Avec Avecが使う「FL Studio」第2回

Avec Avecの未発表楽曲における
FL Studioの活用法

皆様こんにちは。Sugar's CampaignのAvec Avec(写真左)です。前回に引き続き僕のメインDAWソフト、IMAGE-LINE FL Studioについてお話ししたいと思います。今回で僕の連載は終了となりますので、一つの楽曲に焦点を当てその中の特徴的な部分を掘り下げる形で紹介します。楽曲はせっかくなので、過去の未発表デモ曲を取り上げてみます。期間限定でダウンロードできるので、ぜひ聴きながら読んでもらえたらと思います。

複数のキックを使うために
ステップ・シーケンサーでクローン生成

僕が曲作りをする際、最初におおまかなイメージや質感などを思い浮かべるのですが、今回はBPMをトゥワークなどでよく聴かれる107に設定し、かつポップなトラックを前提にしてみました。まずはメインに使えそうなコード進行を考え、軽いピアノのソフト音源などを立ち上げて一度ざっとコードを打ち込んでみます。そしてピアノの音を好きなシンセに置き換えるのですが、Pattern画面の中のステップ・シーケンサーのチャンネル部分にある楽器名を右クリックして、Replaceを選べば、好きなシンセに入れ替えることができます。この曲では、FL Studio 11 Signature Bundleにデモ版として付属するSawerを使用しています。先月も紹介したソフト・シンセですね。今回は分厚いステレオ感を出すために、もう一つSawerを起動。ピアノロールのMIDIデータをコピーして、それぞれを左右にパンしました。このSawerは、単に左右へ振るだけでステレオの広がりが増すように感じるんですよね。

▲Patternの画面には、16分音符を1つのステップとし、そのON/OFFでリズムを作り出すステップ・シーケンサーのほか、ピアノロールを簡略化したトラックなども表示可能(赤枠)。ここでは、ピアノ音源を使ってザッとMIDI録音したトラックを元に、シンセに音色を変更し、それをコピーして左右にパンしている。楽器名の左にあるツマミがパンとボリュームのツマミとなっている ▲Patternの画面には、16分音符を1つのステップとし、そのON/OFFでリズムを作り出すステップ・シーケンサーのほか、ピアノロールを簡略化したトラックなども表示可能(赤枠)。ここでは、ピアノ音源を使ってザッとMIDI録音したトラックを元に、シンセに音色を変更し、それをコピーして左右にパンしている。楽器名の左にあるツマミがパンとボリュームのツマミとなっている

次にリズム・パートです。この曲はトゥワーク的なトラックということでROLAND TR-808のサンプル音を基本に作りました。ここではキックに着目して解説していきます。僕がキックを作る場合、通常3〜4音ほど重ねるのですが、今回はシンプルに2つの音を重ねました。TR-808系の音に関しては、普段はROLAND TR-8を使うことが多いものの、せっかくFL Studioの連載なので、サンプリング音源を使っての僕なりのFL Studioでの打ち込み方法を紹介します。

トゥワークやトラップのようなベース・ミュージックのトラックでは、TR-808のキックのディケイの長さが重要なので、ディケイの長さが違うキック・サンプルを複数使います。今回使った2つの音は、一つはEQでローカットしたアタック中心のもので、もう一つが低音を効かせたディケイ長めのものです。そしてディケイ長めのサンプルをステップ・シーケンサーのチャンネルに置き、右クリック>Cloneでそのチャンネルと同じクローンを作ります。そして、そのクローンのキックのChannel settings画面内、Precomputed effectsのOUTつまみをいじり、フェード・アウト具合を調整。それを繰り返して音の長さの異なるキックを複数作り、パターンや展開によって使い分けます。ちなみにこの曲のキックにはWAVES Renaissance BassやSONNOXのOxford TransModなどを使用しました。

▲各チャンネルの詳細なセッティングを行うことができるChannel settings画面。ここでは、キックのサンプルのフェード・アウトのエディットをしたかったため、Precomputed effectsのOUTパラメーターのツマミ(赤枠)を右に回し、調整した ▲各チャンネルの詳細なセッティングを行うことができるChannel settin画面。ここでは、キックのサンプルのフェード・アウトのエディットをしたかったため、Precomputed effectsのOUTパラメーターのツマミ(赤枠)を右に回し、調整した

次にメロディですが、この曲ではボーカル・サンプルの一語一語を切ったものをステップ・シーケンサーに読み込み、ピアノロールで音階をつけています。この方法は、声のチョップ以外にも、音程が分かりやすい打楽器などでやっても面白い効果が得られます。

