nishi-ken×8250A〜クリエイターが愛用するGENELECモニター

モニターを替えてすぐ“ミックスがいいね”と言われました
部屋の調整に悩むならDSPに頼っていいと思います

 40年の歴史を誇る、フィンランドのモニター・スピーカー・メーカー、GENELEC。現在のスタジオ・モニターでは主流となったアクティブ式のパイオニアと知られる同社は、コンパクトなデスクトップ機からスタジオ用ラージ機までを手掛け、世界中のエンジニアやクリエイターから厚い信頼を寄せられている。この連載では、そんなGENELECモニターを愛用するクリエイターを訪ね、制作のパートナーとしてのモニターを語ってもらう。今回はプロデューサー/キーボーディストとして多方面で活躍しているnishi-kenの自宅スタジオを訪ねた。

今鳴っている音を基準にしてもいいという安心感

 nishi-kenのスタジオでまず驚かされるのは、デスクトップ上では巨大に見えるGENELEC 8250Aの存在感。8インチ・ウーファーを備えたDSP内蔵の2ウェイ・モデルだ。

 「このスペースに対しては1サイズ小さな8240Aの方が妥当かもしれませんが、発売当初に比較試聴して、8250Aの方が音圧的にしっくり来たんです。GENELECはそれまで1031Aを長く使っていて、その質感が好みでした。そこからモニタリング環境をもう一段階レベル・アップしようとしたときに、DSPでの音場補正が目に止まったんです」

 実際、DSPを使用したSAM(Smart Active Monitoring)システムの効果は絶大だとnishi-kenは語る。

 「このモニターに替えてからすぐ、“ミックスがいいね”と言われました。SAMシステムによって、今鳴っている音を基準にしてもいいんだという安心感が大きいですね。ミックス中に“この部屋はこの帯域が盛り上がって聴こえる”ということを意識してしまうと気持ち悪いんです。この部屋自体は、背中側のスペースが大きいこともあって割とフラットな特性ではあるのですが、部屋の調整に悩むくらいならもっとDSPに頼っていいと思います。最初にDSPで補正をして、それでも追いつかない場合に部屋に手を入れればいい。もちろん、生音中心でマイキングにこだわるような音楽だとやり方は変わってくるかもしれませんが、自宅での作業がベースとなるダンス・ミュージックの場合は、その方が2018年のスタイルとしてはスマートじゃないかと」

音量を変えてもバランスが変わらない

 長きにわたりGENELECモニターを愛用しているnishi-ken。特に高域が好みだという。

 「ダンス・ミュージックだから低域にこだわるのは当然として、高域のきらびやかさが僕としては気に入っています。聴き疲れしないし、その割にテンションも上がるし。GENELECで鳴らしてかっこいいサウンドが、僕の中では好きな音なんです」

 また、現在のスピーカーの導入によって、モニタリングの仕方が少し変わったとも語る。

 「最初に驚いたのは、音量を変えてもバランスが変わらない点でした。それでもサブベースの帯域は大音量でないと分かりにくいので、瞬間的には大きな音量を出します……そこが8240Aではなく8250Aを選んだポイントですね。ただ、その瞬間以外は結構音量を下げてモニタリングするようになりました。小さい音量で聴いてもバランス感がいいし、その点で有能なスピーカーだと思います

 nishi-kenは、小さい音量でモニターして仕上げるスタイルが“今っぽい”とも言う。

 「大きい音で聴いてかっこいいサウンドは当たり前で、小さい音でかっこ良く聴かせる。そのためには音数を減らしてバランスを詰めていく必要があります。今使っているGENELECは、そんな音作りがしやすいモニターですね」

nishi-ken使用モデルの後継機

8350apm03 8350A
オープン・プライス
(ダーク・グレー:市場予想価格258,000円前後/1基、ホワイト:市場予想価格290,000円前後/1基)
DSPによる音場補正機能SAMを搭載した2ウェイ・モニター。8インチ・ウーファーと1インチ・メタル・ドーム・ツィーターを搭載し、クラスDアンプは200W+150Wのバイアンプ。8200シリーズと比べDSPエンジンやパワー・アンプのアップデートが施されている

Creator of This Month

GenelecNishikenP

nishi-ken
プロデューサー/キーボーディスト。宇都宮隆、GReeeeN、HYDE、伊東歌詞太郎、ミオヤマザキらの作編曲、ライブ・サポートのほか、自身の名義でも活動。最近ではKentaro Nishidaのボーカル曲プロデュースや自身名義でのダンス・トラックを精力的にリリースしている

■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン  https://www.genelec.jp/

2018年10月号サウンド&レコーディング・マガジン2018年10月号より転載