第6回 上野楽器 サウンドショップ ジェルム
本体のタッチ・パネル/専用APPLE iPadアプリによる直感的な操作性やコンパクト・ボディが特徴のPA用デジタル・ミキサー、YAMAHA TFシリーズ。今回は3Uラック型のモデル=TF-Rackを所有する上野楽器のサウンドショップ ジェルムを訪れた。導入の動機や使用方法について、早速レポートしていこう。
中小規模ライブのメイン・ミキサーとして使用
宇都宮市を拠点として、栃木県内に店舗と音楽教室を展開する上野楽器。1956年に創業の老舗で、楽器の販売から修理、リハーサル・スタジオや音楽教室の運営、音響機器のレンタルまで幅広い業務を行っている。サウンドショップ ジェルムはJR宇都宮駅から徒歩約10分の店舗。店内にはギターやベース、ドラムなどが陳列されているが、TF-Rackの用途やいかに? 「まずは自社の音楽教室やその発表会でPAする際に、メイン・ミキサーとして使っています。また地元のイベントで音響を担当することがあり、そういったときにもメイン・ミキサーになっていますね」と語るのは、同店のスタッフ西東(さいとう)成次郎氏。昨年まではアナログ・ミキサーを使っていたと言うが、あるイベントがきっかけでTF-Rackを導入した。
「去年の暮れに某自動車メーカーがショールームで販売展示会を行ったのですが、コンテンツの一つにジャズ・バンドのライブがあるということでPAを頼まれたんです。ただ、機材の仕込みからオペレートまで自分1人でこなさねばならず、進行のスケジュールもざっくりとしか出ていなかったため、システムはなるべくシンプルにしたいなと……。大掛かりになると運ぶのが大変ですし、セットアップにかけられる時間も分からなければ、ミュージシャンのサポートをしながらのオペレートになるだろうとも予測したので、自分が柔軟に動き回れるようなシステムが必要だったんです。それで“どうしよう?”と思っていた矢先、知り合いが“今TF-Rackというミキサーが気になっている”と話しているのを聞き、カタログをチェックしてみたところピンと来たわけですね」
西東氏が最も引かれたのは、TFシリーズ専用のiPadアプリ=TF StageMixによるワイアレスでのコントロールだ。「これがあればミキサーに張り付く必要も無く、どこでもオペレートできますよね。それこそミュージシャンの手助けをしながら音作りすることも可能です」と話す。
「TF StageMixは、デジタル卓ビギナーの僕にも本当に使いやすい。例えばあるチャンネルにリバーブをかけたいときなども、画面右のカラムから“FX1”もしくは“FX2”を選んでフェーダーをセンド・モードにし、目的のチャンネルを上げるだけです。チャンネルと内蔵リバーブをパッチするようなプロセスが無く、とても分かりやすいと思います。タッチ・パネルならではの操作としては、パラメトリックEQのQ幅を指先で広げたり狭めたりできるのが直感的。昨今は携帯電話にしてもタッチ・パネルの時代なので、その感覚の延長で触れるのが良いですね。TF-Rack本体にもタッチ・パネルや操作子がありますが、個人的にはTF StageMixだけでも十分。タッチへの反応も早く、今のところアプリ・オンリーで操作しています」
クローズアップ・ポイントその① iPadアプリでのコントロール
持ち運びや仕込みもやりやすい
TF StageMixはサーフェス型モデルと共通のアプリだが、TF-Rackならではのメリットについては「ずばり小型&軽量なボディだと思います」と言う。
「普段は、TF-Rackとパワー・アンプを結線した上でラックに入れて持ち運んでいます(メイン写真)。5〜6Uのラックで済みますし、あとはスピーカーをメイン/モニター合わせて4台ほど持っていけば、現状は十分に賄えています。ルーティングに関しても、アンプのメイン・アウトL/Rをメイン・スピーカーに、TF-Rackのライン・アウトL/Rをモニター・スピーカー用途のYAMAHA Stagepas 400Iに接続するだけなので、とにかくセットアップが楽。こうしたスピーディさもメリットだと思います」
取材は5月末に行ったが、その時点で既に6月のファームウェア・アップデートがアナウンスされていた。新ファームウェアのVer. 3.5に実装されるのはDAN DUGANのオートマティック・ミキサー。最大8chのマイク回線のゲイン・バランスをリアルタイムに自動最適化し、ナチュラルなミックスを実現するというものだ。
「オートマティック・ミキサーはすごく気になっています。コーラス隊やブラス隊がずらりと並ぶ現場もあるので、そういうときに使ってみたいですね。このコンパクトなボディにミキサー、エフェクト、オートマティック・ミキサーなどがオールインワンになっていて26万円ほどとは、コスト・パフォーマンスが非常に高いと思います」
さらなる進化を遂げるTF-Rack。中小規模の現場で、これまで以上の存在感を放つことになるだろう。