『岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く』OST〜菊地成孔/新音楽制作工房が紡ぐ新時代の劇伴とは

“とにかくDAWをやる”という環境に身を置くと全員が超人化するんです

“とにかくDAWをやる”という環境に身を置くと全員が超人化するんです

原作・荒木飛呂彦、主演・高橋一生で一躍話題となったドラマ『岸辺露伴は動かない』。そしてその制作スタッフが再集結して挑んだ映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』。両作品の音楽を担当したのは、ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔(写真左前方)と、菊地が開講している私塾“ペンギン音楽大学”の生徒たちから生まれた新音楽制作工房の面々。菊地や彼らが作曲した楽曲をオーケストラでレコーディングしたもの、メンバーが制作したビート作品、さらには菊地を中心に行ったレコーディング・セッションによる楽曲など、さまざまな彩りを持つ楽曲の数々が収録されている。今回は菊地のほか、新音楽制作工房から主に『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の音楽を担った佐々木語(写真右)、丹羽武史(写真中央)、大野格(写真左後方)の3名にも登場してもらい、希代の傑作音楽をどのように制作したのか伺った。

ドラマ『岸辺露伴は動かない』

ドラマ『岸辺露伴は動かない』

ⒸNHK/P.I.C.S. ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 荒木飛呂彦の大人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品を原作とした実写ドラマ。人の心や記憶を読み解き、指示を書き込むことができる特殊能力、“ヘブンズ・ドアー”を持つ漫画家の岸辺露伴を高橋一生が、露伴の担当編集者の泉京香を飯豊まりえが演じている。NHKにて2020年から毎年末に放送され、最新作は2022年放送のシーズン3。Amazon Prime Videoにて全8話を配信中


映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

Ⓒ2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 2023年5月公開。日本、パリのルーヴル美術館、露伴の青年時代など、さまざまに舞台を行き交いながら、“この世で最も黒い絵”の謎に迫っていく。高橋一生、飯豊まりえのほか、木村文乃、長尾謙杜、安藤政信、美波といった豪華キャストが集結。9月からAmazon Prime Videoにて配信がスタートした

生徒たちの作品のクオリティが突如上がった

——2020年に放送が開始された『岸辺露伴は動かない』のシーズン1では、音楽が菊地さんの単独名義ですね。

菊地 最初は僕個人にオファーが来ました。渡辺一貴監督が、僕がやっているペペ・トルメント・アスカラールという楽団のファンであり、かつ作品世界に合っているというご判断から、ペペの新作としてくらいの感じで、作風も何もかもペペに寄せてお願いしますというオファーで始まったんです。

——ドラマの劇伴にというよりは、ペペ・トルメント・アスカラールに新作の依頼が来たというイメージですか?

菊地 そうですね。それからまだ音楽のついていない映像を見せていただいて、センスが良いなと。というのは、この作品にペペ・トルメント・アスカラールっていうオファーは間違ってないなという感じで、スムーズに始まりました。

——そして、2021年のシーズン2から新音楽制作工房がクレジットされています。

菊地 実のところシーズン1の段階で、新音楽制作工房が出来上がるのと、ドラマの制作が始まるのがほぼ同時でした。僕はペンギン音楽大学(ペン大)という私塾を開いていて、一番上のクラスが作品を提出してみんなで批評や意見を言ったりするクラスなんですけど、『岸辺露伴は動かない』が始まる前年くらいから授業提出物のクオリティが一気に上がったんです。毎年1人か2人飛び抜けた才能はいましたけど、僕がクリエイトするものと同等、あるいはそれ以上という人が突如20人くらい出てきて。せっかくこんなにみんなすごいんだから、何とかしなくちゃと思っていたタイミングで、『岸辺露伴は動かない』の話が来たんですよ。それであるとき、テーマ曲のデモだけ最初に欲しいと言われて、ちょうどそれがそのクラスの授業の日だったんです。生徒にはドラマの話はしませんでしたが、提出物が軒並み優れていてすぐにテーマ曲に使えるなと。その中の1曲が佐々木さんの、後に「大空位時代」と名付けられる曲でした。

——あの名曲が授業の提出物から生まれたものだったとは!

