ジェフ・ジョーンズ〜ECLIPSE TD-M1ユーザー・レポート(2)

度の合ったメガネのようにすべてが“はっきり見える”スピーカー

“タイムドメイン理論”に基づき設計されたECLIPSEのスピーカー、TDシリーズ。2013年に発表されたTD-M1は、24ビット/192kHz対応のUSB入力搭載、APPLE AirPlayでのワイアレス対応など、使い勝手も追求したモデルだ。もちろん音質もこれまでのTDシリーズが培ってきた“正確な再生”をさらにブラッシュアップ。ECLIPSE初のアンプ内蔵型で使いやすさも向上し、エンジニアが愛用するケースが加速しつつある。今回はニューヨークを拠点に活躍するグラミー受賞エンジニア、ジェフ・ジョーンズ氏に登場いただこう。

この記事はサウンド&レコーディング・マガジン2014年10月号から編集・転載したものです。

自然なダイナミクスにより敏感になった

 ジョーンズ氏がTD-M1に出会ったのは昨年10月のニューヨークAESショウ。会場のTDシリーズが素晴らしいサウンドを奏でている一方で、持参した自身の手掛けたミックスがそれほどの音で再生されず、逆に自身のミックスの問題点に気付かされたという。すっかりTDシリーズの実力に感嘆した氏は、TD-M1をプライベート・スタジオにも持ち帰ってテストしたそう。

「原音を精密かつ正確にとらえ、とてもクリアなサウンドが得られるTD-M1の忠実性は驚異的で、その信じられないほどのサウンド・クオリティはまさに脱帽ものだ」

 即座に導入を決めたというジョーンズ氏。ミックスはもちろん自身でマスタリングまで手掛ける氏は、複数のスタジオ・モニターに加え、ヘッドフォン、ラジカセなどもたくさん用意し、チェックに使用しているそう。しかし、TD-M1は“そのうちの一つ”という域を越え、氏の仕事のスタイルさえ変えてしまうほど大きな存在となっているそうだ。

「レコーディングの際はEQやコンプなどを使わず、ダイナミクス系エフェクトはミックスやマスタリングで扱うのが私の仕事の進め方だが、TD-M1を使用するようになってミックスでもダイナミクス系エフェクターを使用する度合いが明らかに減った。TD-M1でモニタリングするようになったことで、音源本来の自然なダイナミクスにより敏感になり、結果としてミキシングの仕方が変わったというわけなんだ」

 こうしたアプローチの変化によって、仕上がりのイメージをより鮮明に描けるようになり、より洗練した精巧なミックスが可能となったという氏。まるで“音のピントが合う”ようだと説明する。

「度の合わないメガネを掛けていることに長年気付かず、ようやく度の合ったメガネを医者に処方されたといった感じだね。おかげで間違いなくすべてがはっきり見えるようになった。音楽、とりわけダイナミクスやトランジェントに対する私の感覚は、TD-M1によって確実に数段アップしたと思う」

TESLAやAPPLEのような未来志向を感じる

 TD-M1ではUSB、ステレオ・ミニ端子でのAUX、そしてワイアレスのAirPlayという3種類の入力方式が選べる。ジョーンズ氏は最初、XLRでのアナログ入力が無いことを気にしていたそうだが、実際に使用してみて、その“古い考え方に固執する必要はない”と判断したそう。

「TD-M1の性能を最大限引き出すには、USB接続して内蔵の非オーバー・サンプリング型DAコンバーター(NOS-DAC)を通すのが最良という結論に達した。TD-M1の入力部は、基本を押さえながらも極めて先進的。未来を見据えたTESLAの電気自動車、あるいはスティーブ・ジョブスによるAPPLE MacやiPhoneと同じように、未来志向の強さを感じている」

 ドクター・ジョンをして“現代のトム・ダウド”と言わしめる、音楽の内面にまで深くかかわるタイプのプロデューサー/エンジニアである氏にとって、TD-M1の導入は既に大きな手応えとなっているようだ。

「TD-M1のサウンドをモニターしながら仕事をするようになって自分のプロデュース/エンジニアリング・スキルは新たな水準へとレベル・アップした。あらゆる観点からリアルな音を返してくれるTD-M1は、そうした点からも私のニーズに合ったモニターだと思う。私は、自分がプロデュースする音楽のことを芸術作品であると考えている。TD-M1を導入したことにより、芸術作品をより詳細かつ正確に吟味し、把握するツールを得られたと感じているんだ」

 

【ジェフ・ジョーンズ(ザ・ジェダイ・マスター) PROFILE】
ニューヨークを拠点とするプロデューサー/エンジニア。2008年リリースのドクター・ジョン『シティ・ザット・ケア・フォーガット』でグラミー賞を受賞。ほかにエリック・クラプトン、ウィントン・マルサリス、ウィリー・ネルソン、ノラ・ジョーンズ、トーキング・ヘッズ、チック・コリア、アリシア・キーズ、パブリック・エネミーなどの作品に携わる。
Webサイト:www.jedinyc.com

TD-M1とタイムドメイン理論を動画で<

TD-M1とタイムドメイン理論を、AES(世界唯一の国際音響研究団体)で会長を務めたこともあるカナダ・マギル大学ヴィスラフ・ボスチック教授が、動画を交えて紹介してくれる。ジョーンズ氏が体感した“ピントが合うような正確さ”を裏付ける理論と技術をチェック!

TD-M1

TD-M1_BK_LR

■スピーカー・ユニット:8cmコーン型フルレンジ ■方式:バスレフ・ボックス ■再生周波数:70Hz〜30kHz ■定格出力:20W(T.H.D 1%/片チャンネル駆動時) ■最大出力:25W(T.H.D 10%/片チャンネル駆動時) ■高調波ひずみ率:0.08%(1kHz/10W出力時) ■S/N:90dB以上 ■入力インピーダンス:10kΩ ■消費電力:10W ■待機電力:2.7W(ネットワーク・スタンバイ時)、0.5W以下(完全スタンバイ時) ■外形寸法:155(W)×242(H)×219(D)mm ■重量:約5.3kg(ペア) ■価格:125,000円(ペア) ■カラー:ブラック/ホワイトTD-M1R▲Rch用スピーカーのリア・パネルには、左から電源アダプター入力、AUXイン(ステレオ・ミニ)、USB A、USB B、Lchスピーカー用出力、そして付属Wi-Fiアンテナを接続するための入力が並ぶ(撮影:小原啓樹)

問合せ:富士通テン
http://www.eclipse-td.com/

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