Photo:Hiroki Obara
こんにちはケンカイヨシ(Loyly Lewis)です。今回は、鮮烈なファッションとパフォーマンスで人気のレディー・ガガのヒット曲「ステューピッド・ラヴ」(『クロマティカ』収録)について考察していきましょう!
レディー・ガガは、デヴィッド・ボウイのような奇抜なグラム・ファッションとマドンナのようなセックス・シンボル的アプローチが功を奏し、2008年に『ザ・フェイム』でデビューします。80'sユーロ・ポップや90'sレイブ、そして当時最先端だったエレクトロ・ハウスやビート・ミュージックなどをうまくポップスに昇華したサウンドで世界的ヒットを生み出し、その後もEDMなど旬なサウンドを取り入れて人気を博します。しかし、彼女の根本部分は“80'sディーバ(歌姫)”。この立ち位置は、2020年にリリースされた「ステューピッド・ラヴ」でも変わらないように思います。
同曲は、フューチャー・ベース的ボーカル・カットアップを用いて最近らしい空気感を出していますが、繰り返されるアルペジオ・シンセ・ベースや空間を埋めるソウ・シンセは、むしろ1980年代ごろのティナ・ターナーやマドンナの影響を色濃く感じさせるのです。恐らくレディー・ガガは、80'sディーバたちのディスコ・サウンドを現代風にアップデートしたのだと考察します。
特にこの曲では、先述の“デケデケ”と16分音符で刻まれるアルペジオ・シンセ・ベースが特徴的。この音色はYAMAHA DX7やROLAND Jupiter-8などのシンセで作られることが多く、1980年代後半〜1995年ごろに流行したイタロ・ディスコによく登場します。現代でこういったシンセ・ベースを再現しようとする場合、これらのシンセをシミュレーションしたソフト・シンセを選ぶのが近道。ポピュラーなものでは、U-HE Divaや、バンドルのARTURIA V Collectionなどがお薦めです。それ以外にも同様のコンセプトの製品は多いので、操作性や音質はもちろん、CPU負荷なども考慮して試してみるとよいでしょう。
ただしこのアルペジオ・シンセ・ベースのフレーズは、同曲において“一工夫”されています。当時は8分音符刻みで鳴らすことが多かったのですが、同曲では16分音符刻みで表現されているのです! 筆者は、こうすることで80'sイタロ・ディスコの雰囲気はそのままに保ちながらも、より現代的でドライブ感のある印象にすることが目的だったのだろうと考えます。さらに同曲では、当時には無かったサブベースが追加され、そこにはキックでポンピングするコンプもかかっているのです。これらによって迫力とグルーブが補強され、より現代らしい音像となっているのでしょう。
まさに「ステューピッド・ラヴ」は、80’sイタロ・ディスコを2020年版にアップデートしたと言える楽曲。今後もレディー・ガガから目が離せませんね。それではまた!
ケンカイヨシ(Loyly Lewis)
【Profile】東京を拠点に活動する音楽プロデューサー/アレンジャー。ぼくのりりっくのぼうよみとの出会いをきっかけにJポップへ活躍の場を広げる。そのほか香取慎吾と草彅剛のユニット=SingTuyoなどの作品を手掛けている。
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