

私にとっては1990年代当時のマッシヴ・アタックやケミカル・ブラザーズが使っていると聞いただけで、あこがれの機材の一つであったMUTRONICS Mutatorは、スタジオで実機を何度か使用した経験があり、今こうしてパソコン上で手軽に利用できる数ある同類同種のプラグインの中でもその存在価値は変わっていない。
本プラグインでできることは決して多くない。実機にはないシンクやミックス・バランス調節を足してあるがそれさえも最低限に留め、Filterは4ポール固定でローパスのみのVCF、入力信号に対してENVかGATEを選べるVCA、4つの波形を選べるLFOという3部構成。多機能で豊富なプリセットをお望みなら他社のモデリング・プラグインに軍配が上がる。ではコイツの価値は一体何であろう? 私はリズム・トラックのサブミックスにインサートすることが多いのだが、コンプではできないエンベロープ・フィルターによるパンチ感の演出や、LFOでコントロールするフィルター開閉はとても有機的だし、ディレイなど残響の処理を施した後のインサートではGATEが効果的に動作する。何よりもその出音の柔らかさやまとまりの良さが本プラグインでも健在なのが使う理由なのだ。
製品ページ→https://www.mi7.co.jp/products/softube/mutator/

本機はSOFTUBEのモデリングの歴史の蓄積から得られた独自のシンセシスが搭載されており、私にとって過去の名機のエミュレーションではないことはとても重要なこと。そしてSOFTUBE Modularとの関連性も大きく、実際Modularの中にもリズム担当モジュールの1つとしてHeartbeatモジュールが利用可能である。
私が使う大きな理由の1つはエフェクトを含め自由度の高い音作りができるマスター・セクションの充実。ここには、必要不可欠なコンプやEQが高品質かつ簡潔にまとめられており、2つの空間系エフェクトも味わい深い。
もう1つはAuto Layer Machineというトリガーを駆使しした音作り/編集で、例えばダブル・アタックやフラムの音や、グリッチ的な短時間で複数のパルスによる発音が簡単に作れるので、リズム・マシンのパターン組み思考から逸脱したフレーズが組める。このことは一度使って自分のものにすると非常に特徴的なサウンドとなり、ほかのリズム・マシンにも欲しくなる機能である。
ほかにもVelocityでのコントロール設定と、その気の利いた配分が使っていてとても癖になる部分で、音色変化に富んだ有機的なパターンを組みやすいのだ。
製品ページ→https://www.mi7.co.jp/products/softube/heartbeat/
Profile
深澤秀行
Profile:1991年からシンセサイザー・プログラマーとしてキャリアをスタートし、その経験を生かし作編曲家として『ストリートファイターIV』『魔法使いの夜』『Fate/stay inght UWB』など、CMやゲーム、アニメなど多岐にわたり担当。モジュラーシンセ・グループ電子海面の一員
Console 1がリーズナブルなプライスになって新発売
新たにLEDリングを搭載することで優れたビジュアル・フィードバックを実現。SOFTUBEプラグイン約30種類とUNIVERSAL AUDIOのUADプラグイン約40種類のコントロールも可能な上、さらにプライスダウンのニュー・プライスで販売する。また、付属のSSL SL4000 Eに加え、“British Class A”と“SSL XL9000K”をバンドルした日本限定バンドル“Console 1コンプリート・パッケージ”も同時リリース。詳細はmi7.co.jp/softube
