皆様、ごきげんよう。プロデューサー/アーティストのLil'Yukichiです。普段はWindowsのゲーミング用ノート・パソコンにIMAGE-LINE FL Studio 20をインストールし、トラップ・ミュージックやローファイ・ビート、ヒップホップなどを制作しています。今回は、前回紹介したFL Studio内蔵のソフト・サンプラーChannel Samplerの続編です。
パンニングやボリュームなど5つのパネルを備えたEnvelope / instrument settingsタブ
前回は、Channel Samplerの基本的な機能や自分なりの使い方をお伝えしましたが、これらはすべて“Sample settings”タブでのお話でした。今回はChannel Sampler画面左上にある“Envelope / instrument settings”タブと、さらに右隣にある“Miscellaneous functions”タブについて解説していきます。
まずはEnvelope / instrument settingsタブ。Channel Sampler画面左上にあるエンベロープのようなアイコンをクリックすると、画面がEnvelope / instrument settingsタブに切り替わります。このタブの最上段には、左から“Panning/Volume/Mod X/Mod Y/Pitch”という5つのボタンを装備。どれか1つをクリックすれば、それぞれのパネルが表示されます。デフォルトではVolumeパネルとなっています。
Volumeパネルの左側にはエンベロープを調整するための“Envelope”セクション、同右側には“Filter”セクション、同最下段には“Root note”セクションがあります。自分はシェイカーや金物楽器のアタックを弱めたいときに、Envelopeセクションをよく使っているのですが、このセクションにはアタックをつかさどるATTノブ、ディケイのDECノブ、そしてリリースのRELノブがあり、それぞれの下部にはTENSIONボタンが備わっています。TENSIONボタンを動かすと、アタック/ディケイ/リリースのカーブ・ラインをそれぞれ変更することが可能なので、細かい調整ができて便利です。
もしワンショットのサンプル素材を扱う場合は、HOLDノブ以外のパラメーター……すなわちDELAY/ATT/DEC/SUS/RELノブをすべて0%にし、HOLDノブのみ100%にするのがお勧め。理由は、サンプル素材の音を最後まで途切れることなく奇麗に鳴らせるからです。スネアやシンバルといったドラム・パーツはもちろん、シンセやピアノなどのワンショット・サンプル素材にも使えるでしょう。
Filterセクションには、フィルター・カットオフ用のMOD XとMOD Yという2つのノブを装備。同セクションの下段にあるプルダウン・メニューをクリックすれば、ローパス・フィルターやハイパス・フィルターなど、さまざまな設定を呼び出すことができます。
そしてFilterセクションの左隣には“LFO”セクションがあり、サイン波/三角波/矩形波を搭載。Volumeパネルを開いているときは音量に、Panningパネルではパンニングに、Pitchパネルではピッチに変化を与えることが可能です。例えばシンセのサンプル素材をロードし、LFOでピッチに揺らぎを加えれば、それだけで良い雰囲気のサウンドになることがあります。こうして作った音をトラップ・ビートの上モノとして使うこともできるので、LFOセクションは地味ですがとても有用な機能だと言えるでしょう。
Root noteセクションでサンプル素材のアサイン位置を瞬時に変更
次は、Envelope / instrument settingsタブの最下段にあるRoot noteセクション。キーボードをクリックすると音が鳴ります。青い部分はサンプル素材がアサインされている基準となる場所で、デフォルトではC5に設定されています。もしこの青い部分を変更したい場合は、任意の鍵盤を右クリック(Macではcontrolキー+クリック)するだけ。これがなぜ便利なのかというと、瞬時にオクターブの切り替えが行えるからです。
というのも、自分はROLAND TR-808系キック・ベースを打ち込むときに、このRoot noteセクションを大活用しています。なぜなら、青い部分をC3に設定することでキック・ベースのピッチが2オクターブ上がるため、打ち込んだフレーズが聴き取りやすくなるから。打ち込みが終わったら青い部分をC5に戻すことで、本来鳴らしたかったピッチでキック・ベースを鳴らせるということになります。
もちろん、打ち込んだMIDIノートをピアノロール上で全部選択して、オクターブを上げ下げすれば同じようなことが行えるのですが、Root noteセクションを使用した方がワンクリックで完了するので自分としてはこちらのやり方が気に入っています。
ポルタメント機能やアルペジエイターを搭載するMiscellaneous functionsタブ
Channel Sampler画面の左上にあるレンチ・アイコンをクリックすると、Miscellaneous functionsタブに切り替わります。このタブの左上にある“Levels adjustment”セクションでは、ご覧の通り、パンや音量を調整するためのノブや、任意のモジュレーションをアサインできる2基のモジュレーション・ノブを搭載しています。
このセクションの右隣にあるのは“Polyphony”セクション。“MAX”ではボイス数を1〜99まで設定可能です。“Porta”をクリックすると右側にある“SLIDE”ノブが有効となり、ポルタメント・タイムを0〜8.00秒の間で調整できます。なおSLIDEノブの下にある“Mono”をオンにすると、同時発音数が1つ、つまりモノフォニックにすることが可能です。
ここで自分がよく使うのは、“Time”セクションにある“SWING”ノブ。デフォルトでは100%になっています。自分はトラップだけでなくローファイ・ヒップホップも制作するため、Channel rackの画面右上にある“Global Swing”ノブでドラム・パターン全体にスウィングをかけることがあるのですが、時には“キックだけスウィングさせたくない”ということもあります。そんなとき、このキックのChannel Samplerを開いてSWINGノブの値を0%にします。すると、キックだけChannel rack側で設定したGlobal Swingの影響を受けなくなるのです。
このように個別に微調整したいときは、このSWINGノブを覚えておくとよいでしょう。ほかにもMiscellaneous functionsタブには、アルペジエイターやディレイも搭載しており、より細かな音作りが可能です。それではまた!
Lil'Yukichi
【Profile】横須賀米軍基地内で生まれたアーティスト/作詞作曲家/音楽プロデューサー/ラッパー/DJ。自分自身で歌うだけでなく、国内外からラッパーを迎え入れた楽曲を数多くリリース。トラップ・ミュージックやヒップホップを中心に、ローファイ・ビートやエレクトロニック・ミュージック、アンビエント・ミュージックといった幅広い音楽ジャンルの曲を制作している。これまでにKOHHやBAD HOP、CrazyBoy、SALU、あいみょんなどの楽曲を手掛ける。
【Recent work】
『AKIRA』
HAKU & Lil'Yukichi
IMAGE-LINE FL Studio
LINE UP
FL Studio 21 Fruity:12,420円|FL Studio 21 Producer:20,520円 |FL Studio 21 Signature:26,460円|FL Studio 21 All Plugins Edition:72,990円
※FL Studio 20をご購入の場合でも、FL Studio 21への無償アップデートが可能です
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13.6以降、INTELプロセッサーもしくはAPPLE Silicon M1をサポート
▪Windows:Windows 8.1/10/11以降(64ビット)INTELもしくはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM