
楽曲制作の取っ掛かりに役立つ
標準搭載のオーディオ・エディター
初めまして、Noahです。アンビエントやダウンビートなど幅広く制作しています。また、ボーカル・ワークをメインにさまざまなアーティストとの共作もしています。普段の曲作りでは、シンセサイザーで作った音、生のギターやピアノの音、自分の声やフィールド・レコーディングで得た雑音など、身の回りにあるものを気軽にサンプリングしたり組み合わせたりしながら、その場で思いついたことを自由に取り入れて楽曲制作を楽しんでいます。これから4回、愛用のDAWソフトIMAGE-LINE FL Studioについて連載するので、どうぞよろしくお願いいたします。
Edisonのループ再生機能を活用し
曲のモチーフを作り出す
FL Studioには“生涯無償アップデート”というプランがあって、一度購入すると半永久的に無償でバージョン・アップできます。作曲を始めた当時はまだ学生で、金銭的に余裕が無かったため生涯無償アップデートはとてもありがたかったです。
DAWソフトとしても、FL Studioならではの魅力的な機能がたくさんあります。例えば、ステップ・シーケンサーに打ち込んだデータをボタン一つでピアノロールへ展開できたり、ビートのグルーブ感をワンランク上げてくれるSwing機能がスライダーで細かく調整できるため、簡単かつスピーディにいろんなことが試せます。こうした操作性がとても気に入りました。また、ステップ・シーケンサーに打ち込んだパターンを複製すれば、リズム・パターンのバリエーションを作るときにも便利です。リズムの打ち込みに苦手意識を持っていた私ですが、ハードルの低さと親しみやすさを感じることができ、それまで使っていたソフトから徐々にFL Studioへシフトしていきました。

続いては、具体的な使い方について書いてみたいと思います。私は普段、ループから曲を作り始めることが多く、そのループの素材を作るためにFL Studioに付属しているオーディオ・レコーダー/エディターのEdisonを愛用しています。Edisonに放り込む音は、サンプル・ライブラリーに入れてあるものでも良いですし、シンセをキーボードで弾いて直接Edisonに録音しても構いません。私は何か音を鳴らしてみて、使いたい音、または好きな音があればとりあえずインポートしています。

Edisonに何かしらのサンプルを入れたら、波形の一部分を適当に選択。次にEdison内の左上のループ・ボタン(“∞”のような形)を押すと、選択した部分が自動でループ再生されます。選んだ部分は赤くなるので、音を繰り返し聴きつつマウスで広げたり狭めたりしながら、自分の好きなループ・ポイントを探ります。ピンと来る個所が見つかったらEdison内の右上にあるコピー・ボタンを押し、押したままステップ・シーケンサーにドラッグ&ドロップすると、ループ素材としてインポートされます。その手順で好きなだけ素材を作っては、ひたすらステップ・シーケンサーにインポートしていきます。
ループ素材を作る段階では、あらかじめリバーブなどのエフェクトがかかった音を切り取ったり、アタック音をカットした余韻部分だけを使ったりするのが好きです。こうしたサンプリングによって、楽器を鳴らしたときのそのまま音とは違った響きを得ています。また生楽器をサンプリングする場合は、一見変化の無いように思える持続音であっても、逆再生してみると感じが変わって聴こえることがあります。単純な方法ですが、生音には音の“揺らぎ”というか、演奏者の息の増減による自然な変化がわずかに含まれているので個性的な音に変わることが多々あります。そんなふうにサンプリングで遊びながら、ユニークで面白い曲のモチーフにたどり着くことが多いです。
意外性のあるループを作り出せる
Fruity Slicerのスライス機能
ループを作る際には、EdisonのほかにFruity Slicerを使うこともあります。Fruity Slicerは、入力したオーディオ・ファイルのアタックを検知し、その部分で分割(=スライス)できるツールです。Edisonよりも、さらに手軽にサンプルを作ることができます。

スライス機能はたくさんのメニューから選択でき、好みの細かさを選ぶと自動的にオーディオをスライスしてくれます。単純にアタック部分に合わせたスライスからランダム・スライス、“4分音符ごと”といった音符のタイミングでのスライスまで、自動でも十分にたくさんのループ・ポイントのバリエーションを得られます。
Edisonの場合は、自分で好きなループ・ポイントを一から探す手順ですが、Fruity Slicerの場合はソフト側が自動でやってくれるので、自分一人では思い付かなかったループ・ポイントやアイディアに偶然に出会うことがあります。FL Studioで作曲をしていて面白いなと思う瞬間の一つです。
さらに、Fruity Slicerはピアノロールとも連動しています。スライスによって生まれたサンプルを自動でMIDIキーボードの鍵盤に割り振ってくれるので、フィジカルに演奏することができるのです。サンプルをピアノロールで鳴らしたい場合は、“Dump beat to piano roll”機能のプリセットから好みの打ち込み方法を選べば、ボタン一つで瞬時にノートが入力されます(なんとお手軽な……!)。もちろんそのMIDI情報は編集可能なので、好きな部分だけ残して使っています。


ここまで済んだら、後はステップ・シーケンサーをループ再生しながら、作った素材を鳴らすタイミングを決めていきます。鳴らすタイミングによって曲のグルーブ感が大きく左右されるので、チャンネルのクローンを作って何通りか聴き比べてみると良いと思います。それではまた次回もお楽しみに!
FL Studio シリーズ・ラインナップ
FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)
<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>