クラシックからポップスまで、多様なコースを擁する昭和音楽大学。その中で音楽制作を総合的に学べるのがサウンドプロデュースコースだ。今回は、川崎市の小田急線新百合ヶ丘駅から徒歩数分という好立地にあるキャンパスを訪ね、コース開設時からの講師である作編曲家/プロデューサーの益田トッシュと、同コースの卒業生で、現在は講師も務める作編曲家おぎのあきこにお話を伺った。
Photo:Hiroki Obara(*を除く)
僕が仕事としてやっていることを同じように授業でやってもらうことも(トッシュ)
─このコースではどのようなことが学べるのでしょうか?
トッシュ 作曲だけ、あるいはアレンジだけということではなく、どういう筋道を立てて作品を作っていくかというプロセスや、クライアントとのコミュニケーション方法といった、プロジェクトを円滑に進めるためのさまざまなマインドセットも含めて、プロの音楽制作をトータルに学べます。例えば、1年生はまずAPPLE Logic Proの使い方から始めるのですが、それもプロの使い方を見越した上で、最初に何を覚えるべきかという観点で学修していくんです。
おぎの 私は1年生を担当していますが、DAWを独学で修得して入学してくる学生もいる一方で、全くの初心者もいます。ですから、入学時はDAW初心者でも全く問題はありません。
─各学年での学修目標は?
トッシュ 1年生は1人で納品レベルの作品を作れるようになること、2年生ではデータの共有方法やボーカル・ディレクションの方法などを学び、コラボレーションで作品を作れるようになることを目指します。そして3年ではマニピュレーターやライブでのプログラミング、それにいろんな楽器のレコーディングを修得して、4年で卒業制作という流れです。
─おぎの先生はどういう動機で入学されたのですか?
おぎの 最初から表舞台に立つ側ではなく、制作側に興味がありました。ですから、そういうことを学べる大学を探していたとき、たまたま母がピアノ講師をしている音楽教室に昭和音楽大学のポスターが貼り出されていて、オープンキャンパスに参加しました。トッシュ先生が参加者のためにギターを演奏し、コースについて説明してくださったのですが、その内容が、他校と比較して新しいという印象を受け受験を決めたんです。
─学生時代で印象に残っていることは?
おぎの トッシュ先生の授業は今でも印象に残っています。ワードのチョイスが秀逸でわかりやすくて面白い。また、授業以外の質問にも答えてくださるし、自分の曲の感想もいただけるので、私は授業以外でもかなりお世話になりました。また別の授業では、ストリングスの録音も良い経験でした。自分で譜面を作り、演奏を主専攻とする他のコースの学生にお願いして演奏してもらい、指揮もするんです。大人数の弦楽器を録るという経験はなかなかできませんし、そういう現場の雰囲気を学生のうちに経験すると、それはプロになっても生きるんです。
トッシュ 僕が仕事としてやってることを、そのまま同じように授業でやってもらったりもします。例えば、今はアレンジャーやプロデューサーの視点を持った、クリエイティブなマニピュレーター的業務が必要とされています。そうした内容を3年生の課題に出したのですが、その中で優秀だった学生には、僕が音楽監督を務めさせていただいている音楽劇『浅草キッド』の現場で、データ整理を手伝ってもらっています。究極的には、学生と仕事するのが一番楽しいと思っているんですよ。授業しているんだけど、一緒に仕事しているつもりでもあるんです。
大学で学んだことはプロになってすべて役に立ちました(おぎの)
─おぎの先生がお仕事をする中で、大学での学びはどのように役立っていますか?
おぎの 学んだことはすべてがプロになって役に立ちました。例えば、編曲の依頼をいただいたとき、エンジニアさんにお渡しするデータはプロとしての納品レベルに達している必要があります。それは各パートにリバーブ音は入れないとか、適切なレベルにするとか、本当に細かくて基本的なことばかりですが、そういうデータを作ることが、次の方に気持ちよくお仕事していただけることにつながります。
─ちなみに、今はどんな授業を?
トッシュ 今週はマッシュアップ課題。3〜4曲をボーカルやドラムなどの各パートに分解して、それぞれ違う曲のパートを組み合わせて1曲にするというものです。
おぎの キーやテンポを合わせたり、オーディオ素材を切ってフェードをかけたり、プチノイズが出ないようにループさせるなど、そういう地味なオーディオ編集の練習が目的です。
─すごく面白そうですね! では最後に、この記事を読み、興味を持った方々や受験生にメッセージをお願いします。
おぎの 学生生活は課題提出の繰り返しですが、先生方のアドバイスを自分なりに落とし込んで完成させ、それに対してまたアドバイスをもらうという経験は学生のときにしかできませんし、動画からも得られない経験です。ぜひそれを体感して、プロの作法を身に付けてもらえたらと思います。
トッシュ そのために必要な環境は整えていますので、次の世界を作るための武器、それは音楽ですから平和の武器ですけど、そういう新しい時代を戦い抜くための力をこのコースで手に入れてください。
益田トッシュ
10月8日に明治座で初日を迎える林遣都主演の音楽劇『浅草キッド』の音楽および音楽監督を担当。昭和音大の卒業生をバンド・メンバーに複数名迎え、さらに卒業生や在学生を音楽スタッフとして多数起用。大学教育と実際の現場をシームレスにつないでいる。
おぎのあきこ
昭和音楽大学サウンドプロデュースコースを卒業後、歌ものやライブのオープニング音楽、CM/舞台音楽まで数多くの作品に携わる。10月12日~29日上演のモチロンプロデュース、皆川猿時主演の舞台『ドクター皆川~手術成功5秒前~』(本多劇場)で音楽を担当。
イベント情報
オープンキャンパス
サウンドプロデュースコース
作曲・音楽デザインコース
デジタルミュージックコース(短大)
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