TM NETWORK『DEVOTION』を小室哲哉が全曲解説

TM NETWORK『DEVOTION』を小室哲哉が全曲解説!

TM NETWORKの25年ぶりとなる最新作『DEVOTION』の全11曲に加えて、『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』のオープニングテーマ「Whatever Comes」を小室哲哉が解説。どのように制作が行われたのか、貴重な制作秘話をお届けする。

1. DEVOTION

  • words,music,arrangement: Tetsuya Komuro

 自分の傾向として、最近は日本語を使うことが多いのですが、サビの歌詞で“最善を僕らは尽くす”というのも今まではなかなか使わなかった手法でした。英語で逃げる、みたいなことが多かったので。インダストリアルなイメージを持っていたので、油くさいにおいを感じるような、あまりさわやかにしたくないなと。あとは全部を一人称では歌っていないんです。英語の部分と日本語とで、会話をしているような対比も意識している。

2. RESISTANCE [TK Remix]

  • words: Mitsuko Komuro music,arrangement: Tetsuya Komuro

 例に挙げた「STILL LOVE HER (失われた風景)」同様に、そこまでガラッと雰囲気を変えられる感じではなかったので、原曲を踏襲しながらのリミックスになりました。実はいまだに納得がいっていない部分があって、一般的にサビとされているセクション。本当はそこでダ・カーポさせたいんですよね。小室みつ子さんとの分業で作っていて、歌詞の流れ的にハマっているので、なかなか変更は難しいですけどね。

3. WE LOVE THE EARTH[TK Remix]

  • words,music,arrangement: Tetsuya Komuro

 コロナ禍にライブで披露するということもあり、イントロ部分をマイナー調にして、雰囲気をガラッと変えてみました。原曲を作った当時はまだ地球が今みたいな情勢になるとは全然想像できていませんでしたが、それを今回はサウンドで反映させました。地球というテーマは、オリジナルを作るときにCMのタイアップで依頼があったので、そういう意味では作りやすかったと記憶しています。

4. KISS YOU[TK Remix]

  • words: Mitsuko Komuro music,arrangement: Tetsuya Komuro

 イントロのオケヒットのパートは、実はあのパートから新しい曲を作ろうかと思っていたんです。でも「KISS YOU」をライブ・アレンジする際に融合できるなと。ダフト・パンクとファレル・ウィリアムスが一緒に「ゲット・ラッキー」を作ったときにあんなふうにできたらいいなと思ったことがあったんですけど、あのカッティング・ギターとC+C ミュージック・ファクトリー「エヴリバディ・ダンス・ナウ!」が混ざった感じを意識しています。

5. TIME TO COUNT DOWN[TK Remix]

  • words: Mitsuko Komuro music,arrangement: Tetsuya Komuro

 昨年のぴあアリーナMM公演で演奏したバージョンです。イントロのオーケストラ・アレンジについては、自分のソロの方でもオーケストラ公演をやる予定でしたので、そのプレゼンテーションとしても作ってみました。このリミックスは原曲よりもテンポはかなり落としていますし、ライブでも世界の紛争などさまざまな映像とリンクさせていたので、全く違う意味合いの曲となっていると思います。

6. How Crash?

  • words,music,arrangement: Tetsuya Komuro

 こちらも「DEVOTION」と同様に、“How Crash?”という言葉を選ぶのが重要でしたね。この曲のトラックは完全に言葉を意識せずに作っていたので、トラックができてからどうやって言葉をハメようか?というのは難しかったんですけど、周りの意見としては、“こうハマるとは思わなかった”という感じでした。でもそうやって言葉とメロディがうまく合わさるというのは一番楽しい部分かもしれないですね。

7. 君の空を見ている

  • words: Mitsuko Komuro music: Naoto Kine arrangement: Tetsuya Komuro

 レコーディングされたウツの歌を聴いたら、木根さんの曲をずっと昔から歌っているので、もう分かっているんだなと思いました。どんなメロディの動きをするとか、コードとか。木根さんの曲で苦労している場面はほとんど見たことがないですね。ファルセットの多い曲でも難なくこなしていますし。木根さんの曲は実家というか地元というか、どこかホッとする部分があるんじゃないでしょうか。僕の曲はとにかく難しいとは言われるんですけど(笑)。

