ループ・トリガー機能のClips Window
通常のシーケンスとは別に再生できる
まずは最も大きな追加機能のClips Windowです。簡単に言うと、ループ/フレーズをトリガーする機能。曲のモチーフを、瞬間的に組み立ててプレイすることもできるエディター&プレーヤー機能とも言えるでしょうか。
Clips Windowは、スロットにオーディオをドラッグ&ドロップしたり、MIDIエディターで作ったものをペーストしたりと、いろいろな手法で組み立てていけます。個々のクリップをトリガーするほか、複数トラックにわたる任意のクリップ、シーン全体のクリップのトリガーも可能です。また、次に再生するクリップをスタックできるクリップ・キューイングという独自機能も備わっています。面白いのは、Tracks Windowのシーケンスと“同居”できること。曲の根幹は従来通りの画面で作り、ライブではアドリブ的にこのClips Windowのトリガーを混ぜて使ってみるというのも有効でしょう。
コンテンツブラウザという画面も新たに追加されました。コンテンツブラウザにはプロジェクト内のオーディオが表示されるほか、テンプレートとして保存しているエフェクト・チェインやMIDIクリップ、ループ/サンプル素材のフォルダーなどを登録でき、素早いアクセスが可能に。Apple Loopsのフォルダーを登録しておけば、素材として使うこともできます。インストゥルメントやエフェクト・プラグインの検索も行えて、それぞれのインサート設定を保存しておけばコンテンツブラウザから呼び出すことが可能です。アイディア次第で、多種多様な自分なりの使い方が見つかるのではないでしょうか? コンテンツブラウザからClips Windowにクリップを配置していき、作曲をスタートさせるときのテンプレートとして活用するという場合にも有用。筆者の場合はそんなパターンで多用しそうです。
ビート検出機能が進化
VCAフェーダー機能も追加
DPではバージョン9.5のときからZYNAPTIQ ZTX Proというオーディオ・ストレッチ・エンジンが使われており、高音質をキープしつつオーディオのストレッチが可能になっています。オーディオのテンポを追従させるだけなら、シーケンスエディターのトラック設定メニューにある“ストレッチ”にチェックを入れておけば、テンポ情報があるオーディオをドラッグ&ドロップしたときに自動的にテンポ追従します(テンポ・チェンジにも対応!)。Clips Windowでオーディオ・クリップを使用したときも、同様にこのZTX Proでストレッチされるので高音質な状態でループされるのです。また、DP10ではビート検出機能の“Beat Detection”がバージョン2となることで精度が高まり、より使いやすく進化しています。ある程度のリズムが含まれていれば、2ミックスなども検出できるので、簡単にテンポを設定でき、前述のストレッチ・オーディオでテンポに追従させられます。
さらにVCAフェーダー機能も追加されています。従来はミックスにおいてAUXチャンネルなどでサブミックスを作ってまとめたり、トラックグループを作ってフェーダーを追従させたりしていました。DP10では、SSLのようなアナログ卓にあるVCA機能を再現しています。任意のトラックを選び、右クリック(Macはcommand+クリック)でコンテキスト・メニューを出して“VCAトラックとグループ...”を選べば、そのトラックをグルーピングしたVCAトラックが作成され、トラックの音量を相対的にコントロールできます。トラックグループでは不都合なときや、レベルのコントロールだけをしたいときにはVCAフェーダーが適しているでしょう。
最後はRun Commandです。Run Commandはshift+スペース・キーで表示され、DPに搭載されるすべての機能にアクセス可能。機能名の頭文字だけでも検索にかければすぐに表示されるので、メニューを探し回ることもなくなりますね。
駆け足で新機能を説明してきましたが、画面のスケーリングやVST3のサポート、5GBのサウンド・バンクが付属するなど、ほかにも新たに追加されたポイントがたくさんあります。DPを新規導入される方にも魅力的な機能が増えましたし、以前からDPを使っている人には無条件でアップグレードすることを強くお勧めしたいですね。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年9月号より)