HIRORONが語る〜SKY-HI『THE DEBUT』のレコーディング/ライブのDJ&マニピュレート

HIRORONが語る〜SKY-HI『THE DEBUT』のレコーディング/ライブのDJ&マニピュレート

『THE DEBUT』の収録曲「Dramatic」や「Fly Without Wings」のレコーディングを手掛け、SKY-HIやBMSG所属アーティストのライブなどでDJ兼マニピュレートを担当するHIRORON氏。ここでは彼のプライベート・スタジオに訪問し、制作やライブについて話を聞いていく。

遠征先で録音/エディットすることも多い

レコーディングはどこのスタジオで行われたのですか?

HIRORON 「Fly Without Wings」は今年の5月にMSR labの5階で、「Dramatic」は、『超・八面六臂』のツアーで一足先に披露するために元々BMSGのスタジオでプリプロを録っていたのですが、本チャン録りはmagical completer studioで行いました。

マイクやマイクプリは何を使われたのでしょうか?

HIRORON 「Fly Without Wings」は、マイクはSOUNDELUX USA U99、マイクプリはNEVE 1081。「Dramatic」は、マイクはNEUMANN U67で、マイクプリはNEVE 1073です。

マイクを使い分けた理由は?

HIRORON 「Fly Without Wings」は、日高(SKY-HI)が“U99が好き”って言っていたので使いました。でもU67の1枚皮がむけて音が抜けてくる感じが合う気がして、「Dramatic」はそれを使いました。彼は声量があって声が抜けてくるんですけど、マイクによってはピークが出ることもあるから、その辺りは慎重に選ぶかも。発声をすごく研究して声を出しているから、トランジェントがしっかり出てくるんですよね。

コンプレッサーなどもかけて録音するのですか?

HIRORON ボーカル・コンプは実機を使うことが多いですね。できるだけコンプレッションされて仕上がった状態で録っておきたいんです。「Fly Without Wings」は、TUBE-TECH CL 1B、「Dramatic」は、CL 1Bの後段で、UREI 1176をレシオを8:1にしてかけています。歌モノは、1176でピークだけを止めてからスロー・アタックのコンプレッサーでなじませることもあるのですが、SKY-HIみたいに勢いのあるラップは、CL 1Bの後に1176をかけることが多いかな。プラグイン・コンプはEMPIRICAL LABS Arousor Compressorをよく使っています。

「Fly Without Wings」のレコーディングで使われたプラグイン。WAVES CLA Effectsはすぐに音作りができるので便利とのこと。ANTARES Auto-Tuneは、レコーディングの際に試しにかけてみたら良かったので、最後まで生きていたそうだ

「Fly Without Wings」のレコーディングで使われたプラグイン。WAVES CLA Effectsはすぐに音作りができるので便利とのこと。ANTARES Auto-Tuneは、レコーディングの際に試しにかけてみたら良かったので、最後まで生きていたそうだ

「Dramatic」のレコーディングで使われたプラグイン。左のディストーションPLUGIN ALLIANCE Brainworx Bx_Black dist2は、録った段階でセンドで使用し、声のひずんだイメージを作ったという。AAX DSPで使用できるので、遅延が少なくて使いやすいそうだ。右はEMPIRICAL LABS Arousor Compressor

「Dramatic」のレコーディングで使われたプラグイン。左のディストーションPLUGIN ALLIANCE Brainworx Bx_Black dist2は、録った段階でセンドで使用し、声のひずんだイメージを作ったという。AAX DSPで使用できるので、遅延が少なくて使いやすいそうだ。右はEMPIRICAL LABS Arousor Compressor

レコーディングのチェインは、歌いやすさも考えないといけないと思うのですが、何を意識されているのですか?

HIRORON  AUXトラックに空間系のエフェクトを中心に何個かを立ち上げて、状況に応じてセンドで送っています。リバーブはAVID ReVibe IIで、ルーム系とリバーブ感が見えるプレート系の2種類を用意して、ルーム系は歌のリリースを少し伸ばしてあげるようなイメージで、プレート系は曲調に応じて足していきます。MCDSPのEC-300はディレイですが、ダブラー的な使い方もよくしていて、ボーカルにステレオ感を出したいときに使います。

レコーディングの際に使う空間系のプラグイン。左はディレイのMCDSP EC-300。右の2つはリバーブAVID ReVibe IIで、左はルーム系、右はプレート系になっている

レコーディングの際に使う空間系のプラグイン。左はディレイのMCDSP EC-300。右の2つはリバーブAVID ReVibe IIで、左はルーム系、右はプレート系になっている

エディットはこちらのATENE STUDIOで行うとのことですが、常設している機材にこだわりはありますか?

