フェルナンド・アポンテ〜ECLIPSE TD-M1ユーザー・レポート(3)

これまで聴き取れなかったサウンドが聴こえるようになりました

 “タイムドメイン理論”に基づき設計されたECLIPSEのスピーカー、TDシリーズ。2013年に発表されたTD-M1は、24ビット/192kHz対応のUSB入力搭載、APPLE AirPlayでのワイアレス対応など、使い勝手も追求したモデルだ。もちろん音質もこれまでのTDシリーズが培ってきた“正確な再生”をさらにブラッシュ・アップ。ECLIPSE初のアンプ内蔵型で使いやすさも向上し、エンジニアが愛用するケースが急増しつつある。今回は長年坂本龍一の右腕として活躍している日本でもおなじみのエンジニア、フェルナンド・アポンテ氏にご登場いただこう。

この記事はサウンド&レコーディング・マガジン2014年11月号から編集・転載したものです。

ディテールまでありありと分かる奥行き感

 アポンテ氏は、昨年10月のニューヨークAESショウでTD-M1に出会い、そのサウンドに驚嘆。すぐにニューヨーク郊外にある自宅スタジオへの導入を決定したそうだ。

「自分のスタジオではニアフィールドとしては大型のGENELEC 1031Aを使用していて、そこにTD-M1を加えました。TD-M1のサウンドは群を抜いて素晴らしいと思います。クリアかつ輪郭のはっきりした中域は実に心地良く、サウンドのディテールまでありありと分かる奥行き感も素晴らしいです。特に自分のスタジオで初めてそのサウンドをじっくり耳にしたときは大変心地良く感じられました。TD-M1を通して聴いているサウンドが優れていれば再生しているミックスに問題はないと、そのときはっきり確信することができました」

 そう語る氏は、これまで愛用してきたニアフィールド・モニターの1031Aを補う形でTD-M1をセットアップしたという。

「1031Aではクリアでない部分、場合によっては聴き取れなかったりしたサウンドが聴こえるようになりました。言い換えるならミックスの別の側面が把握できるようになったという点でTD-M1の導入が私の仕事の環境やアプローチの改善につながったことは紛れもない事実です。比較をすれば、1031Aの中域は、TD-M1ほど精細でない気がします。ですから私のスタジオではTD-M1と1031Aという性格の異なる2つのスピーカーが互いを補うといった感じです。ミックスを両方のスピーカーでチェックするようになってからは、EQやそのほかのプロセッシングをより正確かつ効率良くできるようになりました」

スタジオ外での作業やリスニングにも最適

 もちろん自宅だけでなく、外のスタジオに持ち出せるコンパクトなサイズもTD-M1の魅力だ。アポンテ氏はこう続ける。

「現在は商業スタジオとプライベート・スタジオで作業環境の違いはほとんど無くなりつつありますから、商業スタジオで仕事をするときもTD-M1を持ち込みたいと私は考えています。とりわけ自分のプライベート・スタジオで耳にすることのできるサウンドを外のスタジオでリファレンスにできるという点にも、TD-M1のメリットを感じます」

 アポンテ氏と言えば、坂本龍一のツアーに帯同し、iTunes Storeでのライブ録音即日配信を手掛けたエンジニアとしても有名。そうした環境でもTD-M1は使えそうだと語る。

「特に出先でヘッドフォンではなくスピーカーによるハイクオリティなモニタリングを必要とする場合、TD-M1は大きな武器となるでしょう。ワイアレス対応であること、また、ステレオ・ミニ入力が搭載されている点なども出先での利便性を高めていますし、スタジオの外で使うスピーカーとしても極めて実用性の高い製品に仕上げられていると思います」

 また、アポンテ氏は仕事を離れたリスニング用としても、TD-M1を重用しているそうだ。

「仕事で持ち込まれた音楽だけでなく、趣味で聴く音楽をTD-M1で鳴らして楽しんできました。私の好きな音楽ジャンルはとても広範で、さまざまな種類の音楽を聴いているのですが、TD-M1の守備範囲はとても広いと思います。どんな音楽を聴いても首尾一貫していてブレがなく、適切なサウンドが返ってくるからです。つまりある特定タイプの音楽に向けたものではなく、どんな音楽にも合うスピーカーだと個人的には思っています。私ならどのプロジェクトにも使いますね。TD-M1の音を聴かせると、誰もが絶賛します。あんなコンパクト・サイズのスピーカーがあれほど良いサウンドを鳴らすとは、誰も実際に聴くまでは想像だにしませんから!」

 

【フェルナンド・アポンテ PROFILE】ニューヨークを拠点とするレコーディング・エンジニア。キャリア初期にはマドンナ、チャカ・カーン、マスターズ・アット・ワークなどの作品に参加。1991年の『HEARTBEAT』以降、坂本龍一の作品に携わるとともに、YMO、TOWA TEI、ジャキス・モレレンバウムなどの作品にも関与。坂本のツアーに帯同し、iTunes Store即日配信のための録音&ミックスも手掛けた。

TD-M1とタイムドメイン理論を動画で

TD-M1とタイムドメイン理論を、AES(世界唯一の国際音響研究団体)で会長を務めたこともあるカナダ・マギル大学ヴィスラフ・ボスチック教授が、動画を交えて紹介してくれる。“コンパクト・サイズのスピーカーがあれほど良いサウンドを鳴らすとは”とアポンテ氏絶賛のポイントを裏付ける、理論と技術をぜひチェック!

TD-M1

TD-M1_BK_LR

■スピーカー・ユニット:8cmコーン型フルレンジ ■方式:バスレフ・ボックス ■再生周波数:70Hz〜30kHz ■定格出力:20W(T.H.D 1%/片チャンネル駆動時) ■最大出力:25W(T.H.D 10%/片チャンネル駆動時) ■高調波ひずみ率:0.08%(1kHz/10W出力時) ■S/N:90dB以上 ■入力インピーダンス:10kΩ ■消費電力:10W ■待機電力:2.7W(ネットワーク・スタンバイ時)、0.5W以下(完全スタンバイ時) ■外形寸法:155(W)×242(H)×219(D)mm ■重量:約5.3kg(ペア) ■価格:125,000円(ペア) ■カラー:ブラック/ホワイト

TD-M1R▲Rch用スピーカーのリア・パネルには、左から電源アダプター入力、AUXイン(ステレオ・ミニ)、USB A、USB B、Lchスピーカー用出力、そして付属Wi-Fiアンテナを接続するための入力が並ぶ(撮影:小原啓樹)

問合せ:富士通テン
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