ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「クロック・ケーブル」

“原音忠実”の理念のもと、ケーブルなどのオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今月クロス・レビューするのは、クロック・ケーブルのCOX-1.0TripleC-FM-BNC(ハイエンド版)/Clock-1.0BNC-TripleC-FM(コスト・パフォーマンス版)だ。

第24回「クロック・ケーブル」

ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説

クロック・ジェネレーターは、クロックの精度を高めてデジタル信号の揺らぎを軽減し、音質を向上させるものです。しかし発振器であるため猛烈なノイズが発生するので、それがクロック・ケーブルから各機材に流れ込み、音質を著しく下げてしまいます。“クロック・ジェネレーターを導入したがSN比が悪くなった”などと感じる人が多いのは、それが原因。ACOUSTIC REVIVEのクロック・ケーブルはノイズ除去素材“ファインメットビーズ”を備え、劇的なSN比向上効果を発揮。クロック・ジェネレーター本来の性能を引き出します。

また、クロック・ケーブル自体の伝送特性や素材の質は、音に大きな影響を与えます。ACOUSTIC REVIVEのクロック・ケーブルは、鍛造(たんぞう)製法により銅の結晶を電気が流れる横方向に連続させた世界初の音響専用導体“PC-TripleC”を採用。絶縁材は、一般的なPVCやPEに対して比誘電率が圧倒的に優れたテフロンを使いました。そのほか静電気発生を防ぐ天然シルク緩衝材、圧倒的なシールド特性を発揮するフレキシブル銅管シールドやカーボンCSFチューブなどを使い、ケーブルとしての性能も最高峰です。

<Price>
●COX-1.0TripleC-FM-BNC(写真):88,000円/1m
※長さの特注可能(50cmごとに+28,000円。1m以下は1mと同価格)
※片側RCA仕様も可能(特注代として+10,000円)
●Clock-1.0BNC-TripleC-FM:16,000円/1m
※長さの特注可能(1mごとに+7,000円)

Cross Review

Producer/Engineer
木村正和
KM<Profile>エンジニアとして、Kinki Kids、ゴスペラーズ、中川翔子、平原綾香など数多くのアーティストの作品に携わる。近年はドラマー川口千里のプロデュースなどにも尽力。

トラック数の多いセッションでも
飽和せずに奥行き感をキープ

近年、革新的なケーブルを積極的に市場へ投入し、レコーディング・スタジオやマスタリング・スタジオへの導入も増えているACOUSTIC REVIVE。今回は同社のクロック・ケーブルCOX-1.0TripleC-FM-BNCを、オーディオ・インターフェースAVID HD I/Oと外部のクロック・ジェネレーターANTELOPE AUDIO OCX HDの接続に試してみました。アナログのオーディオ・ケーブルやAC電源ケーブルなどは、素材や芯線の巻き方などで音質の変化や効果が比較的顕著に出ることで知られていますが、クロック・ケーブルをリプレースすることで、どれほどの効果が得られるのか個人的にとても興味がありました。

今まで使っていた、クロック・ジェネレーターの付属ケーブルから付け替えてみて最初に気付いたのは、明らかに音像がクリアになるということ。この状態で、32ビット/96kHzでレコーディングしたセッションを開きミックス作業をしてみると、各トラックの分離も良く、定位が近い楽器同士も濁らずに混ざってくれます。また、オーケストラやライブ・レコーディングのようなトラック数の多いセッションでも飽和してしまうことなく、奥行き感も損なわれません。何度か元のケーブルに戻して比較してみましたが、明らかにこのCOX-1.0TripleC-FM-BNCを使った方がミックスしやすいと感じられました

今回は試せませんでしたが、サラウンドのミックスでも良い効果が出そうです。これからは、ケーブル選びの選択肢にクロック・ケーブルを加えると、よりサウンドの幅が広がるのではないかと思います。

Sound Producer
鈴木Daichi秀行
SDH<Profile>サウンド・プロデューサーとして活動し、近年は自身でエンジニアリングを行うことも。絢香やmiwa、YUI、家入レオ、いきものがかり、SMAPなど多数手掛けてきた。

音の分離が良くなり濁りが消える
一聴して分かる大きな違い

ACOUSTIC REVIVEの製品はAVID Pro Tools用のDigiLinkケーブルを普段から使用しており、その品質の高さやサウンド・クオリティには驚かされます。今回は同社のクロック・ケーブルをチェック。TONEFLAKE TSR-900のルビジウム・クロックを入れたANTELOPE AUDIO Pure 2(AD/DAコンバーター)と、オーディオ・インターフェースPro Tools|MTRXの間に入れて試してみました。

まずはCOX-1.0TripleC-FM-BNCにつなぎ替えた瞬間、音の分離が良くなり濁りが消え、自然な広がりが感じられました。普段使っているクロック・ケーブルも悪くない製品だと思うのですが、一聴して分かる大きな違いに、とても驚きました。音の傾向は低価格版Clock-1.0BNC-TripleC-FMでも同様で、いつものケーブルと入れ替えるだけでオーディオ・インターフェースのポテンシャルを引き出してくれます。現在使っているインターフェースの音に不満がある人も、クロック・ケーブルを替えるだけで印象が変わると思うので、ぜひ試していただきたいと思います。

Engineer/Manipulator
沢田悠介
SWD<Profile>フリー・エンジニア/マニピュレーター。TM NETWORKやglobeのレコーディング、fhánaやCICADA、DE DE MOUSEなどはミックスも手掛ける。PAも行う。

奥行きの変化が捉えやすくなり
音像が大きく感じられる

筆者はMADI中心のシステムを使っており、クロックの重要性を痛感しています。今回、COX-1.0TripleC-FM-BNCをマスター・クロックからDDコンバーター、もしくはAD/DAコンバーターへのクロック供給の部分に使用してみました。まずDDコンバーターですが、COX〜に差し替えたところ奥行き感に変化が。奥行きが増すというよりは、それを構成するレイヤーが増えた印象です。ミックスに奥行きを付ける際、どのように変化しているかが非常に分かりやすくなりました。次にAD/DAコンバーター。中域の締まりが良くなりつつ音像が大きくなるイメージで、スネアや歌が前に出ます。高域の抜けや中低域の厚みが増し、さらには超低域のワイド感も見えやすくなりました

続いてClock-1.0BNC-TripleC-FM。変化はCOX〜と同じ方向性ですが、やや音像がスッキリした印象です。中低域の厚みが控えめになり、透明感が増したようにも思えます。筆者の環境ではDDコンバーターにClock〜、AD/DAコンバーターにCOX〜がベスト・マッチとなりました!

<製品概要>
クロック・ケーブル

(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2019年1月号からの転載となります)