8. Please Heal The World[Studio Mix]

  • music,arrangement: Tetsuya Komuro

 去年のツアーのオープニング曲ということでNFTでの販売もしたのですが、今回用にスタジオでミックスし直しました。楽曲としては、クラブでDJに流してもらえるようなイメージもあったんです。今は洋楽じゃないとクラブで曲を流せないということもなく、邦楽もみんなどんどん使っていますよね。この夏以降、どんどんクラブ・イベントも盛んになっていくと思うので、そんなときに使ってもらえたらうれしいですね。

9. End Theme Of How Do You Crash It ?[Studio Mix]

  • music,arrangement: Tetsuya Komuro

 配信ライブ『How Do You Crash It?』の際に作っていた曲で、昨年のツアー『FANKS intelligence Days』では、僕のソロ・コーナーで演奏しました。最初はライブ用として作った音源で、実際のステージでは毎回違う演奏をしていたので、それをスタジオ・ミックスとして再構築した形です。サウンドとしては、細かい部分で最初に作った当時からいろいろと変えている部分もありますよ。

10. intelligence Days[Studio Mix]

  • music,arrangement: Tetsuya Komuro

 こちらも昨年のツアー『FANKS intelligence Days』で、僕らがステージを後にする際のエンディング・テーマとして作った曲です。この“intelligence Days”という言葉は、今後のTM NETWORKでもしばらく使っていこうと考えているので、その言葉のテーマ曲をしっかり作っておこうと思ったんです。

11. TIMEMACHINE(Bonus Track)

  • words: Tetsuya Komuro music: Naoto Kine arrangement: Tetsuya Komuro

 作ったのは1980年代の初期で、歌詞は、僕がSF小説の『夏への扉』(ロバート・A.ハインライン著)にインスパイアされて書きました。山下達郎さんもこの小説をモチーフにした「夏への扉」という曲がありますよね。この曲を収録すると、“TMが終わる”というイメージを持っている人がいるかもしれませんが、そんなことはなく、僕ら3人はサラッとレコーディングに臨むことができた曲ですね。

Additional Comment for「Whatever Comes」
『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』オープニングテーマ

 冒頭ギター・サウンドが飛び込んで来るんですけど、僕たちでも弾けるくらいのフレーズで作っているんです。ぜひ楽器を引っ張り出して弾いてもらいたいという思いもありました。デモはガイド・ボーカルまで全部一人で作ってスタッフに聴いてもらったんですけど、一発OKという感じでしたね。この曲ができて、「DEVOTION」につながっていったので、対になる2曲だと思います。40周年に向けて、勢いづけになった曲ですね。


【インタビュー】小室哲哉が語るTM NETWORK『DEVOTION』の制作過程

【インタビュー】小室哲哉の制作拠点「TETSUTA KOMURO STUDIO」に潜入!

Release

『DEVOTION』
TM NETWORK
ソニー・ミュージックレーベルズ/ALDELIGHT
初回生産限定盤:MHCL-30834~5、通常盤:MHCL-30836

Musician:宇都宮隆(vo)、小室哲哉(k、g、cho)、木根尚登(g、cho)、溝口和彦(prog)、赤堀眞之(prog、g、b)、松尾和博(g)、佐々木詩織(cho)、SAK.(cho)、会原実希(cho)、大越王起也(g)、iBerry(g)
Producer:小室哲哉
Engineer:佐藤雅彦(mixmix)、奥田裕亮(Sony Music Studios Tokyo)、デイヴ・フォード、佐竹央行、伊東俊郎、溝口和彦、赤堀眞之
Studio:Pavillions、Basement、HeartBeat、MECH、Sony Music Studios Tokyo

関連記事