菊地 提出物ということで実験的なスケッチではあったんですけど、基本のムードが完璧だったんで 、尺の問題とか納品クオリティに上げればいいという感じでした。NHKさんからもOKが出たんで、再アレンジして生演奏用のコンバート作業をして、楽譜を出力し、ペペ・トルメント・アスカラールの選抜メンバーで演奏して録音しました。それから別の生徒の曲も僕が手直し、共作として先方に出して、その2曲がまず授業提出物からいけることになりました。僕1人がどんなに頭絞っても、あそこまでドラマに合致するものは多分作れなかったと思うんですよね。ただ、生徒もしくはお弟子さんに作らせて、先生が自分で作った風にしてしまうっていうのはめちゃくちゃよくあることなんですけど(笑)。100%搾取なんで、それはまずいなということも、新音楽制作工房というギルドにしてしまおうという後押しになりました。恐らく僕1人でやっていたら、自己模倣みたいな感じで痩せ枯れていたと思います。

菊地成孔

菊地成孔

偶然が重なってできたテーマ曲「大空位時代」

——では、その「大空位時代」を、佐々木さんはどのように制作されたのでしょうか?

佐々木 元の曲は完全に打ち込みです。その授業は確かオーケストラの楽器を使った音楽っていう緩いテーマがあって、それでオーケストラっぽいものを作ってみようと。それが2020年の9月で、その授業の1週間前にペペ・トルメント・アスカラールのライブに行ったんです。ぺぺのライブはこれまであまり見ていなかったのですが、そのライブからかなり影響を受けてしまって、ペペっぽいものを作ろうっていう頭になっちゃっていたんです。

——打ち込みのDAWソフトは何を使っていますか?

佐々木 今はABLETON Liveを使っていますが、当時はSTEINBERG Cubaseを使用していました。Windowsのかなり古いノート・パソコンで起動しています。ちょうどその頃にオーケストラ音源のAUDIO IMPERIA Jaeger Essential Modern Orchestraを買っていて、内蔵されているボーカル音源のMerethe Soltvedtもとても良かったのでオペラ風のフレーズを後半に入れてみようと。コード進行はヘンリー・マンシーニをリファレンスにしようと思い、コード検出ソフトを使ったらうまく検出できずに似ても似つかないコードが出力されて。これはさすがに……と思ったんですけど、でたらめなコードのつながりがなかなか良い気がしてきて、それをベースにパズルみたいに組み立てたのが、「大空位時代」の元になった授業提出物です。直前にライブに行ってなかったらあんなにペペっぽい曲にはなってなかったし、全然違ったものになった可能性もあるんで、いろいろな偶然が重なってできた曲だと思います。

菊地 NHKさんは、“ペペ・トルメント・アスカラールを”と言っているわけなんで、あんまりエレクトリックなものをバンと出して、“これが主題歌です”と言ってもね(笑)。でも、似てりゃいいって話じゃない。新音楽制作工房には、今音楽界が抱えている、ある種のオートマティズムというのがあって。音楽界では、AIなどを使った自走性、自動性がこれからもっと盛んになると思うんですけど、それをいきなり実験作としてすごいことをやりますよというんじゃなく、美学的な着地点は置いておいたとして、コードの検出であるとか演奏面に自動性を取り入れている、という側面も少しあります。やっぱり自動性で作ると斬新だけど、どうしてもそれなりの痕跡……ポップだと感じて聴ける調性上のまとまりも超えていくので、僕はそこを整えて、後に演奏バージョンにするためにブローアップしただけです。基本的なひらめきは提出物の中にあり、その中に自動性があったのが大きいですね。

——佐々木さんは以前から音楽制作をしていたのですか?

佐々木 1980年代からシンセとかに興味はあってサンレコも読んでいましたけど、シンセって買っちゃうと満足しちゃって、なかなか曲を作るところまで行かなかったんです。けれどもペン大に入って、音楽理論を何年か習って、ビート・メイキング&コンポーズという最上位のクラスに入ってみたら、いきなり作品を提出するということになって。普通の学校だったら途中にDTMを学ぶクラスがあって、それから楽曲制作になりそうなものですけど、ポーンと飛躍していきなり提出物作らないといけなくなって。そこから一生懸命、DAWに触れるようになっていきました。

