RIVAGE PM10で操作性と音質が向上
大小8つのホール、34の会議室を擁するコンベンション&アート・センター、東京国際フォーラム。その中でも最大の5,012席を備えるのがホールAで、コンサートや国際会議など幅広い分野で多目的に利用されている。1997年の設立時からYSSの前身であるヤマハサウンドテックが音響設備を手掛けており、2017年度に行った改修もYSSが担当。その改修の中心になったのが、YAMAHA RIVAGE PM10の導入とYAMAHA独自の音場支援システムAFCのアップデートだ。まずはメイン・コンソールにRIVAGE PM10を採用した理由を、音響を担当するパシフィックアートセンターの立川大介氏に伺った。
「もともとホールAのコンソールはYAMAHA PM5Dだったので、おのずとその後継機であるRIVAGE PM10が最有力候補になりました。さらに東京国際フォーラム内のほかのホールでもYAMAHAのコンソールを使っているので、操作感の統一という点でYAMAHA以外の選択肢は無くなりましたね。そして、故障やトラブルがあった場合のサポート体制がしっかりしているという点も大きいです」
RIVAGE PM10を導入するにあたり、パシフィックアートセンターとYSS間で操作性を中心に何度も打ち合わせを行ったと、YSSの岩上知広氏が続ける。
「RIVAGE PM10のコントロール・サーフェス、CS-R10を使用しながら客席や舞台が問題無く見られるかという点は、使い勝手の中でも重要になってきます。そのためデモ機を用意する前から、CS-R10の実寸大の図面をホールAのコントロール・ルームに持ち込み、デスクの上に広げて確認したりもしました」
使用感の部分を重点的に確認するのは、パシフィックアートセンターの音響チームに女性スタッフが多くいることも理由の一つだと立川氏は言う。
「やはりどうしても男性スタッフに比べて小柄な場合が多いので、女性スタッフがステージを見ながらオペレーションできるかという点は事前にチェックしたかったんです。YSSが用意してくださった実寸大の図面をデスクに広げ、実際に女性スタッフ数名がその前に座ってみて、実機の場合でもステージが見えそうか確認しました。さらに研修に行って使い方を教えていただいた上で、デモ機をお借りすることもできたので、不安を抱くことなく本番での運用を開始することができましたね」
パシフィックアートセンターの大貫郁美氏は、操作性の面はもちろんのこと、サウンドの印象がガラッと変わり、以前よりもさらに音質が良くなったと語る。
「音の抜けが向上しました。バルコニーの奥の方まで音がしっかりと届くイメージです。外部業者の方からの評価も非常に高いですね」
要望に合わせてAFCを特注でアップデート
ホールや演目に合わせて残響、音量、音の広がりを自然に調整する支援システムAFCは設立時からホールAに導入されており、今回の改修で3世代目になるという。AFCのアップデートは、YSSの保守部門から東京国際フォーラムに提案したと、YSSの岩沢直樹氏が解説してくれた。
「改修前までご使用いただいていたAFC1というシステムが、経年によりメインテナンス・リスクが増えてきたためリニューアルをご提案しました。AFC用スピーカーも一式交換すると費用がかかるため、今回はプロセッサーとアンプ部を中心に改修しています」
今回のアップデートでは操作性の向上が大きなポイントだったため、デモ機を持ち込み確認を行ったと岩上氏。
「AFCはその施設、空間に合わせたカスタマイズ品なので、特に操作性の確認が重要になります。そのためRIVAGE PM10同様、納入前にデモ機を実際に触ってもらい、タッチパネルのここでこのような操作ができるというようなレクチャーをさせていただきました」
操作性の部分を中心に何度も話し合いを重ねたかいがあり、アップデートされたAFCは以前のモデルに比べて扱いやすくなったと立川氏は評価する。
「これまではタブレット型のコンピューターでなければ操作ができず、重たい上にバッテリー駆動時間の問題がありました。今回の改修でAPPLE iPadで操作ができるようになったため、格段に扱いやすくなったんです。またオーケストラの演目では、大きな音を扱うこともあります。より自然な音場支援をするため、AFC用マイクのマイク・プリアンプのゲインをタッチパネル上で調整できるようにという要望をこちらから出し、反映してもらいました。このようにこちらの要望を汲んでカスタマイズしてくれる上、アップデート前のAFCで慣れ親しんだ操作感は残してくれる点も素晴らしいですね」
このようなYSSによるAFCのサポートは、設計/改修時だけには止まらない。改修後のAFCを用いた最初のコンサートの際には、不測の事態に備えYSSのスタッフも調整室で待機。運用開始後も操作方法などで不明点があった場合は、電話で早急に対処してくれると立川氏は言う。
「電話をかけると、YSSのスタッフの方が目の前で実機を見ているかのように説明してくださるんです。我々でも触れるように順序立てて丁寧にお話しいただけるので、とても助かっています」
電話での応対以外にも、YSSの保守部門や営業スタッフが定期的に来てくれるため大変心強いと、東京国際フォーラムの川辺貴之氏も信頼を寄せる。
「平均すると月に1~2回は保守が入っており、臨機応変に対応いただけるのでありがたいですね。製品もさることながら保守の体制も素晴らしいです」
引き渡しをしたらそこで終わりではなく、一貫したサービスを継続して提供するのがYSSの特徴でもある。そのため、社内での連携が積極的に行われていると、YSSの阿部良生氏が教えてくれた。
「改修時に設計や施工を担当したスタッフが直接行かなくても、定期的に点検を行う保守部門からここをアップデートした方がいいのではないか、という提案をもらうこともあります。このように社内でも連絡を取り合い、部署単位ではなくYSS全体でサポートしているんです」
立川氏は今後も変わらない良好なリレーションシップを継続していきたいと言う。
「コミュニケーションがしっかり取れる関係を築いてきたので、次の世代にもつないでいきたいなと思います。これから先も改修があると思うのですが、そのタイミングでもアドバイスをいただきたいですね」
■問合わせ:ヤマハサウンドシステム ☎︎03-5652-3600 www.yamaha-ss.co.jp