豊かな音楽表現を可能にするピアノロール。その活用術について、アーバンギャルドのキーボーディストで作編曲家の、おおくぼけい氏が解説します。本稿では、跳ねるようなグルーブ作りをフィーチャー。リズム隊に躍動感を与える方法を見ていきます。
基本はプリセットの設定を使うだけ
クオンタイズと関連する機能に“スウィング”があります(DAWによってはシャッフルとも呼ばれます)。この機能を使えば、跳ねた感じのノリを簡単に作ることができます。
試しに、題材曲のドラムとベースにスウィングを使ってみましょう。元のノリ(♪5-1)に比べて、跳ねた感じになっているのが分かりますね❶(♪5-2)。
Logic Proにはさまざまなスウィングの設定がプリセットされていて、跳ねたノリにしたいリージョンまたはノートを選択した後、プリセットを選ぶだけでOKです❷。先述のドラムとベースには“1/16 Swing C”というプリセットを使っています。
スウィングの仕組みを知る
1/16 Swing C は“スウィングした16分音符グリッド”を意味しており、ジャストの16分音符グリッドに比べて、16分裏のタイミングが41tick後ろにズレています❸(Logic Proでは4分音符=960tick)。つまり、タイミングの揺れがあるグリッドにクオンタイズさせることで、跳ねたノリにしているわけですね。
末尾の“C”はスウィングの度合い(跳ね度合い)で、Logic ProにはA~Fの6種類がプリセットされています。Aはスウィングなしの設定ですが、Fでは16分裏が101tick後ろにズレて、強烈に跳ねたノリになります。どのくらいスウィングさせるかは、曲に応じて設定してみてください。
“ノリの噛み合わせ”に注意
Logic Proのスウィング・プリセットには、8分音符系のグリッドを使ったものもあります。試しに“1/8 Swing F”というプリセットをドラムに使ってみましょう。これは8分裏が201tick後ろにズレる設定で、16分音符系のスウィングとは異なる跳ね方になります❹(♪5-3)。
曲によっては、ドラムだけをスウィングさせると、ほかのパートのノリと噛み合わなくなることがあります。そのため、ほかも同様にスウィングさせるわけですが、設定次第では曲そのものが変化して聴こえるので、良いあんばいを探りながら使ってみましょう。
◎題材曲のMIDI素材をダウンロード!
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※MIDI素材は、トラックのスタンダードMIDIを書き出したものです
おおくぼけい
【Profile】アーバンギャルドのキーボーディストで、作編曲家としても活動。頭脳警察や戸川純、大槻ケンヂらの音楽にも携わり、映画や演劇のための作編曲も手掛ける。アーバンギャルドは、2023年1月25日にユニバーサルから『URBANGARDE CLASICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト~』をリリース。3月31日には、中野サンプラザホールにてライブ『15周年記念公演 アーバンギャルドのディストピア2023 SOTSUGYO SHIKI』を行う。