佐々木語

佐々木語

実は人間が歌っていないことが重要

——丹羽さんは、パリのシーンで流れる「La Seine」「Le Louvre」を作曲されています。

丹羽 Cubaseを使っていますが、打ち込みよりもシミュレーション的な面が大きいかなと。もともとピアノを習っていて譜面を読み書きできるので、アコースティックな楽曲をどう構築していくかを考えるためのDAWという感じです。

——シーンに合った美しいメロディだと思います。

丹羽 あらかじめ提出したものを使うのではなくて、このシーンはこういう内容が必要だからと菊地さんから依頼を受け、レコーディングまでの1カ月ほどで作っています。映画音楽をどう作るのかを、作曲を通じて学びましたね。現代のパリのシーンで、カメラは固定なのかパンニングしているのか、あるいは俯瞰なのかというように、映像で何が起きているのを無視して音をつけるわけにはいかないので、どういう音が適当なのか。また。岸辺露伴と泉京香の2人が出てくるとはどういうことなのかなども考えて、曲の形を決めてからDAWでデモを作ってレコーディングに臨んでいます。

——ストリングスのアレンジまですべて?

丹羽 そうですね。譜面も用意して音響ハウスで録音しました。菊地さんにサックスを吹いてもらい、自分も演奏しています。DAWでシミュレーションはしていたのですが、それと生ってやっぱり違うんですよね。DAWはファイナルカットがない。つまり、常にバージョンを更新していけるものだから、いつ終わらせるのかっていう切断のポイントを自分で決めなきゃいけないものですよね。けれどもレコーディングは一瞬のもので、決まった日数でやりきるための集中力や空気感は、なかなかDAWで得られないものだと思います。

丹羽武史

丹羽武史

——大野さんは菊地さんとの共作を含め、4曲でクレジットされています。大野さんの制作環境を伺えますか?

大野 コンピューターはAPPLE MacBook Pro、DAWはAVID Pro Toolsで、打ち込みがメインです。ピアノや弦楽器の音源はNATIVE INSTRUMENTS Kontaktをメインにしていて、そのほかにCYCLING '74 Maxも使いました。

——「AI制作による二つの弦楽四重奏の同時演奏」は、タイトルからもまさにMaxが活用されているのでしょうか?

大野 そうですね。MaxのAI系の機能を使っています。

——情緒的なメロディとノイズが合わさった「琴とノイズ」が面白いです。ノイズはどのように制作を?

大野 MIDIデータをランダムにシャッフルして、それをKontaktのインダストリアル系の音源に当てはめて、さらにMaxでグラニュラー加工してと、いろいろ組み合わせて作っています。楽譜作成ソフトのAVID Sibeliusを仕事で使用していたこともあり、今までは制作は楽譜がメインという感じでした。DAWで音楽を作るようになったのは、ビート・メイキングのクラスに入ってからだったんです。

大野格

大野格

——皆さんがこれまでDAWに深く触れていないとは思えないほど、素晴らしい楽曲を作られていて驚くばかりです。

菊地 ビート・メイキングのクラスは別に取らなくてもいいんですよ。音楽理論とリズムは必須科目として教えていて、それから演奏の実技とビート・メイキングのクラスに分かれるんですけど、実技を取る人のパーセンテージがすごく低い。ほぼ100対0ぐらいでDAWのクラスになっちゃった。だからと言ってみんなが元からDAWに接しているわけではないので、初期の提出物は、マイクを立ててリズム・マシンを鳴らして、それに合わせてピアノ弾くっていうクオリティだったりして。かと思えばそのままヒップホップのトラックとして使えるものを作る人もいる。いずれにせよ僕が音楽家として痛感したのは、“とにかくDAWをやる”ってことにさせると、全員が超人化する。それは経験的に分かっているんです。

——自主的に音楽を作ることができるようになると。

菊地 全くやったことがない人でも1、2年でものすごいことになるので、“機材ってやべえな”と。今の時代は、20世紀的な先生が脇について添削してあげるよりも、ちまたに山ほど機材は売ってるので、その中から手探りでも探して、まず機材を動かしちゃった方が、才能がある人が覚醒して超人化する。その方が、遥かに効率が良いですよね。

——菊地さんはDAWを使っているのでしょうか?

