WENDY インタビュー 〜メジャーデビューアルバム『Don’t waste my YOUTH』の制作を語る

WENDY インタビュー 〜メジャーデビューアルバム『Don’t waste my YOUTH』の制作を語る

ライブで演奏するのと同じように4人で息を合わせてレコーディングしています

東京・世田谷で結成されたバンド、WENDY。2003~2004年生まれという、Skye McKenzie(vo、g/写真右)、Sena(ds/写真右から2番目)、Paul(g/写真左から2番目)、Johnny Vincent(b/写真左)の若き4人が奏でる音楽は、ロックの魅力がぎっしりと詰まったパワフルなバンド・サウンドだ。8月にリリースしたメジャー・デビュー・アルバム『Don’t waste my YOUTH』では、レコーディング/ミックス/マスタリング・エンジニアを、ジョン・バティステ『ウィー・アー』で昨年のグラミー最優秀アルバム賞を受賞したマーク・ホイットモア氏が担当。今回編集部は、ビクタースタジオにてレコーディングの模様を撮影するとともに、それぞれにインタビューを実施。まずはメンバー4人に、バンドの成り立ちや曲作り、レコーディングについて話を聞いた。

WENDYらしさとなる“強弱”

——まずはバンド結成のきっかけを伺えますか?

Skye Senaとは同い年、JohnnyとPaulは1つ年下で、年は違うけど地元が同じで、お互いやんちゃしてるグループにいて。ある日ちょっとしたもめ事があって、大ごとになる前に話をしようと会ったときに、JohnnyがKISSのTシャツを着てて。これが気になっちゃって、“KISS好きなの?”って聞いたら、“好きです”と。それから話が広がってけんかもなくなって、友達として仲良くなった。数カ月後、あることをきっかけに更生しよう、じゃあバンドをやろうとなったのが2020年10月で、今に至ります。

——すごくいい話です! KISSがお好きだったんですか?

Johnny 好きでした。中学生のときに買った東京ドーム公演のTシャツがお気に入りだったんで、一張羅として着てったら、結果的に功を奏しました。

写真左から、Paul(g)、Skye McKenzie(vo、g)、Sena(ds)、Johnny Vincent(b)

写真左から、Paul(g)、Skye McKenzie(vo、g)、Sena(ds)、Johnny Vincent(b)

——皆さんの好きな音楽は?

Paul 基本的にはロックだけど、意外とね。

Skye 俺はダンスをやってたから、プリンスやマイケル・ジャクソン、ジョージ・マイケルとかのポップスも好きで。Senaはもうちょっとモダンな、ポップ・パンクみたいなものが好き。Paulはクラシックなブルース、Johnnyはアート・ロックも好きで。結構バラバラなんですよ。

——楽器は弾いていたのでしょうか?

Paul 自分は小学5年生くらいからギターを弾いていて、ほかのメンバーはかじっていたくらいで。

Skye 真剣に取り組んだのはバンドを結成してからです。Johnnyはコードとかも分からずに最初はやっていたけど、今ではメンバーの誰よりもコードを知ってる。逆にPaulと俺の方が何も知らないです。

SkyeのギターはFENDER Stratocasterと奥にはTelecasterも用意。レコーディングではホイットモア氏の助言でStratocasterを使うことが多かったそう。ライブでは弾きやすさからTelecasterを用いている

SkyeのギターはFENDER Stratocasterと奥にはTelecasterも用意。レコーディングではホイットモア氏の助言でStratocasterを使うことが多かったそう。ライブでは弾きやすさからTelecasterを用いている

各ギター/ベースのキャビネットはブースに設置し、録音はドアを半開きにして行われた。SkyeのギターのキャビネットはMARSHALL 1960Bで、Paulの私物だ。オンマイクがBEYERDYNAMIC M88、オフマイクがM160

各ギター/ベースのキャビネットはブースに設置し、録音はドアを半開きにして行われた。SkyeのギターのキャビネットはMARSHALL 1960Bで、Paulの私物だ。オンマイクがBEYERDYNAMIC M88、オフマイクがM160

Skyeの足元には、オーバードライブのMAD PROFESSOR Sky Blueを準備。ライブでは常時オンにしているとのこと

Skyeの足元には、オーバードライブのMAD PROFESSOR Sky Blueを準備。ライブでは常時オンにしているとのこと

Skyeのボーカル・マイク、BEYERDYNAMIC M600

Skyeのボーカル・マイク、BEYERDYNAMIC M600

Skyeのギターのヘッド・アンプとして使用したEVH 5150III

Skyeのギターのヘッド・アンプとして使用したEVH 5150III

——音楽が好きだから必然的にバンドになった?

