第12回「マイク・ケーブル」
ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説
マイク・ケーブルでの音質劣化には、想像以上に大きなものがあることをご存じでしょうか? 市販品ほぼ100%は撚(よ)り線と呼ばれる細かい線を撚り合わせた導体を使ってます。それに対しACOUSTIC REVIVEのマイク・ケーブルは“単線”の導体を使用しているのが、最大の特徴。撚り線は細かい線と線の間を飛び交う迷走電流の発生が避けられず、この迷走電流がひずみやノイズ、遅延などにつながってしまうため、歌や楽器が本来の形では録音できず、著しく変質します。ACOUSTIC REVIVEのマイク・ケーブルは単線導体のため迷走電流の発生が無く、劣化要因が無いためボーカルや楽器を本来の姿で収めることが可能です。
絶縁材には、電気の流れを妨げる比誘電率の影響が最も少ないテフロンを使用。日立金属ファインメットビーズによる、伝送上のノイズを完全にシャット・アウトする機能も搭載するなど、従来のマイク・ケーブルとは一線を画す性能で、これまで到達できなかった領域の録音を実現します。また完全フラット・バランスのためマイクとの相性も無く、マイク自体の性能を極限まで引き上げることも可能。特性が改善され、弱点と思われた部分が解消されることも期待できます。
<Price>
●LINE-1.0X-TripleC-FM:38,000円(1m/2本一組)
※長さの特注可。0.5mあたり12,000円(2本一組)
●LINE-1.0X TripleC-FM-Sマイクケーブル:19,000円(1m)
※長さの特注可。1mあたり9,000円
●XLR-1.0TripleC-FM(写真):188,000円(1m/2本一組)
※長さの特注可。0.5mあたり62,000円(2本一組)
●XLR-1.0TripleC-FM 1.4×1.8mm導体仕様:218,000円(1m/2本一組)
※長さの特注可。0.5mあたり88,000円(2本一組)
Cross Review
Engineer
鈴木鉄也
<Profile>Syn StudioやRinky Dink Studioを経て2006年よりフリー・エンジニアとして活動。MONKEY MAJIKやCOLDFEET、遊佐未森などを手掛けてきた。
不純物を丁寧に取り除いた結果
たどり着いた解像度の高さ
何かを付加したという雰囲気はみじんも無く、不純物を丁寧に取り除いていった先にたどり着いた音という印象。音質的に派手になったとか、そういう方向の変わり方ではなくて、不純物を除いた結果、ダイナミクスの表現力の解像度が高くなっているとか、音のピントが合って中低域が良い意味で整理されているという音に受け取れます。
新しいマイク、ビンテージ、定番マイクといろいろ試してみましたが、一番興味深かったのはひずみやサチュレーションの多いビンテージ・マイク。今まで一般的なケーブルで録音している間は、結構ひずんでるなとか、まぁまぁサチュレートしているな、くらいしか分かっていなかったんだなと思いました。このケーブルに通してみると、ひずみの量だけでなく種類まで認識でき、帯域ごとにひずみの感じが違うのだなぁとはっきり判断することができます。そして音質的にも、ザ・ビンテージという風にはならずにあくまでもモダンなプラットフォームの中でのビンテージ・サウンドという新しい雰囲気の音になるのだなと思いました。
Artist
半田健人
<Profile>俳優/ミュージシャンで、ビンテージ・マイクに造詣が深い。2019年9月14日(土)に大阪・雲州堂にて、50名限定のライブ&トーク・イベントを開催する。
マイクの設計者が狙った
“本来の音”がするケーブルという印象
数本マイクを替えて、主にボーカルで試してみました。まずコンデンサー・マイクのSONY C-55Pに合わせたところ、出力は一般的なケーブルと大差は見られませんでしたが、全体的につやが加わった分、立体感を覚えました。コンデンサー・マイクの能力を引き出すには特に良いのでしょう。続いてAKG D24では、旧式のダイナミック・マイク特有の中域が団子になりがちな部分がうまく相殺され、EQ処理とはまた違った自然な変化。息遣いなどに必要以上の神経を使わなくてもよい状態になりました。
そして、一番顕著に差が出たのは初期ロットのSHURE SM58。場合によっては低域が膨らみがちで奥行きも乏しいのがSM58ですが、使い方次第でそのまま本チャンの録音に使えるくらい、見通しの良い音に変わりました。トータルで言えば、各マイクの設計者たちが狙った本来の音がするケーブルという印象です。入り口の段階でここまでピュアな音が録れていれば、後処理に頼らず、楽器を選定することで音決めをする醍醐味を味わえると思います。
Engineer
福田聡
<Profile>ビーイングを経てフリーのエンジニアに。ブラック・ミュージックの音作りを得意とし、ENDRECHERI、SANABAGUN、オーサカ=モノレールなどを手掛ける。
自然で癖の無い音がするので
レコーディングにも安心して使える
今回は、XLR-1.0TripleC-FMをボーカル、ピアノ、ベース、ギターの録音で使用し、スタジオでよく使われている一般的なマイク・ケーブルと比較してみました。ボーカルを録ったときの第一印象は、声の音像がこれまでより大きく感じられたというもの。高域の天井が高くなり広がりが出た感じで、低域も広がって音が自然に伸びている印象です。しかし、ただ広がっただけでなく、輪郭やエッジ感、奥行きもしっかり出てきたので、2次元にも3次元にも音がリッチになった感覚です。
現代の音楽において重要な要素である“解像度”も格段に向上。録り音のリバーブ乗りが良くなり、演奏に深みが出て余韻までよく聴こえるようになりました。またボーカルのときと同様に、音の立ち上がりや粒立ちも鮮明になった印象で、それでいて耳に痛いところが全く無く、音が新鮮に聴こえます。故にダイナミクスも向上したようで、小さな音量で再生しても存在感のある音に聴こえていました。
高級ケーブルと言うと、音がやたらとギラついたり癖が付いたりとレコーディングでは扱いづらい印象がありましたが、このXLR-1.0TripleC-FMは伝送ロスや伝送変質を無くすことがコンセプトにあるように、自然で癖の無い音に録れるので、レコーディングでも安心して使うことができました。この“安心できる”というのは重要です。
演奏者のポテンシャルとマイクの性能を十二分に引き出し、録り音のクオリティを上げてくれるXLR-1.0TripleC-FM。ここぞというときの“勝負ケーブル”として活躍してくれることと思います。
<製品概要>
ACOUSTIC REVIVE マイク・ケーブル
(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2019年9月号からの転載となります)