HIRORON  最近モニター・コントローラーをGRACE DESIGN M905に変えたところ、定位が見やすくなって、エディットに限らず作業をしやすくなりました。でも、エディット作業自体はここじゃなきゃできないというわけではないんです。ツアーの遠征先でレコーディングやエディットを頼まれることも多いので、ライブ用とは別で機材をいろいろ持ち歩いています。最近はUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin Xが最高ですね。今まではオーディオ・インターフェースに直接マイクをつなげるという発想はあまりなかったんだけど、UNISON機能でさまざまな音のキャラクターをすぐに呼び出せるのが面白くて、いろいろ試しています。

HIRORONのプライベート・スタジオ。写真左はボーカル・ブースで、右はライブなどで使用するDJのセット。「Dramatic」や「Fly Without Wings」のボーカル・エディットはここで行われた

HIRORONのプライベート・スタジオ。写真左はボーカル・ブースで、右はライブなどで使用するDJのセット。「Dramatic」や「Fly Without Wings」のボーカル・エディットはここで行われた

デスク周り。DAWはAVID Pro Toolsで、モニター・スピーカーはGENELEC 8340AとIK MULTIMEDIA iLoud Micro Monitorを使用。モニター・コントローラーは、GRACE DESIGN M905

デスク周り。DAWはAVID Pro Toolsで、モニター・スピーカーはGENELEC 8340AとIK MULTIMEDIA iLoud Micro Monitorを使用。モニター・コントローラーは、GRACE DESIGN M905

ラックにはオーディオ・インターフェースAVID Pro Tools | Carbon、RME Fireface UFX+、UNIVERSAL AUDIO Apollo Tw inなどを格納。ヘッドフォンは主にTAGO STUDIO T3-01を使用しており、DENON AH-D5200はスタジオを訪れた方に貸し出す用とのこと

ラックにはオーディオ・インターフェースAVID Pro Tools | Carbon、RME Fireface UFX+、UNIVERSAL AUDIO Apollo Tw inなどを格納。ヘッドフォンは主にTAGO STUDIO T3-01を使用しており、DENON AH-D5200はスタジオを訪れた方に貸し出す用とのこと

アウトボード類。上から3段目のシャーシ内に収められているマイクプリAPI 512CやコンプレッサーELYSIA Mpressor 500は、移動中にレコーディングをするために持ち歩いていたが、最近はUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin Xに大きな可能性を感じているとのこと

アウトボード類。上から3段目のシャーシ内に収められているマイクプリAPI 512CやコンプレッサーELYSIA Mpressor 500は、移動中にレコーディングをするために持ち歩いていたが、最近はUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin Xに大きな可能性を感じているとのこと

「Fly Without Wings」のボーカル録りに使われたSOUNDELUX USA U99

「Fly Without Wings」のボーカル録りに使われたSOUNDELUX USA U99

DJと同じ感覚でマニピュレートをする

HIRORONさんはSKY-HIさんのライブでDJ兼マニピュレートもされていますね。

HIRORON マニピュレートにはPRESONUS Studio Oneを使っています。再生ボタンを押したときにレイテンシーを感じずに音が出る感覚が、DJ機材に近くていいんです。一般的にマニピュレーターが入るライブは、カウントに合わせてバンドが一斉に走り出すと思うのですが、SKY-HIのライブは本人の身振り手振りに合わせてプレイバックしなきゃいけないことも多くて。全員、日高を凝視しているんですよ(笑)。

DJ兼マニピュレートにおいて、何が一番大変ですか?