Fruity Peak Controllerを使い
FX音をダッキング

ここまでできれば、あとはこれらを組み合わせたり音色を変えたりして展開を作っていきます。この曲の冒頭では、コードはエレピ(UVI Tines Anthology)、メロディはグロッケン(GARRITAN Personal Orchestra)で鳴らしました。そこからパーカッションやFX系の音を加え、2拍のブレイクを挟んで次の展開へいきます。ちなみにここのFX系の音ですが、FL Studio付属のエフェクトFruity Peak Controllerを使いサイド・チェイン・コンプのような効果を付けました。これは、入力された音の大きさに従って、ほかの音をコントロールするエフェクトです。

音作りの方法を解説します。まず、リズム・パートとは別に4つ打ちのキックを打ち込み、それをミキサー・チャンネルに入れます。そのチャンネルにFruity Peak Controllerを立ち上げMUTEをON。次に先ほどのFX系の音をミキサーの別のチャンネルに入れ、そのフェーダーを右クリック>Link to controllerを選択すると、Remote control settingの画面が出てくるので、そのInternal controllerで“Peakctrl(sidechain)-Peak+LFO”を選びAcceptを押します。あとはFruity Peak Controllerで調整すればサイド・チェイン・コンプのような効果が作れます。

▲本デモ曲でのサイド・チェインのルーティング方法。リズム・パートとは別に4つ打ちのキックを打ち込み(①のch18)、そのトラックにFruity Peak Controllerを立ち上げる(②)。その際Fruity Peak ControllerのMUTEはオンに。次にFX系の音をミキサー・チャンネルに立ち上げ(①の17ch)、そのチャンネルのフェーダーを右クリック>Link to controllerを選択すると、Remote control setting(③)の画面が立ち上がる。Remote control settingのInternal controllerで“Peak ctrl(sidechain)-Peak+LFO”を選びAcceptを押すとルーティングが完成。あとはFruity Peak Controllerで調整してサイド・チェインのかかり具合を決める ▲本デモ曲でのサイド・チェインのルーティング方法。リズム・パートとは別に4つ打ちのキックを打ち込み(①のch18)、そのトラックにFruity Peak Controllerを立ち上げる(②)。その際Fruity Peak ControllerのMUTEはオンに。次にFX系の音をミキサー・チャンネルに立ち上げ(①の17ch)、そのチャンネルのフェーダーを右クリック>Link to controllerを選択すると、Remote control setting(③)の画面が立ち上がる。Remote control settingのInternal controllerで“Peak ctrl(sidechain)-Peak+LFO”を選びAcceptを押すとルーティングが完成。あとはFruity Peak Controllerで調整してサイド・チェインのかかり具合を決める

ブレイクではFX系の音やパッドの音に、グリッチ・サウンドを生成できるフリーのVSTプラグインILLFORMED Dblue Glitchを使用しています。Dblue GlitchでTapeStopのパラメーターだけを拍の位置に合わせ、ちょうど良い場所にかかるように調整し、ミキサーのエフェクトのON/OFFをFL Studioのオートメーションで部分的に切り替えます。ここではブレイクだけにDblue GlitchがONになるよう調整しました。

▲グリッチ・サウンドを生成できるフリーのVSTプラグインILLFORMED Dblue Glitch。ここではTapeStopのパラメーター(赤枠)だけの拍を位置を合わせ調整している ▲グリッチ・サウンドを生成できるフリーのVSTプラグインILLFORMED Dblue Glitch。ここではTapeStopのパラメーター(赤枠)だけの拍を位置を合わせ調整している

ブレイク明けでは最初に紹介したシンセSawerが登場します。エレピとパッドの白玉っぽい流れからこのシンセを使い、今度はタイトにリズムを刻むことによってメリハリを付けています。そこからグロッケンと入れ替わるようにボーカル・サンプルを切った声のメロディがリフのように入り、クラップなどと合わせて盛り上がりを演出。ここのボーカル・サンプルにはFruity Filterというオーソドックスなフィルターをオートメーションでかけました。ちなみにここで入っているピッチの高いラップは、オーディオ・ブロックで手動で切り張りしたもの。このラップにもFruity Filterがオートメーションでかかっています。

その後いったん曲の雰囲気を地味にし、今度はSawer内のフィルターのCUTOFFをオートメーションで上げていき、それと同時にリバーブをかけていきます。その後さらにブレイクが来て盛り上がり部分という感じです。

FL Studioはパターンのループを得意としています。そのため最初にメインとなりそうな部分を作り、その展開や音色、音数を変えたバリエーションを組み合わせることで楽曲を構成しやすいのです。とても直感的で分かりやすいですね。

今回はFL Studioの使い方を紹介するのに分かりやすい短いデモ曲を使おうと思い、過去の未発表曲を引っ張り出してきたのですが、Sugar's Campaignでの作曲では、歌モノということもあってまた少し違った作り方です。FL Studioはそういったときもジャンル問わず、幅広く制作に使えると思います。

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(92,583円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(22,222円)
FL Studio 12 Fruity Edition(11,852円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>