菊地 僕はやらないです。僕が機材のこと何も知らないことがすごく重要で、じゃないと添削の嵐になってしまう(笑)。僕の立場としてはDAWをやらないし、MIDIの段階でさえ、全然分からない風にとぼけてます(笑)。先生が何も知らないと、生徒はのびのび作れるじゃないですか(笑)。和声とか律動の理論を教わっても、作品を作るというクリエイティブの段階では何も教えない。そうすると、全然使いこなせないまま終わっちゃったっていう人が出てくるのは避けられないんだけど、彼らの年は1人もそうはならなかった。この子がわずか1年でこんなん作るのっていう驚きばかりで。大野君も最初期の頃はまだよちよちだったのに、あっという間に5、6曲作ってつかんできた。大野君は東京藝術大学声楽科出身で、もともとの出自はあったにせよ、機材を使って作品を提出するという空間に身を置くことが飛躍する一番のきっかけだったかなと。

——『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の中で、特に印象的な場面で流れる「愛の遺伝」は菊地さんと大野さんの共作ですね。

大野 響き的には、「大空位時代」というしっかりしたエンディングがあるので、オペラ的というか、プッチーニを意識して書いています。

菊地 「愛の遺伝」は、出来上がったトップ・ラインを「大空位時代」に合わせて、オーケストラ・サウンドの上でボーカル・サンプルがオペラを歌うことをコンセプトにしています。多くの方はサンプルだと思ってないと思うんですけど。

——「大空位時代」も「愛の遺伝」も、ボーカル・サンプルだとは分かりませんでした。

菊地 サンプルであることがすごく重要で、これをやらなかったらオルタナティブじゃないし、コンサバティブ一色なのも基本的に僕個人のカラーではないし、新音楽制作工房のカラーでもないというふうに思っているので。オルタナティブがコンサバティブの中に入り込んでいるようなものです。「愛の遺伝」は納品の直前にトップ・ラインをサンプルにしようと気がついたんですよね。そうすれば「大空位時代」とそろうと思って。ただそれが伝わっているかどうかといったら、ほとんどの人はオペラ歌手が歌っていると思うんですけど、実は違うんだと。

——ソフトは何を?

菊地 ZERO-Gの音源ライブラリー、Classical Vocal/Operatic Vocal PhrasesのデータをAPPLE Logic ProのSamplerに取り込み、加工して使っています。マニピュレーターの丸山桂にソフトを立ち上げてもらって、“いいねそれ”ってMIDIキーボードにアサインして僕がリアルタイムで弾きました。ソロで聴いたらブレスとかがおかしいから絶対ばれちゃうけど、オーケストラの上に乗っけると意外と分からないもんだなって(笑)。

新音楽制作工房が目指す21世紀の音楽

——あとは「都鳥」が、“レコーディング・セッション版”と表記されていますが、どのように録音を?

菊地 スタジオは音響ハウスのStudio No.2ですね。吉田喜重らの“松竹ヌーベル・バーグ”とか言われていた日本映画がアバンギャルドだった時代の前衛映画の中で、邦楽とシンセのノイズ、さらにガムランのような民族楽器が入っているのがブームになった時代があって、あるシーンで流れたらいいなと思いついたんです。だから三味線と長唄、ガムランの生演奏と、新音楽制作工房のdjapon君が作ったシンセのノイズ音源を僕がDJプレイし、KORG Minilogueの手弾きと セッションしています。

「都鳥」のセッション風景

「都鳥」は音響ハウスのStudio No.1で、長唄、三味線、ガムランと、新音楽制作工房のdjaponが制作したノイズ音源を、菊地がPIONEER DJ CDJ-850から流すというセッションを収録した、15分ほどの楽曲。菊地は「即興で30分くらい録ったものを短くしたけど、細かな編集はしていないです。ガムランが鳴ると音が長唄と三味線が聴こえなくなるからパーテーションを組んだりして音がかぶらないようにしたのと、全員がモニタリングできるようにするのに時間がかかっちゃって、もう演奏は好きにやってと。何の説明もしなかったけど、“これはデタラメにやった方がうまくいく”という確信はありました」と語る