Paul それは間違いない。俺は音楽で飯を食っていくって、中学生の頃から決めていたんです。

——作曲者のクレジットを見るとSkyeさんのお名前がほとんどの曲で記載されていますが、Skyeさんが中心となって曲作りを行っているのでしょうか?

Skye そうですね。英語ができるっていうのもあって。世界を目指していたので、最初から英語でやろうと考えていました。みんなのアイディアも取り入れていて、Johnnyが日本語で書いた歌詞を俺が英語にしたりとかもしています。アレンジはバンドでやるのが基本ですね。

——デモ作りなどは行っていますか?

Paul デモよりはセッションから作ることが多いです。例えばイントロとして作ってきたフレーズを持ってきてその場で合わせる。そこにアレンジを加えていくような感じです。

Paulのギター。レフティ仕様で、右からGIBSON Historic Collection 1958 Les Paul、RICKENBACKER 330、FENDER Stratocaster、OVATIONのエレクトリック・アコースティックギター。Les Paulは父親からもらったもので、Paulは「音が最高で、甘いロック・サウンドがあってバランスも良い。一生使い続けます」と語る。330は「Chasing a song」のリフなどで使用

Paulのギター。レフティ仕様で、右からGIBSON Historic Collection 1958 Les Paul、RICKENBACKER 330、FENDER Stratocaster、OVATIONのエレクトリック・アコースティックギター。Les Paulは父親からもらったもので、Paulは「音が最高で、甘いロック・サウンドがあってバランスも良い。一生使い続けます」と語る。330は「Chasing a song」のリフなどで使用

Paulのエフェクター

Paulのエフェクター。ボード上には左上から時計回りに、LIMETONE AUDIO JCB-2S(ライン・セレクター)、JEXT TELEZ White Pedal V2(オーバードライブ/ファズ)、CUSTOM AUDIO JAPAN AC/DC Station Ver.2(パワー・サプライ)、HUMAN GEAR Essence(オーバードライブ)、KLON Centaur(オーバードライブ)、T.C. ELECTRONIC SCF Stereo Chorus + Pitch Modulator & Flanger(コーラスなど)、Flashback(ディレイ/ルーパー)を用意。VOX V847(ワウ・ペダル)も含め、White Pedal V2以外はライブでも同じセットを使用する。録音時は、直列ではなくそれぞれを単体で用いることも多かったそうで、Paulいわく「一つずつ使うか、直のときもありました、何もつなげてない状態が一番良い音ですからね」

ギターのヘッド・アンプMARSHALL JCM800はPaulの私物

ギターのヘッド・アンプMARSHALL JCM800はPaulの私物

PaulのギターのキャビネットのMARSHALL 1935Bはベース用キャビネットで、元々ベースに用意していたが、ホイットモア氏の指示で変更したとのこと。こちらもオンマイクがBEYERDYNAMIC M 88 TG、オフマイクがM160

PaulのギターのキャビネットのMARSHALL 1935Bはベース用キャビネットで、元々ベースに用意していたが、ホイットモア氏の指示で変更したとのこと。こちらもオンマイクがBEYERDYNAMIC M 88 TG、オフマイクがM160

——収録曲の中で、特に「Can’t stop being BAD」が1つのリフで最後まで突き進んでいて、すごくロックを感じます。

Skye 「Can’t stop~」はスムーズにできたね。

Paul そうだね。自信作です。

——リフ1つだと、パートの抜き差しなどの展開作りが必要かとも思いますが、その点はどのように?

Skye 話し合いながらですね。個人的に思う“WENDYの曲あるある”は、1曲の中で、ドラムとベースだけ、ドラムと歌だけとか、落とすときは本当に落とす。「Rock n Roll is Back」はドラムと歌で始まっていたり、「Can’t stop~」は、途中のドラムとベースだけのファンキーな部分とか、そこは結構WENDYっぽくできているかなと。展開として強弱を付けるというのは意識しています。

——1曲ができるまでの時間は?

Skye スムーズなときは、1~2時間で作ります。

Paul 「Can’t Stop~」はめっちゃ速かったよね。1回のスタジオで、大体全部完成しました。

Skye 元々「Can’t stop being BAD」っていう題名だけ浮かんでたんです。それをずっと使いたかったけど、合うような曲がなくて。AC/DCを聴いていたときに、シンプルな曲が欲しいと思って、ちょうどPaulが持ってきたフレーズを聴いて、“これだ!”となって出来上がっていきました。

マークとでしかできなかったデビュー作

——今作では、レコーディングからミックス、マスタリングまでエンジニアのマーク・ホイットモア氏が行っています。デビュー・アルバムを手掛けるのがグラミー受賞エンジニアということに、プレッシャーを感じませんでしたか?

