ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「デジタル・ケーブル」

“原音忠実”の理念のもと、ケーブルなどのオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今月ピックアップするのは、音声やクロックの伝送に使われるデジタル・ケーブルだ。

第21回「デジタル・ケーブル」

ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説

デジタル・ケーブルは符号のやり取りですが、伝送は電気信号によるものです。ケーブルの構造に問題があれば内部での干渉によりノイズやひずみが生じ、シールドが甘いと外来ノイズも飛び込みます。それらは信号と一緒に電気伝送され、送られた先の機器に影響を与えて音質が劣化します。

ACOUSTIC REVIVEのデジタル・ケーブルは音響専用導体PC-TripleCを迷走電流によるひずみやノイズの発生の無い“単線”で採用し、絶縁には伝送変質の無いテフロンを使用。緩衝材には静電気が生じない天然シルクを配置し、テフロン・コーティング・フレキシブル銅管シールドとカーボンCSFチュ―ブにて外来ノイズを強力に遮断します。また日立金属のファインメットを装着し、機器間のノイズも消滅。RCAピンやXLRの端子も、異種金属組み合わせによる制振構造のハンダレスのネジ留め式を採用。デジタル・ケーブルの概念を覆す劇的なクオリティ・アップが実現します。

<Price>
●COX-1.0TripleC-FM(RCAピン):88,000円(1m)
※片側BNC仕様は特注につき+10,000円
●COX-1.0TripleC-FM-BNC(BNC):88,000円(1m)
※片側RCAピン仕様は特注につき+10,000円
※以上2製品の長さの特注:28,000円(+50cm当たり)
●AES-1.0TripleC-FM(XLR):98,000円(1m)
※長さの特注:31,000円(+50cm当たり)
●DIGITAL-1.0R-TripleC-FM(RCAピン)/写真右:16,000円(1m)
●CLOCK-1.0BNC-TripleC-FM(BNC)):16,000円(1m)
●DIGITAL-1.0X-TripleC-FM(XLR)/同左:21,000円(1m)
※以上3製品の長さの特注:7,000円(+1m当たり)

Cross Review

Engineer/Composer
Mine-Chang
mi<Profile>prime sound studio formに所属のエンジニア。作編曲家/プロデューサーとしても活躍しており、アーティスト作品からCM音楽、ゲーム音楽などまで手掛ける。

高域のざらつきやノイズ感が減り
微細な音の余韻まで質感が向上

独自の音響専用単線導体PC-TripleCを採用しつつ、さまざまな工夫を凝らしたデジタル・ケーブルのCOX-1.0TripleC-FMとAES-1.0TripleC-FMを、AES/EBUとS/P DIFのデジタル・インが備わったモニター・スピーカーに使用。オーディオ・インターフェースからスピーカーへの接続に用い、常設のケーブルと比べてみました。

まずはAES/EBUのAES-1.0TripleC-FMから。聴感上のごくわずかな印象の違いですが、銅チューブ・シールドの効果でしょうか高域のざらつきやノイズ感が減って、シンバルの余韻やボーカルの子音には滑らかな質感を覚えました。また、SN比が高まったからか見晴らしが良くなり、微細なレベルの音の余韻まで質感が向上しています。試しにDDコンバーターからDAコンバーターへの接続にも使用し、後者のアナログ・アウトを聴いてみたところ、やはり張り付いたようなひずみ感が聴感上は減少したように思えました。

続いてはS/P DIFのCOX-1.0TripleC-FMUSBをチェック。DDコンバーター〜DAコンバーターの印象は、AES/EBUのケーブルとほぼ同じくSN比とディテール感の向上ですが、こちらの方がより変化が分かりやすかったです。また、航空機用アルミ合金削り出しのコレット・チャック式RCAプラグを採用し、高い締結力でありながら抜き差しの際に端子や基盤にダメージを与えることがなく、信頼性に優れた機構であると感じました。いずれの製品も、ソース本来の内容を正しく伝送するデジタル・ケーブルだと思います。

Engineer
鎌田岳彦
K<Profile>フリーで活躍するエンジニア。三宅純やおおたか静流といったアーティストの作品を手掛けてきたほか、映画のサントラやCM音楽のミックスなども数多くこなす。

逆相を用いたテストで完全な無音に
ケーブルでの劣化が見られない

今回は、ACOUSTIC REVIVEの2mのデジタル・ケーブル(AES/EBU)をチェック。以前から所有しているデジタル・ケーブルとXLRのマイク・ケーブルなどを比較対象に、楽器単体や何曲かの2ミックスを聴き比べてみました。方法は、メインのAVID Pro Tools(HD I/O)から音声をデジタル出力して、サブのPro Tools(RME Fireface UFX)を介しメインの方に戻して録音するというもの。

電源やアナログのケーブルのような音の変化は感じられなかったものの、戻ってきた方の音声の録り音を逆相にしてみると、比較対象のケーブルでは微弱な音が残りました。デジタル信号は高周波の矩形波なので、端子の部分やケーブルにおいて波形の変化が起きているのかもしれません。一方ACOUSTIC REVIVEの方は位相反転で完全な無音となったため、ケーブルを通したことによる劣化などが全く起こっていないと考えられますケーブルは太く作られていますが、適度な柔軟性も備え、高級感や安心感があります。非常に扱いやすいと感じました

Engineer
小崎弘輝
KS<Profile>音楽制作会社LiMu Createを主宰するエンジニア。NYでの修行後、つばさプラスなどを経て現在に至る。近年は、加山雄三のライブ・ミックスなどを手掛けている。

オーディオI/Oの性能を引き出し
繊細なタッチまでクリアに再現

ANTELOPE AUDIO Zen Studio(オーディオ・インターフェース)にMIDASマイクプリをADAT接続する際のワード・クロック・ケーブルとして、COX-1.0TripleC-FM-BNCを使ってみました。比較対象は、民生品のBNCケーブルとADAT供給によるクロック。録音した楽器は主にアコースティックで、ピアノやアコギ、サックスなどです。

お恥ずかしながら民生のBNCケーブルとADATクロックの差を聴き分けることはできませんでした。どちらもまあ、いつも通りの音だなと言う印象です。しかし、最後に試してみたCOX-1.0TripleC-FM-BNCは全く異なりました。Zen Studioの性能を最大限に発揮してくれる印象で、粒立ち、特に弱音で繊細なタッチの一つ一つまでクリアに再現されます。モニターにおけるクロックの違いは再生環境に依存するものの、録音時の差については後で修正が効きません。もちろんモニターでクロック同期を必要とする方にもお薦めですが、今回の結果からデジタルで録音をする際には必須のケーブルなのではないかと感じました

<製品概要>
ACOUSTIC REVIVE デジタル・ケーブル

(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2020年2月号からの転載となります)