HIRORON 準備とプレッシャーかな。日高のライブはシームレスに進んでいくので、基本的にライブ中はずっとプレイバックしている状態で。だから1台のパソコンでできるようなデータ作りはしているけど、何かあったときにすぐもう1台のバックアップに切り替えられるようにしています。それは機械的なトラブル予防の話だけではありません。例えばリハーサルで曲順、曲目などシーケンスに大きな変更を伝えられた場合、大本のシーケンスをその場で変えるよりはサブのパソコンをうまく使って、DJ的に曲をつないでいったほうが、対応が早いんです。シーケンスはバックアップも含めてRMEのオーディオ・インターフェース付属のソフトウェア・ミキサーTotalMix FX上に立ち上げていて、Snapshotsにさまざまなルーティングをプリセットしています。

最後にHIRORONさんがレコーディングやライブのお仕事で大切にされていることを教えて下さい。

HIRORON アーティストから出てくるアイディアをすぐ実現できるようにしておくことですかね。“こういうことをしてみたい”って思ったときに、一緒に考えられる人でありたいなと思っています。

SKY-HIのライブでも使用するDJセット。ターンテーブルTECHNICS SL-1200MK5×2とミキサーPIONEER DJ DJM-S9を設置。「左上のNATIVE INSTRUMENTS Maschine MK3は、サンプラーとしてSEや声モノ、最近日高(SKY-HI)が好きなオーケストラ・ヒットを出すことが多いですね」とHIRORON氏

SKY-HIのライブでも使用するDJセット。ターンテーブルTECHNICS SL-1200MK5×2とミキサーPIONEER DJ DJM-S9を設置。「左上のNATIVE INSTRUMENTS Maschine MK3は、サンプラーとしてSEや声モノ、最近日高(SKY-HI)が好きなオーケストラ・ヒットを出すことが多いですね」とHIRORON氏

12月11日、12日に豊洲PITで行われたSKY-HIのライブ『Round A Ground Special 2022』のDJ/マニピュレートのセット。ターンテーブルPIONEER DJ PLX-1000×2とミキサーDJM-900NXS、NATIVE INSTRUMENTS Maschine MK3のほか、左奥にはANTARES Auto-Tuneを搭載するボーカル・プロセッサー/マイクプリのTASCAM TA-1VPやUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin Xなどの姿が見える

12月11日、12日に豊洲PITで行われたSKY-HIのライブ『Round A Ground Special 2022』のDJ/マニピュレートのセット。ターンテーブルPIONEER DJ PLX-1000×2とミキサーDJM-900NXS、NATIVE INSTRUMENTS Maschine MK3のほか、左奥にはANTARES Auto-Tuneを搭載するボーカル・プロセッサー/マイクプリのTASCAM TA-1VPやUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin Xなどの姿が見える

Release

通常盤
通常盤(2DVDもしくはBlu-rayが付属)
初回生産限定盤(CD+2DVDもしくはBlu-ray+フォト・ブックを同梱)
左から通常盤、通常盤(2DVDもしくはBlu-rayが付属)、初回生産限定盤(CD+2DVDもしくはBlu-ray+フォト・ブックを同梱)

『THE DEBUT』
SKY-HI
B-ME:AVC1-63394/B~C、AVC1-63395/B、AVCD-63391/B~C、AVCD-63392/B、AVCD-63393
※2DVD/Blu-rayには、『SKY-HI HALL TOUR 2022 -八面六臂-』のライブ映像(2022年2月25日のLINE CUBE SHIBUYAおよび2022年9月1日の国際フォーラムA)、「JUST BREATHE feat. 3RACHA of Stray Kids」「Bare-Bare」「Fly Without Wings」「The Debut」のミュージック・ビデオを収録

Musician:SKY-HI(vo)、Aile The Shota(vo)、JUNON(vo)、LEO(vo)、3RACHA of Stray Kids(vo)、Novel Core(vo)、edhiii boy(vo)、Atsuki(tp)、Tocchi(tb)
Producer:Ryosuke “Dr.R” Sakai、SUNNY BOY、TRILLl DYNASTY、hokuto、UTA、KM、SOURCEKEY、☆Taku Takahashi、Chaki Zulu
Engineer:Ryosuke“Dr.R”Sakai、HIRORON、D.O.I.、SHIMI from BUZZER BEATS、Hideaki Jinbu、Tadashi Matsuda、Chaki Zulu
Studio:STUDIO726 TOKYO、magical completer studio、Daimonion Recordings、NEW WORLD STUDIO shibuya、prime sound studio form daikanyama、MSR lab、Husky Studio

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