Shin Sakiura × ACOUSTUNE RS Three 〜ローエンドや定位を追求するモニター・イアフォン【Vol.1】

Shin Sakiura × ACOUSTUNE RS Three 〜ローエンドや定位を追求するモニター・イアフォン【Vol.1】

国内ブランドACOUSTUNEが、音楽制作に向けてリリースしたスタジオ・モニター・イアフォンRS Three。Monitorシリーズ第2弾の製品で、ローエンドやシビランス、定位などの再現性を特徴としている。今回は、エレクトロニック・ミュージックのプロデューサーでギタリストのShin Sakiuraが実機をチェック。これまでにさまざまなイアフォンやヘッドフォンを使ってきた彼に、RS Threeはどう響くのか? インプレッションをご覧に入れよう。

Photo:Hiroki Obara

ACOUSTUNE RS Three

ACOUSTUNE RS Three|オープン・プライス(市場予想価格:16,880円前後)

ACOUSTUNE RS Three|オープン・プライス(市場予想価格:16,880円前後)

 モニター・イアフォンRS Oneに続く、Monitorシリーズ第2弾の製品。プロの作曲家たちから意見収集した上で開発され、ローエンドやシビランス、リップ音、定位などを捉えやすく設計。ドライバーは、RS OneのMyrinx ELを礎にしつつ、振動板をより綿密に制御した“Myrinx EL-S”を採用している。医療にも使われる軽量&高剛性の樹脂を素材とし、内部損失の大きさから付帯音を軽減。定位や空気感の再現性を高めている。また、振動板のストローク幅(≒振動できる幅)に余裕を持たせ、突発的な耐入力性を上げている。ポリカーボネートを使った耐久性重視のハウジング、伝導性能に優れるという日本ディックス製コネクターPentaconn Earなども魅力だ。

●ドライバー:Myrinx EL-S (9.2mm径ダイナミック・ドライバー) ●周波数特性:20Hz~40kHz ●インピーダンス:32Ω@1kHz ●重量:約29g

付属ケーブルの端子はステレオ・ミニだが(写真上)、その下に写る同梱の変換アダプターでフォーンにできる。イア・ピースは、フォーム・タイプのAET02(写真左)が1ペア、シリコン・タイプのAET07(同右)がサイズ違いで3ペア付属。AET07は、ACOUSTUNEがイアフォン開発時にリファレンスとして使っているものだ

付属ケーブルの端子はステレオ・ミニだが(写真上)、その下に写る同梱の変換アダプターでフォーンにできる。イア・ピースは、フォーム・タイプのAET02(写真左)が1ペア、シリコン・タイプのAET07(同右)がサイズ違いで3ペア付属。AET07は、ACOUSTUNEがイアフォン開発時にリファレンスとして使っているものだ

Shin Sakiuraは、ケーブルの柔らかさや1.8mという長さ、動かしやすくもしっかり止まるケーブル・クリップ(写真中央)を絶賛。ケーブルは、取り回しを良くするためにPU素材の被膜を採用している

Shin Sakiuraは、ケーブルの柔らかさや1.8mという長さ、動かしやすくもしっかり止まるケーブル・クリップ(写真中央)を絶賛。ケーブルは、取り回しを良くするためにPU素材の被膜を採用している

26Hz辺りから見える低域特性

 個人的に好きな音です。ミックス・チェック用のモニター機器の一つとして使ったり、普段の音楽リスニングに使ったりしたいと思いました。一聴して、音にリッチなゲイン感や密度感があるなと。周波数特性を確かめるべく、まずはサイン波のサブベースをいろいろなピッチで聴いてみたところ、低域の再現力が圧巻で。26Hz辺りから“鳴り”が聴こえはじめ、30Hz以上になるとガッツリ見えてきたんです。インイア・モニターで、これほどローエンドが聴こえる機種は珍しいと思い、感動しました。もちろんキックの50Hz辺りもよく分かるし、エレキベースの150~200Hzにもエネルギーを感じます。“ローの密度感”が充実しているので、低音のモニターがとてもやりやすいんです。

 次にホワイト・ノイズをEQでフィルタリングし、周波数ポイントを動かしながら聴いてみたところ、特に3kHz辺りと5~6kHzに特徴が見られました。ギターやボーカルに関わる帯域ですね。そのブースト感が自分好みで、どちらかと言えばリスニング寄りという印象ながら過剰ではない。設計者の絶妙なチューニングを感じます。

 もしRS Threeがコンシューマー向けに作られていたら、各帯域がもっと持ち上がっていて、“このイアフォンでマスタリングされた音”のように聴こえると思うんです。でも、そういうチューニングではなくモニター的な視点も感じられるので、独特のバランスと言えます。ここが、1万円台のイアフォンでは体験したことのない“ハイエンド感”につながっているのでしょう。コスト・パフォーマンスが驚くほど良いし、この価格帯のインイア・モニターを買いたいなら“まずはRS Threeだな”と思います

ライブ時のモニターにも良さそう

 周波数レンジが広い、という点で、ライブ時のモニターにも使ってみたいです。僕のライブは、DAWでトラックを再生しながらMIDIコントローラーでシンセ・ベースの音源を鳴らしたり、エレキギターを演奏したりするもので、普段からインイア・モニターで返しを賄っています。その際に50Hz以下が聴こえず、トラックに対してギターをどのくらい出すべきか判断に迷うことがあるのですが、RS Threeを使えば解決できそうだなと。それにRS Threeの音には、フロアのサウンドを耳の中で再現するようなニュアンスがあるかもしれません。低域までよく見えて、なおかつフロアとかけ離れた音ではなさそうなので、ライブ中にテンションが上がると思います。それが一番ありがたいことですね。

 とにかく聴いていて楽しいイアフォンです。音以外の面では、フォーム型イア・ピースやステレオ・ミニ→フォーンの変換アダプターが付属する点、ケーブルの柔らかさや1.8mという長さなどに音楽の現場の目線を感じます。そしてケーブル・クリップ。すごく動かしやすいんですけど、好きな位置で止めたら簡単にはズレないんです。このあんばい、奇跡的だなと。細部までよく練られていて好印象です。

 

【Shin Sakiura】東京拠点のプロデューサー/ギタリスト。バンド・サウンドからヒップホップ、R&B、エレクトロまで広い音楽性を持ち、自作品のほか、SIRUPやアイナ・ジ・エンドの楽曲制作、海外アーティストとのコラボなど、活動は多岐にわたる。アニメ『BNA』の エンディング曲も手掛ける。

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