理想の音源とよく聴き比べて機材を選ぶ
愛知を拠点に活動し、ヒップホップレーベルSUMMITに所属するラッパー/プロデューサーのC.O.S.A.。彼の鋭く激しいラップは、一体どのように磨き上げられているのだろうか。その裏側を探るべく、C.O.S.A.が制作やレコーディングの拠点としているプライベートスタジオを訪問。最新機材のチェック方法や機材選びのコツ、ACOUSTIC REVIVE製ケーブルの導入によるスタジオクオリティの向上など、ラップの録り音を洗練するためのヒントがぎっしり詰まっているので、ぜひチェックしてほしい。
Photo:Noriaki Yasuda
海外のプロデューサーの機材情報を常にチェック
まずは、C.O.S.A.がトラックメイクからレコーディングまで行うこのスタジオの基本的な制作環境を尋ねてみよう。
「ビート作りはImage-Line Software FL Studio、レコーディングにはAvid Pro Toolsを使っています。ビート作りは楽しくて毎日やってますね。現行のヒップホップはサウンドがどんどん変わるので、構造を理解するために自分でもすぐ作って分析しています。最近だと、かっこいいジャージークラブはキックが小さいとか。それを元にラップをどう乗せるのがいいか判断しています。作業用のデスクは、以前まで鉄パイプが付いた一般的な机を使っていましたが、OTAIRECORDの店舗で見かけたGLORiOUS SOUND DESK PROに変えたら金属による共鳴が少なくなって録り音が良くなりました。モニタースピーカーはreProducer Audio EPIC 55で、サイドに付いたパッシブラジエーターから気持ち良い低音が出て、音量を上げ下げしても全然音像が崩れません。ここ数年は、特に高性能な機材が多く出てきた感じがします」
最新のサウンドでどのような機材が使われているかは、海外のプロデューサーのスタジオを見て研究するという。
「海外のプロデューサーはどんな機材を使っているかあまり公表しないので、周辺の人のInstagramなどをチェックして、そこに映ったスタジオを見て使用機材を調べます」
激しいラップはマイクに付くくらい近くで録る
続けて、ラップのレコーディングについて深掘りしていこう。まずC.O.S.A.に聞いたのは、マイクの選び方だ。
「俺はタイトでスピットしているラップが好きで、ミーク・ミルやヤング・M.A、デイブ・イースト、ドレイクなどの音像を目指しています。マイクは最近までスタジオ定番の機種を使っていたのですが、彼らの音と比べるとオーガニックすぎると悩んでいて。いろいろ環境を変えてみた結果、原因はマイクと自分の声との相性でした。定番を使っておけば大丈夫と思っていたので、気付くのに10年くらいかかりましたね。今はLAUTEN AUDIO LT-386で録っています。3種類のキャラクターを切り替えられて、俺にはソリッドなキャラクターが合います。目指すのはジリジリして少しひずみつつ、真ん中でしっかり鳴る音なので、レコーディングではリフレクションフィルターのKaotica eyeballでしっかり高域を吸音して、マイクに付くくらい近づいてラップするのが欠かせません。ゲインは割れないギリギリまで上げて、ミックスでは、ボーカルがよりセンターで聴こえるように頼みます」
ノイズが少なく声の成分だけが録れるようになった
C.O.S.A.はスタジオの整備について「商業スタジオを100点とすると、プライベートスタジオでも良い機材をそろえれば80点ぐらいにはなりますが、そこから1点を上げ続けるのが大変で。ケーブルや電源、部屋の環境の見直し、自分に合った機材選びが必要です」と話す。特に大きな変化を感じたのは、ACOUSTIC REVIVEのケーブルの導入だという。
「ラッパーの田我流君にACOUSTIC REVIVEを教えてもらって、デモ製品を試したらめちゃくちゃ良くて。スピーカーに使うケーブルをLINE-1.0X-TripleC-FMにしたら音の粒立ちがはっきりして明瞭感が出ました。次にマイクケーブルを変えてみたら、ノイズが少なくなって声の成分だけがしっかり録れたので、奇麗に全体のレベルが上がるのを実感しました。他社のハイエンド製品と聴き比べても雑味やノイズの少なさが全然違いますね。その後は電源ケーブルのPOWER STAGEやPOWER STUDIOも導入して、持っていたケーブルも1ランク上の製品にして。導入したことによる変化が分かるように、一本一本ケーブルを変える前後でラップをレコーディングして聴き比べたんですが、明らかに違いましたね。レコーディングへの大きな影響としては、今までボーカルを別室に置いた簡易的なブースで録っていたのが、ノイズが減ったことによって制作部屋でそのまま録音できるようになりました。作業しながらすぐ歌えるので、感覚的にレコーディングできます。レコーディング中にヘッドホンへ返ってくるボーカルも変わりましたね。ノイズが軽減されてはっきり聴こえるようになったので、明らかに歌いやすくなりました」
現在の自身のスタジオの状況は“94点ぐらい”と評価。
「あと6点は部屋の環境ですね。窓から外音が入るんです。ビートを作るには光や風が入る方がいいものができますが、本番のレコーディング時には、窓枠に合わせて作ってもらった吸音パネルをはめてデッドな空間を作っています」
定番を盲信しすぎず自分に合っているか判断する
最後に、C.O.S.A.が機材選びで重視することを尋ねた。
「まず録りたい音像をはっきりさせた方がいいですね。俺の場合、海外のラッパーのマスタリング済み音源と自分のミックス前の音源を聴き比べて、自分の声を近づけるための機材を選びます。初心者でも、音楽制作を本当に仕事にしたいなら、結局商業スタジオで使われるようなハイエンドの機材に絶対行き着くので、その前段階のものを選ぶのはもったいないです。あと自分の声質に本当に合ってるかどうかはすごく重要なので、できれば代理店や販売店に相談して、デモ機を試した方がいいと思います。定番のものでも盲信しすぎず、自分に合っているかは疑った方がいいですね。そのためにも理想の音源とよく聴き比べることが大事です」
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▶ C.O.S.A.のプライベートスタジオへのACOUSTIC REVIVEケーブル導入レポートは、OTAIRECORDのWebサイトにて公開!
C.O.S.A.
【Profile】ラッパー/プロデューサー。愛知県知立市出身。2016年KID FRESINOとの『Somewhere』を発表。2021年には「PAID IN FULL」が映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』の挿入歌に起用され、レッドブルのサイファー企画「RASEN」の楽曲プロデュースを手掛ける。2022年にはアルバム『Cool Kids』、EP『Reason』をリリースした