「都鳥」のセッションで使用したPIONEER DJ CDJ-850とKORG Minilogue XD

「都鳥」のセッションで使用したPIONEER DJ CDJ-850とKORG Minilogue XD

——ミックスは赤工隆さんがクレジットされています。

菊地 赤工と僕は長くて、僕の最初のソロ・アルバム『デギュスタシオン・ア・ジャズ』の頃からもう20年以上の付き合いで、僕がどんなことをしようとしても対応できます。僕が生演奏をエディティングするっていうことに関して、彼はもう最初期から慣れている。いわゆる音楽家とミックス・エンジニアの信頼関係があります。新音楽制作工房のそれぞれが作ったエレクトロ・トラックに関しては、テレビ版のシーズン3からは、僕から積極的に授業提出物をカタログとして、“気に入ったら使ってください”という感じで売り込んでいて、もうその曲はミックスまで終わっているんです。

——皆さんでトラック制作だけでなく、ミックスまで行っているのですね。

大野 自分なりにミックスはやっていますが、全くプロではないので。ある程度自動でやってくれるIZOTOPEのOzoneやNeutronを使いながら学んでいるところです。

——最後は皆さんの、これからの新音楽制作工房での目標を教えていただけますか?

丹羽 今回レコーディングまで経験させていただいたので、それは生かしたいなと。やはり私のメインとなるプラットフォームは楽譜、つまり鉛筆と紙です。そこを深めていきつつ、DAWでも作って菊地さんやメンバーに聴いてもらいながら何かをつかめていけたらなと。新音楽制作工房の“旧音楽派”としてやっていこうと思っています。

大野 金管や打楽器の入ったフルオーケストラ曲を作ってみたいですね。大学でスコアを読み込む勉強をしていたので、オーケストラ・スコアを普段から眺めたりするのも好きですし、1から自分でオーケストラ作品を作るっていうのは、目標としてやりがいのあることかなと。ボーカロイドと人間のデュエットのオペラも、今後実現できたら面白そうです。

佐々木 僕の場合は、“ペン大の理論科を卒業しよう”“上のクラスに行ったら1曲授業で提出しよう”と、それが人生の目標だったので、もう目標がかなっているんです。だから特にないとも言えるのですが、最近まんまとNewJeansおじさんになっていて(笑)。ボーカロイドを使ったKポップ的な……ボーカル入りの曲を作ってみたいという思いはあります。

菊地 今のところ僕らはスクリーン・スコアを作ったチームっていうマスイメージができて仕方ないとは思っています。だけど、並行してQ/Nと僕のQ/N/Kというラップ・チームではビート・メイカー集団の側面もある。かつ、今やろうとしているのはポップスだったりもする。ギルドって考え方は中世のもので、権利だとかいろんなものが、どう分配されているのかどんどん分からなくなってるこの時代において、発想自体は逆に過去志向なんですよね。その発想の上で、21世紀の音楽が追求できればというバランスにはなっているので、次の作品にどんどん進めていけたらと思っています。

Release

『「岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く」オリジナル・サウンドトラック』【完全生産限定盤】
菊地成孔/新音楽制作工房
日本コロムビア

Musician:菊地成孔(vo、k、p、sax、他)、田島浩一郎(prog)、高橋大地(prog)djapon(prog)、薬袋正宗(prog)、Satō(prog)、佐々木語(prog)、大野格(prog)、OGAWA SEIJI(prog)、委細昌嗣(prog)、丹羽武史(p、他)、大儀見元(perc)、坪口昌恭(sound effect)、堀米綾(harp)、早川純(bandoneon)、鳥越啓介(contrabass)、古川琴音(vo)、丸山桂(manipulation)、服部正嗣(ds)、林正樹(p)、牛山玲名(vln)、田島華乃(vln)、舘泉礼一(viola)、関口将史(vc)、藤堂昌彦(vln)、石亀協子(vln)、川口静華(vln)、石橋尚子(vln)、漆原直美(vln)、中島知恵(vln)、亀田夏絵(vln)、大島理紗子(vln)、三品芽生(viola)、細川亜維子(viola)、稲本有彩(vc)、徳澤青弦(vc)、玉木寿美(contrabass)、米光椋(contrabass)、海津紫乃(長唄)、河野文(三味線)、Sumilir(jawa gamelan)
Producer:菊地成孔
Engineer:赤工隆
Studio:Sound City Annex、Sound City Annex T-1、ONKIO HAUS、FREEDOM STUDIO INFINITY、Syn Studio

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