皆様、ごきげんよう。プロデューサー/アーティストのLil'Yukichiです。普段はWindowsのノート・パソコンにIMAGE-LINE FL Studio 20をインストールし、ヒップホップやトラップ・ミュージック、ローファイ・ビートなどを制作しています。今回は便利なオートメーションのお話です。
さまざまなカーブを作成できるControl pointの動作モード
まずはビギナーの方にも分かりやすいように、オートメーションの説明から。オートメーションとは、ソフト音源やプラグイン・エフェクト、DAW上のミキサーなどに搭載されたパラメーターの動きを設定し、再生時に自動で動かせる機能のことです。普段からDAWを使用している人は、オートメーションを使う方も多いでしょう。よくある使い方としては、音源のボリュームにオートメーションを用いて、フェード・インやフェード・アウトを設定することが挙げられます。
FL Studioでオートメーションを設定するには、任意のパラメーター上で右クリック(Macではcontrolキー+クリック)し、メニュー画面から“Create automation clip”を選択。
するとPlaylistにオートメーション・クリップが現れます。この手順で、FL Studioに付属する音源やエフェクトのパラメーターにオートメーションを設定することが可能です。
出現したオートメーション・クリップは、デフォルトではオートメーション・カーブが横一直線になっており、右クリック(Macではcontrolキー+クリック)することでカーブ・ポイントの作成が行え、これをマウスでドラッグすることで任意のカーブを作れます。なお、FL Studioではオートメーション・カーブを書く際に用いるポイントのことを“Control point”と呼びます。
ちなみにこのControl pointをAltキー+左クリック(Macではoptionキー+クリック)することで、クリップ上のグリッドに関係なく自由に配置できます。またCtrlキー+左クリック(Macではcommandキー+クリック)で上下グリッドに、Shiftキー+左クリック(Macも同じ)で左右グリッドに沿ってControl pointを動かすこともできるので、覚えておくと役に立つかもしれません。
さらにこのControl pointを右クリック(Macではcontrolキー+クリック)すると、新たなメニュー画面が出現します。ここでは作成したControl pointを削除できるほか、任意のControl pointにおける動作モードを設定することが可能です。例えば“Smooth”を選択すると、2つのControl point間のカーブが緩やかになりますし、“Hold”を選択すると、2つのControl point間のカーブが直角になります。
ほかにも、カーブが階段状になる“Stairs”や、サイン波状になる“Wave”などがあり、かなり細かいオートメーションが設定できます。自分の場合、シンセのカットオフ・フィルターに用いることが多いのですが、使い方次第ではユニークなサウンドを表現できるでしょう。付け加えると、FL Studioのオートメーションは設定が簡単なのもポイントです!
では、サード・パーティ製プラグインにも同じ手順でオートメーションの設定ができるのでしょうか? 答えは“ノー”です。しかし、ユーザーによってはサード・パーティ製プラグインを使って音楽制作する人もいることでしょう。そのため、ここからはサード・パーティ製プラグインにオートメーションを設定する方法を紹介します。例としてバーチャル・ラック・システム&マルチエフェクト・プラグインのIK MULTIMEDIA MixBoxで解説します。
例えば、一番右端のスロットに挿した“ConvoRoom”というリバーブのエフェクト・モジュールを見てください。ここではドライ/ウェットを調整する“Mix”にオートメーションを設定したいと思います。
まず、マウスでMixのパラメーターを適当な値に変更します。次に、画面左上にある“Menu panel”から“TOOLS→Last tweaked→Create automation clip”とクリック。するとPlaylist上にMixのオートメーション・クリップが出現します。
以上の手順を応用すれば、大体のサード・パーティ製プラグインのパラメーターに、オートメーションを設定することができるでしょう。中には仕様の都合上、オートメーションを設定できないものもありますので、その都度試してみる必要があります。
MIDIコントローラーの動作を自動検出し任意のパラメーターとひも付ける
次は手持ちのMIDIコントローラーのノブに、FL Studio付属音源やエフェクト、サード・パーティ製プラグインのパラメーターをアサインする方法についてお伝えしましょう。やり方は、先述した“サード・パーティ製プラグインにオートメーションを設定する方法”と似ています。
まずはMIDIコントローラーのノブにアサインさせたいパラメーターを、マウスで適当な値に変更します。次に、画面左上にある“Menu panel”から“TOOLS→Last tweaked→Link to controller...”とクリック。“Remote control settings”という画面が出現するので、ここでパラメーターをアサインしたいMIDIコントローラーのノブを動かします。
すると、そのノブをFL Studioが自動的に検出し、パラメーターのアサインが完了するのです。なお、録音中にこのノブを動かすと、Playlist上に自動でオートメーション・クリップが作成されるので非常に便利だと言えます。
補足として、オートメーション・カーブのコピー方法も紹介しましょう。これは、例えばプラグインAのパラメーターに設定したオートメーション・カーブを、プラグインBのパラメーターに設定したいときに有効な方法です。
まずはコピーするオートメーション・クリップの左上にある“Clip menu”ボタンをクリック。メニュー画面から“Articulator tools→Copy state”と選択します。あとは複製先となるオートメーション・クリップのClip menuボタンをクリックし、メニュー画面から“Articulator tools→Paste state”と選択すれば、そっくりそのままオートメーション・カーブをコピーすることができます。小さなことですが、これだけでも時短になると思うのでぜひ試してみてください。
これで自分の連載は終了です。皆さんにとって、何か得られるものがあったらうれしく思います。これまでに登場したFL Studioの機能やテクニックを使った楽曲は、各音楽ストリーミング・サービスでリリースしているので、ぜひ“Lil'Yukichi”で検索してみてください。ありがとうございました!
Lil'Yukichi
【Profile】横須賀米軍基地内で生まれたアーティスト/作詞作曲家/音楽プロデューサー/ラッパー/DJ。自分自身で歌うだけでなく、国内外からラッパーを迎え入れた楽曲を数多くリリース。トラップ・ミュージックやヒップホップを中心に、ローファイ・ビートやエレクトロニック・ミュージック、アンビエント・ミュージックといった幅広い音楽ジャンルの曲を制作している。これまでにKOHHやBAD HOP、CrazyBoy、SALU、あいみょんなどの楽曲を手掛ける。
【Recent work】
『AKIRA』
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▪Windows:Windows 8.1/10/11以降(64ビット)INTELもしくはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM