュースするロック・バンドやアイドルの現場でマニピュレーターをやる機会が多くなってきています。

バンドにプロのマニピュレーターが付いていたり、ワンマン・ライブで、準備やリハ時間が十分取れるグループであればどれだけでも回線を組むことができますが、インディーズやアマチュア・バンドだと対バン形式のイベントも多く、セッティング時間も制限もあるので、システムをどれだけコンパクトに、シンプルにまとめることができるかがカギとなります。音のミックスを考えると、本当はできる限り細かくパラ出ししたいものですが、トラブルやセッティング時間などを考えると、コンパクトなシステムでいきたいところ。S1はそんなバンドの皆さんにオススメです。僕なりのセッテイングを紹介していきましょう。

まずはデータの準備から。コンピューターの負荷を減らすため、あまりプラグインを挟みたくないので、MIDI関連はオーディオに書き出し、たまにしか出てこないフレーズは一つのトラックにまとめるなどしておきます。僕の場合は7〜8トラック、多くても10トラック前後までまとめておきます。

◀ライブの同期用データを作る際、コンピューターの負荷減らすためにMIDIデータはあらかじめオーディオに書き出し、ステム・データのトラック数もできるだけまとめるようにしておく ◀ライブの同期用データを作る際、コンピューターの負荷減らすためにMIDIデータはあらかじめオーディオに書き出し、ステム・データのトラック数もできるだけまとめるようにしておく

ちなみに僕が普段ライブで使っているコンピューターはAPPLE MacBook Air 11インチ。オーディオ・インターフェースは僕がDTM初心者のころ使っていたM-AUDIO Fast Track Ultraです。全部でアナログ・アウトが6chのものですね。Fast Track UltraからはPAにステレオ×2の4回線、ドラマーには、クリックとシーケンスのミックス音をモノ2回線で送っています。ドラマーにはあらかじめ自分のモニター用にサブミキサーを用意してもらい、その2回線を接続、プレイしやすいよう自分でミックスしてもらっています。

ステレオの4回線は、あらかじめS1内でセンドに送り、バスでステレオにまとめておいた、シンセ&FX/サイド・ギターとコーラス×2です。もちろんモノラル4chにバラしてもOKですが、個人的にシンセとコーラスはステレオ感までこだわりたいのです。ギターなどモノラル楽器も、実際のプレイヤーの立ち位置なども踏まえ左右のバランスを考えて配置しておきます。バスに送る際、曲やパートによって音量差をなくしたいので、バス・チャンネルにコンプやリミッター、EQなどをかけて調整しておきます。

▲Studio Oneのバス・トラックと、インサートに使ったプラグインPro EQ。各楽器、コーラスなどをセンドでバス・トラックに送り、それぞれをステレオにまとめてPAに送っている。その際、音量差が出ないように、EQやコンプをインサートして調整する ▲Studio Oneのバス・トラックと、インサートに使ったプラグインPro EQ。各楽器、コーラスなどをセンドでバス・トラックに送り、それぞれをステレオにまとめてPAに送っている。その際、音量差が出ないように、EQやコンプをインサートして調整する

準備ができたらリハスタなどで、生音とのなじむサウンド探りつつ、ある程度詰めておくのが大事ですね!

アレンジ・トラック機能を
曲単位で設定する

次に、各曲を1つのソング・ファイル上に並べた際、データ頭にマーカーを付け、アレンジ・トラックを範囲指定しておきます。こうすると、曲順を変更したいときに全トラック一発で動かすことができる(マーカーまでも一緒に動いてくれる!)ので、データがずれることもなく安心。

▲バージョン3から新たに搭載されたアレンジ・トラック機能。ここでは、ライブの同期用ということで、曲単位の頭にマーカーを付けている。曲順が変わっても一発で変更することができる便利な機能だ ▲バージョン3から新たに搭載されたアレンジ・トラック機能。ここでは、ライブの同期用ということで、曲単位の頭にマーカーを付けている。曲順が変わっても一発で変更することができる便利な機能だ

アレンジ・トラックはS1のバージョン3から新機能なのですが、想像以上に便利になりました。さらに、前回の記事で紹介した“キー・コマンド”機能で、キーボードの左右の矢印に、“次のマーカーへ移動”“前のマーカーに移動”と設定しているので、曲の頭出しが素早く確実にできます。ボーカルの“一言きっかけ”で次の曲に行きたい場合は、右矢印を押すだけで次の曲がスタート。ライブは“間”が非常に大事ですので、こだわって設定しています。

会場では、iPadでS1を遠隔操作できるアプリ、“Studio One Remote”を使って細かいバランスを取っていきましょう。ライブでは中音と外音が全く違うので、リハーサル時に外で確認しながら調整ができるこのアプリは、まさに待ち望んでいた最強のシステムです。接続はいたって簡単。iPadがコンピューターと同じネットワークに接続していれば連動はOKです。S1のミキサー画面がそのままiPadに表示されますので、タッチ・パネルでフェーダーを指で上げ下げするだけ、もちろんパンやエフェクトも操作できます。

▲無償でダウンロード可能なiPad用アプリ、Studio One Remote。Professional版のみ使用できるリモート・アプリで、さまざまなコントロールをiPad上で実現する。コンピューターと同じネットワーク上にいるだけで、接続もスムーズに行われる ▲無償でダウンロード可能なiPad用アプリ、Studio One Remote。Professional版のみ使用できるリモート・アプリで、さまざまなコントロールをiPad上で実現する。コンピューターと同じネットワーク上にいるだけで、接続もスムーズに行われる
▲Studio One Remoteの画面。一般的なトランスポートやミキサー・コントロールだけでなく、編集/エフェクト/オートメーション/イベント/インストゥルメント、そしてマクロ機能などの各コマンドに加え、XYベクター・パッドでエフェクト・チェーンの制御も可能 ▲Studio One Remoteの画面。一般的なトランスポートやミキサー・コントロールだけでなく、編集/エフェクト/オートメーション/イベント/インストゥルメント、そしてマクロ機能などの各コマンドに加え、XYベクター・パッドでエフェクト・チェーンの制御も可能

ステージを降りて、客席側から外音をチェックしながら細かい調整ができます。会場の真ん中から端の方まで、さまざまな場所で音を確認しながら生音と同期のバランスを見つつ、調整していきましょう! このStudio One Remoteを使えば少ない回線数でも、こだわったサウンド・メイキングが可能となります。

ライブではさまざまなトラブルの可能性があります。特にパソコン周りは、たとえどれだけスペックの高いものを準備しても安心はできませんよね。とはいえ、トラブルもライブの醍醐味の一つですし、そんなときこそミュージシャンの力量の見せどころでもあります。万が一トラブルで同期が止まってしまった場合には、パフォーマンスと勢いでなんとか乗り切りましょう! かつてのロック・ギタリストよろしく、機材を投げたり燃やしたりすれば、前代未聞の一発逆転伝説のステージになるかもしれませんね!(ただし確実にあとで泣くことになりますので、冷静に判断してください)。そんなわけで次回は僕のドラム・レコーディング現場を例にしながら、オススメ機能を紹介していこうと思います。また来月お会いしましょう、ROCK!!

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/