ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「電源ケーブル/電源ボックス」

“原音忠実”の理念のもと、ケーブルなどのオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今回は、同社の電源ケーブル2モデルと電源ボックスRTP Absoluteシリーズのセットをクロス・レビューする。

第23回「電源ケーブル/電源ボックス」

ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説

電源ケーブルや電源ボックス(電源タップ)において重要なことは、いかに電力のロス無くピュアな電源を供給できるかどうかです。極端に音質が変わる電源ケーブルは、特定の帯域がひずみ成分やノイズ成分で持ち上がっており、本質的なクオリティ・アップにはならず、それらの成分が永遠に音に影響を与え続けてしまいます。また、ノイズ・フィルター搭載タップやレギュレーターではエネルギーのロスが避けられませんし、トランスは巻き精度が低いと出音の周波数レンジがナローになります。

ACOUSTIC REVIVEの電源ケーブル電源ボックスは、独自の素材と構造でフラットかつワイド・レンジなサウンドを実現。エネルギー・ロスの無い電源供給と副作用の無いノイズ除去が可能となる、唯一の電源ツールになります。

<Price>
●電源ケーブル
▪︎Power Reference TripleC:380,000円/2m
※延長は0.5mあたり+95,000円
Power Standard TripleC-FM/-FM-MG:38,000円/2m
※2m以下の長さの特注は上記と同価格
※延長は0.5mあたり5,000円
AC-2.0 TripleC(写真左)/-MG:18,000円/2m
※2m以下の長さの特注は上記と同価格
※延長は0.5mあたり5,000円●電源ボックス
▪︎RTP-6 Absolute(写真右):280,000円
▪︎RTP-4 Absolute:240,000円
▪︎RTP-2 Absolute:200,000円
▪︎YTP-4R:34,000円
▪︎YTP-6R:38,000円

Cross Review

Producer/Engineer
Atsushi Asada
AA<Profile>プロデューサー/ミックス・エンジニア。AmPmやFriday Night Plans、ナオト・インティライミなどを手掛ける。“海外のシーンで共感される音作り”がモットー。

“良い音かどうか”の判断がしやすく
作業速度や作品の質が向上

私は長らくRTP-6 AbsoluteとPower Reference TripleCをモニター・システム周りに使っており、導入後、全帯域を通して音像が圧倒的に近くなったと感じています。それどころか“音像に自分が入り込む”という感覚さえあり、スピーカーの音と自分との間にある空気の層が一つ減ったような感じがするのです。また、空気の振動をモニター越しに観察するしかなかった“音”というものが、まるで手で触れているかのような生々しさで知覚できるような感じさえあります。

こういった音の透明感やみずみずしさ、実体感は、これらの製品が周波数レンジを広げるのではなく“本来の音から情報を減らさない”という作用をしているからなのだと思います。制作中により直感的に“良い音”かどうかの判断が下せるため、録り音の判断や使用するサンプル素材/シンセの選択がかなり楽になり、作業スピードが格段に上がりました。またミックスにおいても、より的確に処理しやすくなったと感じます。音の判断にかかわる部分の負担が圧倒的に少なくなったことで、音楽的な創造に集中しやすくなり、音質面だけでなく作品の音楽としてのクオリティもグンと向上したと実感しています。

また今回、比較的リーズナブルな電源ケーブルPower Standard TripleC-FMをお借りして、アナログ・シンセやプリアンプに試してみました。どちらに使う場合も、周波数レンジが広いだけでなく、特に中低域の密度が高く、故に奇麗なのにパワフルに聴こえます。楽器が持つエネルギーを最大限に引き出してくれると感じます

Producer/Engineer
Hiro
HR<Profile>METAL SAFARIのギタリストを経て、STUDIO PRISONERでプロデューサー/エンジニアとして活動。NOCTURNAL BLOODLUSTなどのバンドを手掛ける。

基本的な再生/録音能力がアップ
特にマスター作成に恩恵を感じる

Power Reference TripleCは、パソコン本体や電源タップなどに使うとシステムの再生/録音能力が飛躍的に向上。低域の重心がかなり低くなり、奥にも立体的に広がります。聴き慣れた曲でもタム回しにハッとさせられたり、歌の空気感やエフェクトが鮮明になって、こんなに情報量があったのかと驚くばかり。楽器の質感は生々しく明りょうで、キックの弾力感まで伝わってきます。特にマスターの書き出しに際しては、作業時の音質がそのまま作品に落とし込まれるので、このケーブルの恩恵は計りしれません。Power Standard TripleC-FMは音の速さが印象的で、音像はややコンパクトになりますが、低域の再生能力や質感の描写は上位モデルと変わらず秀逸です。

RTP-6 Absoluteは、パソコンなど中枢機材に一斉に供給して試聴。瞬発力があり、ダイナミクスに驚くほどの表現力を感じます。音が空間から浮き出るような感触はかつてないものです。音の額縁の広がりも秀逸で、ただの膨張とは違い、粗さの無い制御されたような音が得られます。

Engineer
加納洋一郎
KN<Profile>ミキサーズラボを経てフリー・エンジニアに。LM.C、シシド・カフカ、GILLE、土岐麻子などを手掛けてきた。映画やBlu-rayのサラウンド・ミックスもこなしている。

オーディオ志向に偏っておらず
ミックスにも効くキャラクター

DAW用のMacの電源ケーブルをPower Reference TripleCに交換して使用。上下への広がりと解像度、立ち上がり、定位感、空気感が向上し、音像が大きく感じられるようになりました。次にPower Standard TripleC-FMに交換してみると、上から下まで非常にバランスが取れており、高域が明りょうかつ中低域の押し出しもあり、楽器のつややかさが出て好感触。実際に作業してみると、特に低域へのアプローチがしやすく、フィルターもかけやすかったです。オーディオ志向的なケーブルは、ミックスではまとめにくい傾向になりがちですが、ACOUSTIC REVIVEの製品は音楽的な要素があり、非常にまとめやすく、どちらも素材自体をワンランク上に持って行ってくれる感覚です。

RTP-6 Absoluteは、重量感と削り出しの外観にまずは安心。使用感は、音の余韻と輪郭がはっきりとし、“静かさ”に明らかな改善が見られるというもの。静かになったから何かを失った印象はなく、ノイズ・レベルの低下が音質向上への大きな要因になっていると感じられました。

<製品概要>
電源ケーブル
電源ボックス
電源ボックス(コスト・パフォーマンス・モデル)

(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2020年3月号からの転載となります)