跳ねたノリはどうやって作る? ~スウィング機能を試してみよう

跳ねたノリはどうやって作る? ~スウィング機能を試してみよう

豊かな音楽表現を可能にするピアノロール。その活用術について、アーバンギャルドのキーボーディストで作編曲家の、おおくぼけい氏が解説します。本稿では、跳ねるようなグルーブ作りをフィーチャー。リズム隊に躍動感を与える方法を見ていきます。

基本はプリセットの設定を使うだけ

 クオンタイズと関連する機能に“スウィング”があります(DAWによってはシャッフルとも呼ばれます)。この機能を使えば、跳ねた感じのノリを簡単に作ることができます。

 試しに、題材曲のドラムとベースにスウィングを使ってみましょう。元のノリ(♪5-1)に比べて、跳ねた感じになっているのが分かりますね(♪5-2)

上の画面は題材曲の元のドラム・パターンで、下はLogic Proのスウィング・プリセット“1/16 Swing C”をかけたもの。ポイントは、16分裏に打ち込んだノートが後ろに動いていることで(青枠)、こうしてノートが動くことで跳ねたノリが生まれます。ちなみに、お気づきの方もいるでしょうが、元々あえてジャストに打ち込んでいなかったノート(例えば赤枠で囲んだ表拍のスネア)も動いています。これは“スウィングしたグリッド”にクオンタイズされたためで、詳しくは次の項目で解説します

上の画面は題材曲の元のドラム・パターンで、下はLogic Proのスウィング・プリセット“1/16 Swing C”をかけたもの。ポイントは、16分裏に打ち込んだノートが後ろに動いていることで(青枠)、こうしてノートが動くことで跳ねたノリが生まれます。ちなみに、お気づきの方もいるでしょうが、元々あえてジャストに打ち込んでいなかったノート(例えば赤枠で囲んだ表拍のスネア)も動いています。これは“スウィングしたグリッド”にクオンタイズされたためで、詳しくは次の項目で解説します

 Logic Proにはさまざまなスウィングの設定がプリセットされていて、跳ねたノリにしたいリージョンまたはノートを選択した後、プリセットを選ぶだけでOKです。先述のドラムとベースには“1/16 Swing C”というプリセットを使っています。

Logic Proには、16分音符系と8分音符系のさまざまなスウィングの設定がプリセットされています

Logic Proには、16分音符系と8分音符系のさまざまなスウィングの設定がプリセットされています

スウィングの仕組みを知る

 1/16 Swing C は“スウィングした16分音符グリッド”を意味しており、ジャストの16分音符グリッドに比べて、16分裏のタイミングが41tick後ろにズレています(Logic Proでは4分音符=960tick)。つまり、タイミングの揺れがあるグリッドにクオンタイズさせることで、跳ねたノリにしているわけですね

上の画面は、題材曲とは別に打ち込んだドラム。これに1/16 Swing Cをかけたのが下の画面で、16分裏のノートがジャストから少しだけ後ろに動いています(青枠)。調べたら41tick後ろに動いていました。1/16 Swing Cの正体は、“表拍と8分裏がジャストで、16分裏がジャストより41tick後ろになったグリッド”にクオンタイズする機能です。なので、表拍や8分裏にジャストで打ち込まなかったノートがある場合、それらまでクオンタイズされます(赤枠)。特定のノートをスウィングさせたい場合は、それだけを選択してから使いましょう

上の画面は、題材曲とは別に打ち込んだドラム。これに1/16 Swing Cをかけたのが下の画面で、16分裏のノートがジャストから少しだけ後ろに動いています(青枠)。調べたら41tick後ろに動いていました。1/16 Swing Cの正体は、“表拍と8分裏がジャストで、16分裏がジャストより41tick後ろになったグリッド”にクオンタイズする機能です。なので、表拍や8分裏にジャストで打ち込まなかったノートがある場合、それらまでクオンタイズされます(赤枠)。特定のノートをスウィングさせたい場合は、それだけを選択してから使いましょう

 末尾の“C”はスウィングの度合い(跳ね度合い)で、Logic ProにはA~Fの6種類がプリセットされています。Aはスウィングなしの設定ですが、Fでは16分裏が101tick後ろにズレて、強烈に跳ねたノリになります。どのくらいスウィングさせるかは、曲に応じて設定してみてください。

“ノリの噛み合わせ”に注意

 Logic Proのスウィング・プリセットには、8分音符系のグリッドを使ったものもあります。試しに“1/8 Swing F”というプリセットをドラムに使ってみましょう。これは8分裏が201tick後ろにズレる設定で、16分音符系のスウィングとは異なる跳ね方になります(♪5-3)

上の画面は題材曲の元のドラム・パターンで、下は“1/8 Swing F”をかけたもの。このプリセットは8分音符系のスウィング設定で、8分裏のノートがジャストより201tick後ろになります(青枠)。表拍や16分裏はジャストに設定されているので、その位置にグリッドから外したノートがある場合は、ジャストにクオンタイズされます

上の画面は題材曲の元のドラム・パターンで、下は“1/8 Swing F”をかけたもの。このプリセットは8分音符系のスウィング設定で、8分裏のノートがジャストより201tick後ろになります(青枠)。表拍や16分裏はジャストに設定されているので、その位置にグリッドから外したノートがある場合は、ジャストにクオンタイズされます

 曲によっては、ドラムだけをスウィングさせると、ほかのパートのノリと噛み合わなくなることがあります。そのため、ほかも同様にスウィングさせるわけですが、設定次第では曲そのものが変化して聴こえるので、良いあんばいを探りながら使ってみましょう

 

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※MIDI素材は、トラックのスタンダードMIDIを書き出したものです

 

おおくぼけい

おおくぼけい
【Profile】アーバンギャルドのキーボーディストで、作編曲家としても活動。頭脳警察や戸川純、大槻ケンヂらの音楽にも携わり、映画や演劇のための作編曲も手掛ける。アーバンギャルドは、2023年1月25日にユニバーサルから『URBANGARDE CLASICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト~』をリリース。3月31日には、中野サンプラザホールにてライブ『15周年記念公演 アーバンギャルドのディストピア2023 SOTSUGYO SHIKI』を行う。

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