
Cubase Pro 9の新機能について
1.新しいプロジェクト・ウィンドウ・ユーザー・インターフェース

インスペクタやVisibility、VSTインストゥルメントやメディア・ベイを表示する左ゾーン、右ゾーンに加え、新たに下ゾーンが追加。ここにMix Consoleやエディター画面などが表示され、1画面での情報のやりとりが可能になった。また、左右のゾーンは表示できる情報量は保ちつつスリムに。さらにトランスポート・パネルと一部のツールは、最下部に配置されている。昨今のラップ・トップでの作業が増えつつある環境への配慮がなされているようだ。
また、旧バージョンのままの表示にしたいというリクエストにも対応している。下ゾーンの右上の矢印アイコンをクリックすると、従来どおり別ウィンドウで表示。左下のxアイコンをクリックすれば下ゾーンを非表示にすることもできる。あらかじめ環境設定でエディターは別ウインドウで開くようにカスタマイズしておくのも良いだろう。



2.サンプラー・トラックの追加

新たに搭載された“サンプラー”はVSTインストゥルメントではなくCubaseの中の機能として実装されている。使い方はとてもシンプルで、オーディオ・トラックやMIDIトラックと同様の操作でサンプラー・トラックを追加。音声ファイルをサンプラー・コントロール内の指定された場所にドロップするだけだ。
青木氏によるデモンストレーションでは、3つのサンプラー・トラックにそれぞれキック、スネア、ハイハットの音声ファイルを取り込みリズム・パターンを作成する工程が紹介された。オーディオ・トラックに音声ファイルを張り付けて作成するよりも、素早く構築ができる。さらにベロシティを使った音の強弱や細かな演奏表現はMIDIの方が有利だ。サンプラー・トラックは、今後Cubaseの楽曲制作において、欠かせないツールになっていくだろう。




3.履歴機能「MixConsole History」
フェーダー、パン、EQ、エフェクトなどのミックス・コンソール操作が履歴で追えるようになった。また、プロジェクトの編集履歴とは別に管理されているため、トラック編集はそのままに、ミキシングのバランスだけアンドゥ/リドゥすることが可能だ。

4.新たな追加されたエフェクト“Frequency”

波形編集ソフトWaveLab Pro 9で評価の高かったM/S処理を可能にする8バンドEQがCubase Pro 9に実装された。通常はステレオ・モードで立ち上がるが、M/Sモードに変更し、MidとSideのそれぞれでEQ処理を施すことができる。
また、倍音やハーモニーなどに対して音階の考え方でEQを調整できるように鍵盤表示機能が装備されているのも大きな特徴だ。例えば、ボーカルの領域を少し上げたいといった場合、ボーカルのメロディが占める音域が分かれば、それにかかわる周波数帯域を上げれば良いという訳だ。
そのほか、プラグインのユーザー・インターフェースも一新した。特にMaximizerにおいては、新たなパラメーター「Recover」と「Release」が追加。旧バージョンと同じ仕様になるクラシック・モードも装備しているので、過去のプロジェクト・ファイルも音が破たんせずに再現できるようになっている。

5.マーカー・トラックが最大10個まで使用可能に
これまで一つのプロジェクトに対して1つ装備されていたマーカー・トラックが最大10個まで作成できるようになった。使い方はユーザー次第ではあるが、複数のマーカー・トラックを分けて表示できるので、各パートでメモ替わりに使用したり、ライブでのオケ出しとしてCubaseを使用する際、曲ごとにマーカーが作成できるなど、さまざまな使用例が考えられる。Cubaseは音楽制作だけでなくライブ・ステージまで臨機応変に対応できるDAWとして注目されそうだ。

最後にデモンストレーターの青木繁男氏は「このほかにも紹介しきれないほど、さまざまな機能があるが、断言できるのは現Cubaseユーザーはバージョン9に移るべきだろうということ。特にサンプラー・トラックをどのように使うか。これはSTEINBERGからの挑戦だと思っている。これを受け取ったクリエーターには、是非とも面白いトラックを作り出していただけることを願っている」と語り、デモンストレーションを締めくくった。
STEINBERG Cubase製品ページ
https://japan.steinberg.net/jp/products/cubase/