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Berlin Calling〜第98回 知られざる夢の町モンハイムで開催〜公共空間展示「The Sound」体験レポート

街の公共スペースにサウンド・インスタレーションを展示

 今回はベルリンから少し離れて、モンハイム・アム・マインという町で開催された、“The Sound”というサウンド・インスタレーションの展示を紹介したい。“モンハイム”と言うと、ドイツ人でも“マンハイムのこと?”と聴き返してくるほど、あまり知られていない、人口4万人ほどのノルトライン=ヴェストファーレン州の町だ。ケルンとデュッセルドルフから、それぞれ車で30分ほどの距離で、ライン川に面した自然が多く旧市街の街並みが可愛らしい。2020年から野心的な催しが行われるようになった。“モンハイム・トリエンナーレ”だ。名前の通り、3年に一度の音楽フェスティバルで、昨年1度目のメイン・フェスティバルが開催されたので、今年は第2期の1年目と言うことになる。

市内の公園に設置された“The Sound”案内所前で、開会の挨拶をするダニエル・ツィマーマン市長。(写真©️Nicolas Weber)

市内の公園に設置された“The Sound”案内所前で、開会の挨拶をするダニエル・ツィマーマン市長。(写真©️Nicolas Weber)

 3年に1度とはいえ、少し変わった構成になっており、1年目には街の各所にある公共スペースにサウンド・インスタレーションを展示する“The Sound”が開催。2年目には翌年出るアーティストたちが出演するプレ・イベント“The Prequel”があり、3年目がメインの音楽フェスティバルが開催されるという流れになっている。

 今回、初めてモンハイムを訪問してみたのは、実は今年から筆者が“モンハイム・トリエンナーレ”のキュレーション・チームに加わることになったからだ。2025年に向けて、6名のチームで出演者を決めていく。

 今年の“The Sound”では、町の中の公園や高架下、ショッピング・センターのショー・ウィンドウ、発電所、といった公共空間に何かしら音を発するインスタレーションが設置されていた。一番の目玉は、アメリカの舞台演出家として高名なロバート・ウィルソンが公園に展示した「音楽の井戸」作品だろうか。ベルリンでテクノ・アーティストのエフデミンとしても活躍するフィリップ・ゾルマンの作品もあった。会期中なんと町中12カ所に元々設置されている消防署の警報システムから、毎週土曜日の午後4時にアーティストがそのために作曲した楽曲を流す、という試みなどもあった。

建設中の立体駐車場を会場にした、エフデミンとしても知られるフィリップ・ゾルマンとコンラッド・シュプレンガーによるインスタレーション作品“モジュラー・オルガン・システム”(写真©️Jan Höhe)

建設中の立体駐車場を会場にした、エフデミンとしても知られるフィリップ・ゾルマンとコンラッド・シュプレンガーによるインスタレーション作品“モジュラー・オルガン・システム”(写真©️Jan Höhe)

 町全体がアートや音楽を重視しているような印象を受けたが、それもそのはず。ドイツ史上最年少の29歳で当選し、住民の圧倒的支持を得ている市長の、肝いりの取り組みだった。ここでは住民の子供は誰でも無料で音楽レッスンが受けられ、町のあちこちに芸術作品があり、芸術家のための滞在施設もある。このような環境で、今後このトリエンナーレがどのように発展していくか、とても楽しみだ。

 

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浅沼優子/Yuko Asanuma

【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている

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