ピアノロールの活用術について、アーバンギャルドのキーボーディストで作編曲家の、おおくぼけい氏が基礎から解説。今回は、ノートをグリッドから少しズラすことで、生演奏のようなノリを生む手法について語っていただきます。
地味に見えて意外と効果大
僕はバンドっぽい曲を打ち込みで作る場合、生演奏のような感じを加えるために、スネアをグリッドから少しだけ後ろに動かしたり、ハイハットをちょっと前にズラしたりすることがあります。スネアを後ろに動かすのはジャストよりもヘビーに聴こえるからで、逆に前へズラすと性急な感じになります。細かい作業に見えて、ジャストに打ち込んだものと聴き比べてみると、意外に効果が分かるんですよね。
題材曲序盤のドラム・パターンを見てみましょう❶(♪6-1)。ハイハット、スネア共に、グリッドより14~23tick後ろへ動かしているノートが目立ちます❷。“どのくらいズラせばよいか”に決まりはないと思っていて、曲を聴きながら“少しズラした方がノリが出るかな?”と考え、マウスでノートを動かすのが僕のやり方。ジャストのバージョン(♪6-2)と比べれば、違いが感じられるのではないでしょうか。
動かす値を事前に決められる
“どのくらいの数値、動かすか”を事前に決めて、ノートやリージョンをズラすこともできます。これは“ナッジ”と呼ばれる機能で、Logic Proではピアノロールの編集>移動メニューからアクセス可能❸。題材曲は、ハイハットやスネアのノートを14~23tickズラした箇所が目立つので、“10tickナッジする”という設定は使えるかもしれません。
そのほか、ピアノロールの機能ではありませんが、トラックの発音タイミングを変えられる“トラック・ディレイ”も便利なので触れておきましょう❹。僕は普段、ベースのトラックを少し遅らせてヘビーに聴かせたり、ストリングスのように立ち上がりの遅い音にかけて速く発音するようにしたりと有効活用しています。
◎題材曲のMIDI素材をダウンロード!
※上のページにアクセス後、パスワード「pianoroll2302_snrec」を入力してください
※MIDI素材は、トラックのスタンダードMIDIを書き出したものです
おおくぼけい
【Profile】アーバンギャルドのキーボーディストで、作編曲家としても活動。頭脳警察や戸川純、大槻ケンヂらの音楽にも携わり、映画や演劇のための作編曲も手掛ける。アーバンギャルドは、2023年1月25日にユニバーサルから『URBANGARDE CLASICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト~』をリリース。3月31日には、中野サンプラザホールにてライブ『15周年記念公演 アーバンギャルドのディストピア2023 SOTSUGYO SHIKI』を行う。