第3回 水道橋Words
手が届く範囲で全部できて音質も良くトラブル・フリー
ワンマン・オペレートがやりやすいコンソールです
ROLANDのPA用デジタル・ミキサーM-200i。APPLE iPadをタッチ・パネルとして使うというアイディアで低コスト化を実現したこのモデルは、発売から既に5年が経過しているものの、低価格ながら音の良いコンパクトなオールインワン・コンソールとして人気を得ている。この連載ではそんなM-200iが使われている現場の声を紹介している。今回はこの8月に1周年を迎えた水道橋のライブ・ハウス、Wordsに伺い、PA担当の伊藤智将氏に話を伺った。
輪郭のはっきりしたクリアな“現場指向の音”
着席で最大60席、スタンディングで120名というキャパのWords。伊藤氏は他店でのPA業務を経て、仲間とともに昨年8月にWordsを立ち上げた。実は、前に務めていたライブ・ハウスでもM-200iを使用していたという。
「僕が入店した当初はアナログの24chコンソールで、途中からM-200iにリプレースされたので、僕にとって初めてのデジタル卓がM-200iなんです。Wordsを立ち上げるにあたってInterBEEに行って、さまざまな同規模のコンソールも触ってみたのですが、僕にとってはM-200iの操作性が圧倒的に良かった。直感的だし、見ただけでパッと使える。出音にも信頼を置いていましたから、これ以外に選択肢は無いと思い、Wordsでも導入することにしました」
その出音について、伊藤氏は自身の経験からこう語る。
「アナログ卓からM-200iに変わったときに、輪郭がはっきりしてクリアになりました。アナログの温かさとは違いますが、現場の音を踏まえた音質で、違和感は無かったです。最初がM-200iだったので、デジタル卓にいいイメージしかないんですよね」
ワンオペでも煩雑にならない操作性
伊藤氏が高く評価しているM-200iの操作性は、APPLE iPad+専用アプリとUSERボタン、フェーダーの組み合わせによるところが大きいという。実際のオペレートについて聞いてみた。
「Wordsはアコースティック系の出演者が多いので、リバーブの処理を繊細に行いたい場合もよくあります。USERキーに楽器用のリバーブとボーカル用リバーブ、ディレイをアサインしてあるので、瞬時に呼び出して、SENDS ON FADERでリバーブへの送りレベルを調整しながら、iPadの画面でリバーブの深さを調整するといったことも簡単に行えます。あるチャンネルをリバーブの前にディレイへ送りたい場合も迷わずにできますね。パラメーターを呼び出して、調整して、操作を限りなく速くできる。僕が見た限りここまで使い勝手の良いコンソールはないと思います」
スピーディな操作性にここまで伊藤氏がこだわるのは、照明のオペレートも同時に行っているから。煩雑になりがちな本番では、少ないアクションで目的の操作をできるところが重宝しているとのことだ。
「USERキーにはエフェクトの呼び出しのほかに、ミュート・グループをアサインしていて、2種類のリバーブと、ハウリングする可能性のある生楽器のミュートが瞬時に行えるようにしています」
取材に先駆けて、伊藤氏は連載第1回のYokohama O-Siteでの導入例に目を通し、自分の使い方と似ていて驚いたという。
「逆に言えば、M-200iはROLANDが現場で求められる使い方を研究して、それを実現できるようにしたんじゃないかと思います。iPad+エンコーダーの操作性が良いのに加え、チャンネル・フェーダーがモニター送りやエフェクト・センドなどにも使えるし、小編成ならUSERレイヤーにインプットとエフェクト・リターンなどもまとめて並べられる。新製品に負けない魅力のあるコンソールだと思いますね」
コンパクトで、小規模ライブ・ハウスのオペレートに必要な機能がすべて収まったM-200i。「手が届く範囲で全部できて、音質も良く、トラブル・フリー。ワンマン・オペレートがやりやすい卓なので、将来のリプレースに備えて、ROLANDにはこのコンセプトの卓を継続してリリースしてほしいですね」と、最後まで伊藤氏は絶賛してくれた。
ROLAND M-200i
リコーラブルな16chヘッド・アンプを内蔵した32chデジタル・ミキサー。タッチ・ディスプレイとして市販のAPPLE iPad+専用アプリが使用でき、有線/無線での接続が行える。出力はメインL/R+8AUX+4マトリクス。4系統のマルチエフェクトや4系統の31バンド・グラフィックEQ、USBメモリーへのレコーダー機能なども搭載する。デジタル・スネークREACに対応し、I/Oの拡張やレコーダーの接続なども可能
https://proav.roland.com/jp/products/m-200i/
取材協力:水道橋Words
Presented by Roland