ブリタニー・ハワード『ジェイミー・リイマジンド』、Brevin Kim『YOU.F.O.』 〜エンジニアD.O.I.'s ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。D.O.I.氏の今月のセレクトは、ブリタニー・ハワード『ジェイミー・リイマジンド』、Brevin Kim『YOU.F.O.』です。

真逆な要素が同居するなど未来的アプローチが面白い

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ブリタニー・ハワード『ジェイミー・リイマジンド』(ソニー)

 ブリタニー・ハワードの「Stay High」(2019年)をチャイルディッシュ・ガンビーノがカバー。昨年、現代ではあまり見られないアーティスティックなアルバム『3.15.20』で度肝を抜いた彼だけに、期待を裏切らない素晴らしい出来です。レトロ・ポップスなオリジナル曲の要素をコラージュ的にふんだんに残しつつ、スカスカ過ぎる独特なシンセ・ベースと極太キック、ドライ過ぎるクラップとトラップ的なスネアなど、真逆で違和感が満載な要素を加える荒業。ボーカルも低域をバッサリ切りつつ相当ドライに処理されており、かなり未来的アプローチで面白いです。この楽曲が収録された今作は、ハワード初のソロ・アルバム『ジェイミー』(2019年)の再解釈となる作品。リトル・ドラゴンやボン・イヴェールなどによるほかの楽曲もかなり面白く、必聴かと思われます。

 

少ない音数だがカラフルな魅力が溢れている

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Brevin Kim『YOU.F.O.』

 マサチューセッツ州出身の兄弟デュオ、Brevin Kimのシングル「YOU.F.O.」が識別不能なジャンル感で良いです。激しくひずんだROLAND TR-808、オルタナ的ギター・サウンド、カットアップされたかのようなサビのボーカルなど少ない音数の構成。その上で、フレーズの面白さや音色の良さなど、カラフルで非常に複雑な魅力があふれています。キャリアが浅くまだブレイクもしていないようですが、どの曲もさまざまな影響を感じつつ、そのどれでもない素晴らしい個性があるように思いました。SNSなどでバズる感じでは無いですが、こういった実直さを感じる音楽は応援したくなります。

 

D.O.I.

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【Profile】Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心としながらも、さまざまなプロダクションに参加している