音の高さを滑らかに変える ~ピッチ・ベンドでコントロール

音の高さを滑らかに変える ~ピッチ・ベンドでコントロール

ピアノロールの活用術について、アーバンギャルドのキーボーディストで作編曲家の、おおくぼけい氏が解説。本稿では、音の高さを滑らかに変化させ、フレーズにニュアンスを加える方法についてレクチャーしていただきます。

ベンド幅とベンド量について

 打ち込みの音にニュアンスを付ける有効な手段の一つに、ピッチ・ベンドがあります。ピッチ(音の高さ)をベンドする(曲げる)という名称の通り、音の高さを変えるものですが、ピアノロール上でノートを上げ下げするのとは違って滑らかに=連続的に変化させることができます。つまり、例えばグリッサンドのような音を作り出せるのです

 “ピッチを最大でどのくらい変えるか”(ベンド幅)は、ソフト音源の方で設定します。1オクターブまで変えられますよ、といった音程の設定ですね。

ベンド幅はソフト音源で設定します。画面の“12”は“半音12個分の音程”を表していて、最大で1オクターブの上げ下げが可能という意味(赤枠)

ベンド幅はソフト音源で設定します。画面の“12”は“半音12個分の音程”を表していて、最大で1オクターブの上げ下げが可能という意味(赤枠)

 一方、その時々にどのくらい上げ下げするか(ベンド量)はピアノロールのピッチ・ベンド・カーブでコントロールします

ベンド幅の中で実際にどれくらい上げ下げするかは、ピアノロールのピッチ・ベンド・カーブ(黄枠)でコントロール。この画面は、C3のノートに対してピッチ・ベンドをかけたところで、カーブのエリア中央に書いた赤い点線は元のC3のピッチを示しています。ベンド幅は12なので、1~2小節目にかけて1オクターブ上昇し、2~3小節目にかけては2オクターブ下降。4小節目からは最大値の半分だけ上げているので、半音6個分上のピッチであるF♯3で鳴ります

ベンド幅の中で実際にどれくらい上げ下げするかは、ピアノロールのピッチ・ベンド・カーブ(黄枠)でコントロール。この画面は、C3のノートに対してピッチ・ベンドをかけたところで、カーブのエリア中央に書いた赤い点線は元のC3のピッチを示しています。ベンド幅は12なので、1~2小節目にかけて1オクターブ上昇し、2~3小節目にかけては2オクターブ下降。4小節目からは最大値の半分だけ上げているので、半音6個分上のピッチであるF♯3で鳴ります

 例えば、ピッチ・ベンド・カーブを最大値まで上げれば、ベンド幅で設定した音程の分だけピッチが上がります。逆に最小値まで下げると、ベンド幅の音程の分だけピッチが下がります。最大値の半分にしたときは……もうお分かりですね? ベンド幅の半分の音程だけ、ピッチが上がるのです。

生演奏をヒントに設定するとよい

 題材曲でピッチ・ベンドを用いた一例はシンセ・ベース。まずは、4分音符のノートを下げて、グリッサンドのように聴かせています。ピッチ・ベンドをかける前(♪7-1)とかけた後(♪7-2)を聴き比べてみてください。ポイントは、ベンド幅を36(3オクターブ)という大きな数値にしたこと。約16分音符の短い区間で一気にピッチを下げているので、そのくらいのベンド幅にしておいた方がグリッサンドの感じが出やすいと思ったからです

“ドゥ~ン”というグリッサンドをピッチ・ベンドで表現。約16分音符という短い区間で一気に下げているため、グリッサンド感が伝わりやすいようベンド幅は36(3オクターブ)という大きな値にし、3オクターブ下げています

“ドゥ~ン”というグリッサンドをピッチ・ベンドで表現。約16分音符という短い区間で一気に下げているため、グリッサンド感が伝わりやすいようベンド幅は36(3オクターブ)という大きな値にし、3オクターブ下げています

 

 4分音符のノートを小刻みにピッチ・ベンドさせている箇所もあります。フレーズ終盤で“ビヨビヨビヨビヨ”と鳴っているところです(♪7-3)。ベーシストが指を小刻みに動かしてピッチを揺らすような奏法がありますよね? それをイメージして設定してみました。やはり生演奏が打ち込みのヒントになることって、あるものですね!

ベーシストが指を小刻みに動かしてピッチを揺らす奏法(ドゥウゥゥゥン……というやつですね!)をイメージし、4分音符の音を小刻みにピッチ・ベンドさせました

ベーシストが指を小刻みに動かしてピッチを揺らす奏法(ドゥウゥゥゥン……というやつですね!)をイメージし、4分音符の音を小刻みにピッチ・ベンドさせました

 

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おおくぼけい

おおくぼけい
【Profile】アーバンギャルドのキーボーディストで、作編曲家としても活動。頭脳警察や戸川純、大槻ケンヂらの音楽にも携わり、映画や演劇のための作編曲も手掛ける。アーバンギャルドは、2023年1月25日にユニバーサルから『URBANGARDE CLASICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト~』をリリース。3月31日には、中野サンプラザホールにてライブ『15周年記念公演 アーバンギャルドのディストピア2023 SOTSUGYO SHIKI』を行う。

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