片寄明人〜ECLIPSE TDシリーズを頼りにするプロフェッショナルたち(4)

“タイムドメイン理論”に基づき設計されたECLIPSEのスピーカー、TDシリーズ。2001年にTD512とTD508の2モデルがリリースされるやいなや、ミックスやマスタリングなど正確な音の再現が要求される現場で高い評価を得る。その後モデル・チェンジやラインナップの拡充が続けられ、2012年にはTD510MK2、TD510ZMK2、TD508MK3がリリース。インパルス・レスポンスのさらなる向上や周波数特性の拡張など、さまざまな点で進化を遂げている。そんなECLIPSE TDシリーズの魅力をトップ・プロにうかがっていくのがこのコーナー。4回目に登場していただくのは、Great3やChocolat & Akitoでのアーティスト活動のほか、プロデューサーとしても活躍する片寄明人氏だ。

この記事はサウンド&レコーディング・マガジン2012年11月号から編集・転載したものです。

スタジオで作った音が自宅でも箱庭のように再現できる

 片寄氏がECLIPSE TDシリーズと出会ったのは2004年のこと。『THE BEACH BOYS BEST of TRIBUTE』というビーチ・ボーイズのカバー・アルバムに、Great3 with 佐橋佳幸の名義で参加したときだったという。

「ミックスをアレンジャーの門倉聡さんのスタジオでやったんですが、そのとき門倉さんにSACDサラウンドの音をTD712zで聴かせてもらったんです。スティーリー・ダンやイーグルスを聴いたんですが、その音の鮮烈さにショックを受けました……ある意味サイケデリックとも言うべき体験で、ノンドラッグでこんな体験ができるのかと(笑)。とにかく解像度の高い世界に驚いたんです。で、その解像度の高さはSACDのせいなのかECLIPSEのせいなのか、どっちなんだろうと思って、DENONのユニバーサル・プレーヤーDVD-A11とTD508を自宅に導入して、SACDやCDを聴いてみたところ、今まで持っていたCDがもう1回楽しめるぞというくらい新しい聴き方ができた。そういう意味では僕が衝撃を受けた解像度の高さはECLIPSEで実現されたものだったんですね」

 それまで自宅では子供のころに拾った(!)というCELESTIONのDitton15というスピーカーを使ってきた片寄氏であるが、TD508導入以降それは主にアナログ・レコード用の再生システムとなり、仕事関係の音源やSACD、さらには最近話題の高音質配信の音源は必ずTD508で聴くようになったとのこと。

「定位の良さ、そして低音のスピードの遅れのなさがいいですね。最近はスピーカーで音楽を聴かない人が増えていますが、TDシリーズは場所もとらないので、空気を震わせて音楽を楽しむことを手軽に味わえます。低域の不足を心配する人もいるかもしれないけど……実際、僕も316SWというサブウーファーを買ったんですが、正直、無くても大丈夫でした(笑)」

 このように自宅でECLIPSEを活用している片寄氏だが、意外なことに音楽制作機材については簡素なものしか用意していない。

「やっぱりバンドマンだからというか、人との共同作業が好きなので、作業は外のスタジオで行うのを基本にしています。以前は外のスタジオで作業したものを自宅に持ち帰って聴くと、どうしてもスタジオとは違う音になってしまい、正確な判断ができないということが悩みだったんです。でもTD508を導入したことでそれが一気に解消しました。スタジオで緻密(ちみつ)に作ってきた定位であったり音の質感が、家でも箱庭のように再現できるので、翌日の作業のビジョンを描きやすくなったんです」

 取材時はGreat3の新作のレコーディングを行っているそうだが、スタジオ作業の確認用としてTD508が大活躍しているそうだ。

「レコーディングはドラマーの白根(賢一)の自宅スタジオでやっているんです。スタジオといっても自宅の地下に防音を施しただけで、ブースがあるわけではない。エンジニアも含めてみんなが同じ空間にいるので、どういう音で録れているのかちょっと心配なので、毎日家に持って帰ってTD508で確認しているんです。いい音で録れているので安心していますけど(笑)」

 そうやって録られた音を、今度はミキシングを担当するエンジニアにデータで送り、仕上がってきたミックスを自宅のTD508で確認するつもりだという。自分にとってひとつの基準となるモニターを手に入れ、片寄氏のワークフローは非常に明快なものになったようである。

 

【片寄明人 PROFILE】 1968年東京生まれ。1991年にRotten Hatsのボーカルとしてデビュー。1994年にはGREAT3を結成しボーカル&ギターを担当。GREAT3は2003年以降活動を休止していたが、2012年に入って新しいベーシストjanを迎え再開しアルバムを発売。また妻であるショコラとのユニットChocolat & Akitoでも活動している。

“制振支持構造”とは?

TD_stand

TDシリーズのスピーカーとスタンド部は3本のスパイクとオリジナルの固定構造による点接触を実現。不要な振動を排除しタイトな低音再生を可能としている。TD508MK3用の別売スタンド508DMK3(25,000円[1本])でも同じ構造が採用されているほか、角度調整もー10度〜+15度の範囲で行えるのでセッティングの際に重宝するだろう。

片寄明人氏使用スピーカーの後継モデルTD508MK3

TD508MK3_BK_prd_01

●ユニット/8cmコーン型フルレンジ ●再生周波数帯域/52Hz〜27kHz(ー10dB) ●能率/82dB/W・m ●許容入力(定格/最大)/15W/30W ●インピーダンス/8Ω ●カラー・バリエーション/シルバー、ブラック、ホワイト ●価格/47,000円(1本)

問合せ:富士通テン
http://www.eclipse-td.com/

PresentedbyEclipseFujitsuTen