Skye マークがすごく優しくて、気軽に友達と話してる感覚だったから、本当に楽しかったです。マークのいる間はレコーディングづくしで、かなり忙しかったんですけど、終わったら何か空っぽになっちゃって切り替えるのが難しかった。音の録り方や、曲に臨むときのメンタルから何からすべて、やっぱり普通のレコーディングとは違う。そんなにレコーディングしてきたわけじゃないですけど、最初のアルバムからこういうふうにできたのはすごくラッキーでした。

——確かにドラムの足元にL/Rでマイクをセットしたりと独特なマイキングもありました。出来上がったドラムの音を聴いてSenaさんも違いを感じましたか?

Sena キツい部分がなくしっかりなじんでいる感じで、めっちゃ良い音でした。今まではブースやパーテーションで区切ったりとか、ドラムの録音をいつも1人でやっていたので、今回、みんなと目を合わせてできたのが楽しかったです。

SPAUNのドラム・セットはSenaによるセレクトで、「重さを感じました」と語る。オーバーヘッドにNEUMANN U 47を1本で、バス・ドラムの高さにCOLES 4038をL/Rに設置している

SPAUNのドラム・セットはSenaによるセレクトで、「重さを感じました」と語る。オーバーヘッドにNEUMANN U 47を1本で、バス・ドラムの高さにCOLES 4038をL/Rに設置している

——4人で“せーの”で録るというのは、マークさんも大事にされていたところ?

Skye そうですね。マークも、“ちゃんとライブができるバンドとやりたい。ロック・バンドと言えばライブだし、それが一番大事だと思う”と言っていて。俺らも、じゃあライブと同じことすればいいなと。ライブの下積みだけはいっちょ前にやってきてるんで、そこはいつも通りという感じです。

Paul ギター・ブースにアンプのキャビネットを置いて、ドアを開けてヘッドフォンなしで録ってたんですけど、みんなで目を合わせてできるので安心感がありました。

Johnny ヘッドフォンしなくても音が聴こえる。めっちゃ演奏しやすかったです。

Johnnyの機材回り。ベースは右からFENDER Jazz Bass、RICKENBACKER 4003、GIBSON EB-3。メインはJazz Bassと4003とのこと。ヘッド・アンプのORANGE AD200B MK3はJohnny自身のセレクトで用意したもので、キャビネットもORANGEのOBC410を使用。コンパクト・エフェクターも見えるが、ひずみはほぼアンプでかけたそう。またホイットモア氏のセレクトとして、DIのAVALON DESIGN U5も使われている

Johnnyの機材回り。ベースは右からFENDER Jazz Bass、RICKENBACKER 4003、GIBSON EB-3。メインはJazz Bassと4003とのこと。ヘッド・アンプのORANGE AD200B MK3はJohnny自身のセレクトで用意したもので、キャビネットもORANGEのOBC410を使用。コンパクト・エフェクターも見えるが、ひずみはほぼアンプでかけたそう。またホイットモア氏のセレクトとして、DIのAVALON DESIGN U5も使われている

——出来上がった作品を聴いてみていかがでしたか?

Paul 興奮しましたよ。ついに出来上がったなと。

Skye かなりリスキーだと思うんですよね。“せーの”でやったものをメジャー・デビュー・アルバムとして出すって。それはやっぱりマークとしかできないことだと思います。

Sena うれしいしかないですね。アルバムを出したかったし、ぜひ聴いてほしい。ドラムの音がめっちゃいいっす。

Johnny 完成度も高いし、聴いていて楽しくて、盛り上がる作品になっています。

——今後の野望はありますか?

Skye シングルやEPもリリースしつつ、2枚目はまた違う感じに仕上げられればなと。アルバムごとにアーティストの姿が変わると思っているんですが、今回は、“これがWENDYですよ”っていう紹介です。次は俺らがどういう立ち位置にいるのか分からないけど、それまでライブをやったり、海外にも行ったりして、頑張りたいですね。


続いては、ミックス、マスタリングを手掛けたマーク・ホイットモア氏にインタビュー!

Release

『Don’t waste my YOUTH』
WENDY
ビクターエンタテインメント

WENDY『Don’t waste my YOUTH』初回盤(CD+DVD)VIZL-2209
WENDY『Don’t waste my YOUTH』通常盤(CD)VICL-65870
【左】初回盤(CD+DVD)VIZL-2209
※初回盤のDVDには、MVと『WENDY RECORDING MAKING with Marc Whitmore』を収録
【右】通常盤(CD)VICL-65870

Musician:Skye McKenzie(vo、g)、Sena(ds)、Johnny Vincent(b)、Paul(g)、Marc Whitmore(g、org、他)
Producer:マーク・ホイットモア
Engineer:マーク・ホイットモア
Studio:ビクター

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