音楽クリエイターに向けてリリースされた背面開放型ヘッドホン、MDR-MV1。一線のミックスエンジニアD.O.I.氏に試していただいたところ「購入してスタメンのヘッドホンにします」との力強いコメントが。評価の理由を教えてもらおう。
Photo:Hiroki Obara
気になる部分がなく“普通に聴ける感じ”が好印象
とても良いですね。ヘッドホンによっては一聴した際に“この帯域の再現力が低い”とか“高域が耳に痛い”と思うことがあるんですけど、MDR-MV1には気になる部分がないんです。この“普通に聴ける感じ”が、僕にとって良いヘッドホンの条件の1つ。そして購入の決め手になったのは低域の再現力。例えば、サブベースとキックのすみ分けがうまくいっているミックスでは50Hz以下が弾むように聴こえるんですが、うまくいっていない場合はベタっと平べったく聴こえる。そういう低域の様子が、圧倒的によく分かるんです。開放型ヘッドホンには低域が捉えにくいというイメージを持っていたので、MDR-MV1って本当に開放型!?と二度見したほど。前に張り付く音、と表現されるような“近さ”や“迫力”がよく分かるのも従来の開放型との大きな違いで、密閉型で音作りしたり、確かめたりしていた部分がきちんと判断できます。
さらに特徴的なのは、リッチな中低域。DSPで処理したような“お化粧感”はありませんが、すごく良いポイントが持ち上がっていて今の音楽にマッチする印象です。最近は歌やシンセの200〜500Hz辺りをカットする音作りがトレンドなので、MDR-MV1なら削られた部分が補完され、ちょうど良い感じに聴こえる。換言すると、エンジニアが必要だと判断して残した分が奇麗に聴こえます。ただ、MDR-MV1だけでミックスした音源をほかで鳴らすと中低域が少なく聴こえるかもしれないので、特性を理解して使う必要があります。
“軽さ”も、すごく良い。イヤーパッドやヘッドバンドは付けている気がしないほど柔らかく、抜群の装着感です。音質と併せて考えると、日常の音楽リスニングや映画鑑賞にも合いそう。Bluetooth接続のバージョンも出してほしいですね。
Summary
✓ 購入の決め手は低域の再現力
✓ 現代の音楽に合う豊かな中低域
✓ 軽くて抜群の装着感
D.O.I.
Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心に多彩な音楽に精通し、これまでにBTS、BE:FIRST、三代目J Soul Brothers、三浦大知、AI、Creepy Nutsなど、国内外のさまざまなプロダクションに参加
ソニー MDR-MV1
背面開放型により内部での共鳴を低減し、原音の正確な再現を目指したモニターヘッドホン。ドライバーは専用開発の40mm径のもので、低域の再現性を高めつつ超高域再生も可能に。ドライバー背面にはダクトを備え、振動板の動作を最適化。低域の過渡特性を改善し、中域との分離感を維持しつつリズムを正確に再現するという。360 Reality Audio認定モデルとなっているが、360 Reality Audio以外にも、さまざまな立体音響制作での使用が想定されている。
●形式:背面開放型 ●ドライバー径:40mm ●周波数特性:5Hz~80kHz ●最大入力:1,500mW ●感度:100dB/mW ●インピーダンス:24Ω(1kHzにて) ●重量:約223g(ケーブル含まず) ●付属品:ヘッドホンケーブル(TRSフォーンプラグ)、TRSフォーン→ステレオミニ・プラグ変換アダプター