ベルリン市内のクラブやコレクティブなどから40組を選出
2020年10月の本コラムで一回目を紹介した“Tag der Clubkultur(クラブ・カルチャーの日)”。ドイツ統合30周年という節目だったにも関わらず、特に規制の厳しかったドイツのコロナ禍でベルリンが誇る豊かなクラブ・シーン全体の存続が危ぶまれていた頃、困窮するクラブ関係者を支援しようと、ベルリン州政府文化担当参事のクラウス・レーデラー氏(当時)が、市内のクラブ業界団体Clubcommissionと企画した。公募に申請のあった市内のクラブ、フェスティバル、イベント、コレクティブなどから40組を選出し、1万ユーロ(約150万円)を“賞金”として授与する。賞金の使用用途は自由だが、受賞者はあらかじめ決められた会期内に何らかのイベントを行うことが条件となっている。
今年の“クラブ・カルチャーの日”会期は10月3日から8日まで。2020年と2021年は東西ドイツの再統合記念日である10月3日(祝日)をその日と定めていた。しかし、その1日に受賞40組が同時にイベントを開催すると競合してしまい、出演者や来場者の奪い合いになってしまう。そこで2022年からは複数日にまたがる会期を設けることとした。
そんなわけで、今年は4回目の開催となり、ちょうど先週公募が締め切られたところだ。今週から、その選考に入るわけだが、なぜか私が評議員を務めることになった……! 過去の評議員の推薦などから多数の評議員候補がいた中から実行委員会の協議を経て声をかけてもらった。確かにベルリンのクラブ・カルチャーにはかれこれ長く関わってはいるものの、正直驚いた。自分が相応しいのかどうかは分からないが、せっかく声をかけてもらったので受けることにした。5名の評議員には、なんとグドゥルン・グート(マラリア!)も名を連ねている。ほかには若手DJでイベント・オーガナイザーのロルスネイク。ドラァグ・クィーンでフェスティバルの主催などもするブリーチ。元アメリカ兵で退役してからクラブのセキュリティとして長年クラブに関わっているというスマイリー・ボールドウィン。そこに音楽ライターでブッキング・エージェントの私。ドイツ出身者はグドゥルンだけで、ほかは外国から移り住んできた人であることや、5名中4名が女性を自認する人だという人選も、多様性を重んじるベルリンらしい。今年は177組からの応募があり、これから8月8日までの間に審査を進め、9月7日に授与式が行われる。
浅沼優子/Yuko Asanuma
【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている